最近「デイリーフリー」という言葉をよく耳にします。
“デイリー”とは、牛乳、ヨーグルト、
チーズなどのいわゆる乳製品のこと。
そして“フリー”は、使わない、食べないということ。
つまり、「デイリーフリー」とは
乳製品を摂取しないということです。
(小麦の摂取をしないことをグルテンフリーといいますが、
これと同様の言い回しです)
しかし正直に言って、我々日本人にとっては
いまいちピンと来ないのではないでしょうか?
なぜならばスーパーマーケットやドラッグストアには、
相も変わらず大量の牛乳とヨーグルトが
普通に陳列されているからです。
ただ、欧米では状況がかなり違っているようです。
■ アメリカではデイリーフリーが一般的?
戦後の日本においてパン食と牛乳を飲む習慣を
私たちにもたらしたのはアメリカです。
そのアメリカにおいてはもはや、健康や、
環境意識の高い人(アメリカではこの比率が比較的高い)は
デイリーフリーにシフトしていると言われています。
オーガニック系のスーパーマーケットには、
せいぜいオーガニックのグラスフェッド由来の
牛乳やヨーグルトがある程度で、
棚のほとんどは代替ミルクで占有されています。
そして、代替ミルクの占有率の高さという点においては、
大型のスーパーマーケットでも同様です。
一体何が起こっているのでしょうか?
■ 乳製品が人と環境に与える影響とは?
先ず、人の健康に与える影響から見ていきたいと思います。
一般的に言われていることは、
“牛乳アレルギー”と“乳糖不耐症”です。
牛乳アレルギーはタンパク質の一種であるカゼインが
腸内でうまく消化されないことが原因で、
蕁麻疹、唇や口の中の腫れ、喘息、腹痛、嘔吐などの
アレルギー症状が出ます。
一方の乳糖不耐症については、
食物アレルギーとは異なり免疫系に関与しません。
乳糖不耐症とは乳糖を分解する酵素ラクターゼを持っていない、
もしくは不足していることです。
酵素ラクターゼは牛乳と乳製品に含まれる糖である
ラクトースを分解する働きをするため、乳糖不耐性の人は、
乳製品をうまく消化することができないのです。
その結果、吐き気、けいれん、ガス、鼓脹、下痢などの症状が
あらわれることがあります。
このように牛乳アレルギーと乳糖不耐症の人にとっては
乳製品が自分の生活から取り除かれるべき
重要事であることは理解できますが、
ここまでの社会現象と化している状況が、
これら2つの対象のみに起因しているとは到底思えません。
ということで、
そのような視点で乳製品の世界を見渡してみると、
やはりここでも食料サプライチェーンの背後に潜む
環境への影響が最大の理由ではないか、
ということが垣間見えてくるのです。
■ 世界の牛の数は約15億頭
「世界の牛の数は約15億頭」
皆様はこの数を聞いてどう思われるでしょうか?
世界人口は2021年時点で約78億人です。
つまり人間対牛の比率は約5対1ということです。
FAO (Food and Agriculture Organization of the United Nations)の
2014年データによると、
(世界で)牛は14.7億頭、豚は9.9億頭、羊は12.0億頭、山羊は10.1億頭などとなっており、この他、水牛、馬、ロバ、ラバ、ラクダなど大きな家畜を含めると、合計して50.0億頭となっています。世界の人口の4分の1は15歳未満の子供であるので、世界全体で、だいたい大人1人当たり、約1頭家畜を飼っていることとなる
とあり、さらに
また鶏は採卵鶏あるいはブロイラー等として214.1億羽飼養されているので、人口1人当たりでは、2.9羽飼っていることとなる
と報告されています。
さてもう一度お聞きします。
皆様はこの数を聞いてどう思われるでしょうか?
■ 畜産による地球環境への影響
以前、翔栄ファームコラムでは、
「ヴィーガン(ビーガン)と環境問題」と題して、
現代の畜産がどれだけ環境破壊の一翼を
担ってしまっているかについて、
ビーガンの視点から見えてくる
畜産のダークサイドについて大枠で述べたことがありますが、
今回は再度、“畜産のための生産システム”の
おさらいをしてみたいと思います。
というわけで、
真っ先に知っていただきたいことがあります。
それは世界の熱帯雨林は
驚くべきスピードで消失しているということです。
そのスピードは凄まじく、消失面積は過去40年間で
南米の熱帯雨林の40%(1750万ヘクタール)といわれ、
しかもその原因の大半が輸出用の牛肉を生産するために
破壊されているというのです。
更に、穀物生産量を見てみると、
世界では飢餓が発生するはずがないと言われるほどの量の
穀物が生産されているにも関わらず、
世界の1/3の人間は飢餓に苦しんでいます。
なぜでしょうか。
答えは簡単。家畜(主に牛)が食べているからです。
人間5人あたりに牛1頭。
世界中の約15億頭の牛のために
農薬・除草剤に負けない遺伝子組換え作物が大量に栽培され、
化学肥料によって生育スピードを速められた結果、
土中の微生物はその数を激減させ、
生物循環が消滅していくことで
世界中の大地を砂漠化へ向かわせています。
※参考「土について考えてみる(後編)」
また、農薬・除草剤・化学肥料、
そして家畜のゲップや排泄物から発生する亜酸化窒素ガスが、
地球温暖化の大きな要因になっています
(亜酸化窒素ガスは二酸化炭素の
310倍の温室効果があるといわれています)
※参考「化学肥料と地球温暖化」
■ デイリーフリーと環境問題
以上、断片的ではありますが、
なぜ欧米でデイリーフリーが実践されているのかが、
お分かりいただけるのではないでしょうか。
理由はシンプルです。
つまり多くの人がこれ以上の環境破壊を
食い止めたいと思っているからです。
方法論はともあれ、世界中の多くの人々が
現在の地球環境に愁いを持って、
自分にできる手段でアクションを起こしています。
そして私たち翔栄ファームは、
これからも固定種・在来種の自然栽培の実践と、
自家採種100%を目指して農業活動を続けて参ります。
最近「デイリーフリー」という言葉をよく耳にします。“デイリー”とは、牛乳、ヨーグルト、チーズなどのいわゆる乳製品のこと。そして“フリー”は、使わない、食べないということ。つまり、「デイリーフリー」とは乳製品を摂取しないということです(小麦の摂取をしないことをグルテンフリーといいますが、これと同様の言い回しです)。
しかし正直に言って、我々日本人にとってはいまいちピンと来ないのではないでしょうか?
なぜならばスーパーマーケットやドラッグストアには、相も変わらず大量の牛乳とヨーグルトが普通に陳列されているからです。
ただ、欧米では状況がかなり違っているようです。
■ アメリカではデイリーフリーが一般的?
戦後の日本においてパン食と牛乳を飲む習慣を私たちにもたらしたのはアメリカです。そのアメリカにおいてはもはや、健康や、環境意識の高い人(アメリカではこの比率が比較的高い)はデイリーフリーにシフトしていると言われています。オーガニック系のスーパーマーケットには、せいぜいオーガニックのグラスフェッド由来の牛乳やヨーグルトがある程度で、棚のほとんどは代替ミルクで占有されています。そして、代替ミルクの占有率の高さという点においては、大型のスーパーマーケットでも同様です。
一体何が起こっているのでしょうか?
■ 乳製品が人と環境に与える影響とは?
先ず、人の健康に与える影響から見ていきたいと思います。一般的に言われていることは、“牛乳アレルギー”と“乳糖不耐症”です。
牛乳アレルギーはタンパク質の一種であるカゼインが腸内でうまく消化されないことが原因で、蕁麻疹、唇や口の中の腫れ、喘息、腹痛、嘔吐などのアレルギー症状が出ます。
一方の乳糖不耐症については、食物アレルギーとは異なり免疫系に関与しません。乳糖不耐症とは乳糖を分解する酵素ラクターゼを持っていない、もしくは不足していることです。酵素ラクターゼは牛乳と乳製品に含まれる糖であるラクトースを分解する働きをするため、乳糖不耐性の人は、乳製品をうまく消化することができないのです。その結果、吐き気、けいれん、ガス、鼓脹、下痢などの症状があらわれることがあります。
このように牛乳アレルギーと乳糖不耐症の人にとっては、乳製品が自分の生活から取り除かれるべき重要事であることは理解できますが、ここまでの社会現象と化している状況が、これら2つの対象のみに起因しているとは到底思えません。
ということで、そのような視点で乳製品の世界を見渡してみると、やはりここでも食料サプライチェーンの背後に潜む環境への影響が最大の理由ではないか、ということが垣間見えてくるのです。
■ 世界の牛の数は約15億頭
「世界の牛の数は約15億頭」皆様はこの数を聞いてどう思われるでしょうか?
世界人口は2021年時点で約78億人です。つまり人間対牛の比率は約5対1ということです。
FAO (Food and Agriculture Organization of the United Nations)の2014年データによると、
(世界で)牛は14.7億頭、豚は9.9億頭、羊は12.0億頭、山羊は10.1億頭などとなっており、この他、水牛、馬、ロバ、ラバ、ラクダなど大きな家畜を含めると、合計して50.0億頭となっています。世界の人口の4分の1は15歳未満の子供であるので、世界全体で、だいたい大人1人当たり、約1頭家畜を飼っていることとなる
とあり、さらに
また鶏は採卵鶏あるいはブロイラー等として214.1億羽飼養されているので、人口1人当たりでは、2.9羽飼っていることとなる
と報告されています。
さてもう一度お聞きします。皆様はこの数を聞いてどう思われるでしょうか?
■ 畜産による地球環境への影響
以前、翔栄ファームコラムでは、「ヴィーガン(ビーガン)と環境問題」と題して、現代の畜産がどれだけ環境破壊の一翼を担ってしまっているかについて、ビーガンの視点から見えてくる畜産のダークサイドについて大枠で述べたことがありますが、今回は再度、“畜産のための生産システム”のおさらいをしてみたいと思います。
というわけで、真っ先に知っていただきたいことがあります。それは世界の熱帯雨林は驚くべきスピードで消失しているということです。そのスピードは凄まじく、消失面積は過去40年間で南米の熱帯雨林の40%(1750万ヘクタール)といわれ、しかもその原因の大半が輸出用の牛肉を生産するために破壊されているというのです。
更に、穀物生産量を見てみると、世界では飢餓が発生するはずがないと言われるほどの量の穀物が生産されているにも関わらず、世界の1/3の人間は飢餓に苦しんでいます。
なぜでしょうか。
答えは簡単。家畜(主に牛)が食べているからです。人間5人あたりに牛1頭。世界中の約15億頭の牛のために農薬・除草剤に負けない遺伝子組換え作物が大量に栽培され、化学肥料によって生育スピードを速められた結果、土中の微生物はその数を激減させ、生物循環が消滅していくことで世界中の大地を砂漠化へ向かわせています。
※参考「土について考えてみる(後編)」
また、農薬・除草剤・化学肥料、そして家畜のゲップや排泄物から発生する亜酸化窒素ガスが、地球温暖化の大きな要因になっています(亜酸化窒素ガスは二酸化炭素の310倍の温室効果があるといわれています)。
※参考「化学肥料と地球温暖化」
■ デイリーフリーと環境問題
以上、断片的ではありますが、なぜ欧米でデイリーフリーが実践されているのかが、お分かりいただけるのではないでしょうか。理由はシンプルです。つまり多くの人がこれ以上の環境破壊を食い止めたいと思っているからです。
方法論はともあれ、世界中の多くの人々が現在の地球環境に愁いを持って、自分にできる手段でアクションを起こしています。
そして私たち翔栄ファームは、これからも固定種・在来種の自然栽培の実践と、自家採種100%を目指して農業活動を続けて参ります。