食品、特に生鮮食品に対する消費者の視点は、
日々厳しさを増しているように思います。
様々な要因がありますが、その根底にあるものは
多くの人が自然環境の破壊のスピードに
危機感を抱き始めていることがあると思います。
2030年までにCO2の排出量を
現在の半分以下にしない限り、
地球温暖化の加速的かつ自律的な進行を
食い止めることが出来ないといわれているのは
ご存じの通りです。
ではこの地球温暖化と農業には、
どのような関連性があるのでしょうか。
■ 農薬・化学肥料と地球温暖化
今回のコラムのテーマは
「減農薬・低農薬で本当に大丈夫ですか?」ですが、
本題に入る前に、先ずは農薬・化学肥料と地球温暖化について
簡単に触れてみたいと思います。
以前の翔栄ファームコラム
「化学肥料と地球温暖化」においてもご紹介したように、
農薬・除草剤・化学肥料などの汚染物質が、
地下水、河川を経由してやがては海に流れ込み、
それを食べたプランクトンが大量発生、
そしてその呼吸熱が原因で海水温が上がり
台風を発生させていることは
一般にはあまり知られていないようです。
また、アメリカ海洋大気局(NOAA)のまとめによると、
農薬・化学肥料・家畜の排泄物に含まれる
窒素肥料をまいた農地などから発生する亜酸化窒素ガスが、
地球のオゾン層を破壊する要因であるというのです。
因みに亜酸化窒素ガスは地球温暖化の原因の一つといわれる
二酸化炭素の約310倍の温室効果があると言われています。
つまり私たちの日常的な食事は、
あくまでも結果的にではあるものの、
地球温暖化とつながってしまっているのです。
これが意味することは世界的規模における
食糧生産システムの見直しが
急務であるということに他なりません。
そのためには最終消費者である私たちの
食糧に対する意識が高められる必要がありますが、
一方で消費者の食品に対する視点が
すでに環境保護に変わってきていることも事実です。
大切なことはこの流れを
一気に加速させることではないでしょうか。
■ 野菜はどのように育つのか
話は少し変わります。
翔栄ファームでは、農薬・化学肥料一切不使用で
固定種・在来種野菜の自然栽培を行っていますが、
皆様は「野菜がどのように育つのか」と問われて、
それに的確に応えることが出来るでしょうか?
もちろん断片的な知識はあると思います。
今回は「太陽、大気、水、土、微生物」といった
主要プレイヤーが野菜生育にどう連携しているか
について簡単に説明してみたいと思います。
種は“命”です。
さすがにこの領域は人智を超えているため、
播種して芽が出ている状態から話を進めます。
光合成は太陽の光と二酸化炭素から、
酸素と糖・でんぷんといった炭水化物を生み出します。
葉がその役割を果たしていますが、
これらの栄養素を生み出しているのは実は葉の裏側です。
そして生成された糖やでんぷんは、
茎を通り根に運ばれて貯蔵されるのです。
蓄えられたこれらの炭水化物は、
必要に応じて再度根から茎を通り、
植物の全体を通して先端部分へとポンプアップされます。
そして同時に、根においては
地下茎周辺の土中の微生物の栄養にもなるのです。
つまり土中の膨大な種類の微生物により
分解され無機化した、窒素、リン酸、カリウムなどが
植物を一方的に育てているわけではなく、
植物もまた微生物を育てているのです。
この循環的な営みの中で野菜は生育します。
これは命のメカニズムであって、
人間がコントロール不能な領域であることに
もっと早く気が付くべきであったのです。
しかし現状では、この自然のサイクルに
農薬、除草剤、化学肥料が入り込むことによって、
豊かな生物多様性が壊されました。
とまあここまでを踏まえた上で、
改めて今回のコラムのタイトルを見てください。
「減農薬・低農薬で本当に大丈夫ですか?」です。
■ 農薬・化学肥料不使用は当たり前。大切なのは「土つくり」
結論から申し上げます。
減農薬・低農薬ではだめです。
先程述べた通り、農薬、除草剤、化学肥料が
地球温暖化の原因の一つなのです。
よく人間の腸内は日常的に食べているもので
形成されていると言われます。
実際にその通りで、日常的に慣行農法の野菜、
保存料・添加物を使用した加工品を
食べている人の腸内には相対的に微生物が少なく
腸内フローラが乱れていることが多いそうです。
※過去コラム参照
「土中の微生物の働きは、自然の偉大な循環サイクルです」
「土の中の微生物について」
つまり自身の腸内とその人が食べている
作物を栽培する畑の中の微生物群は
似てくるということです。
農薬や化学肥料は土中の微生物の量を減らし、
やがては死滅させます。
食べるものを正していかない限り、
我々の腸内フローラがバランス良く、
しかも善玉菌で賑わうことはありません。
一体、“食べるものを正す”とは何でしょうか?
それは「今まで農薬・化学肥料を一切使用したことのない、
かつ自然の力に手を添える程度に自然由来の
有機肥料(近隣の落ち葉などから作った堆肥など)を使って
地力を上げた畑で、農薬・化学肥料不使用の農作物に
食べるもの全てを切り替える」ということです。
そしてもう一つ。
固定種・在来種の作物に切り換えることです。
慣行農法で使われるほとんどのF1種は
人為的にコントロールされた不自然な種と言わざるを得ません。
対して固定種・在来種は、採種→播種→栽培→採種を続ける限り
自然の命が受け継がれます。
繰り返しますが、
減農薬や低農薬では意味がないばかりか、
事態を悪化させるだけなのです。
なぜならば、前半で説明した通り、
食料と地球温暖化による自然破壊とはつながっています。
そろそろ目を覚まさないと、
地球が壊れていくのと同時進行で我々の健康も破壊され、
世界中の食糧は消滅してしまいます。
食品、特に生鮮食品に対する消費者の視点は、日々厳しさを増しているように思います。様々な要因がありますが、その根底にあるものは多くの人が自然環境の破壊のスピードに危機感を抱き始めていることがあると思います。
2030年までにCO2の排出量を現在の半分以下にしない限り、地球温暖化の加速的かつ自律的な進行を食い止めることが出来ないといわれているのはご存じの通りです。
ではこの地球温暖化と農業には、どのような関連性があるのでしょうか。
■ 農薬・化学肥料と地球温暖化
今回のコラムのテーマは「減農薬・低農薬で本当に大丈夫ですか?」ですが、本題に入る前に、先ずは農薬・化学肥料と地球温暖化について簡単に触れてみたいと思います。
以前の翔栄ファームコラム「化学肥料と地球温暖化」においてもご紹介したように、農薬・除草剤・化学肥料などの汚染物質が、地下水、河川を経由してやがては海に流れ込み、それを食べたプランクトンが大量発生、そしてその呼吸熱が原因で海水温が上がり台風を発生させていることは一般にはあまり知られていないようです。
また、アメリカ海洋大気局(NOAA)のまとめによると、農薬・化学肥料・家畜の排泄物に含まれる窒素肥料をまいた農地などから発生する亜酸化窒素ガスが、地球のオゾン層を破壊する要因であるというのです。因みに亜酸化窒素ガスは地球温暖化の原因の一つといわれる二酸化炭素の約310倍の温室効果があると言われています。
つまり私たちの日常的な食事は、あくまでも結果的にではあるものの、地球温暖化とつながってしまっているのです。これが意味することは世界的規模における食糧生産システムの見直しが急務であるということに他なりません。
そのためには最終消費者である私たちの食糧に対する意識が高められる必要がありますが、一方で消費者の食品に対する視点がすでに環境保護に変わってきていることも事実です。大切なことはこの流れを一気に加速させることではないでしょうか。
■ 野菜はどのように育つのか
話は少し変わります。
翔栄ファームでは、農薬・化学肥料一切不使用で固定種・在来種野菜の自然栽培を行っていますが、皆様は「野菜がどのように育つのか」と問われて、それに的確に応えることが出来るでしょうか?
もちろん断片的な知識はあると思います。今回は「太陽、大気、水、土、微生物」といった主要プレイヤーが野菜生育にどう連携しているかについて簡単に説明してみたいと思います。
種は“命”です。
さすがにこの領域は人智を超えているため、播種して芽が出ている状態から話を進めます。光合成は太陽の光と二酸化炭素から、酸素と糖・でんぷんといった炭水化物を生み出します。葉がその役割を果たしていますが、これらの栄養素を生み出しているのは実は葉の裏側です。そして生成された糖やでんぷんは、茎を通り根に運ばれて貯蔵されるのです。蓄えられたこれらの炭水化物は、必要に応じて再度根から茎を通り、植物の全体を通して先端部分へとポンプアップされます。そして同時に、根においては地下茎周辺の土中の微生物の栄養にもなるのです。
つまり土中の膨大な種類の微生物により分解され無機化した、窒素、リン酸、カリウムなどが植物を一方的に育てているわけではなく、植物もまた微生物を育てているのです。この循環的な営みの中で野菜は生育します。これは命のメカニズムであって、人間がコントロール不能な領域であることにもっと早く気が付くべきであったのです。しかし現状では、この自然のサイクルに農薬、除草剤、化学肥料が入り込むことによって、豊かな生物多様性が壊されました。
とまあここまでを踏まえた上で、改めて今回のコラムのタイトルを見てください。「減農薬・低農薬で本当に大丈夫ですか?」です。
■ 農薬・化学肥料不使用は当たり前。大切なのは「土つくり」
結論から申し上げます。
減農薬・低農薬ではだめです。
先程述べた通り、農薬、除草剤、化学肥料が地球温暖化の原因の一つなのです。よく人間の腸内は日常的に食べているもので形成されていると言われます。実際にその通りで、日常的に慣行農法の野菜、保存料・添加物を使用した加工品を食べている人の腸内には相対的に微生物が少なく腸内フローラが乱れていることが多いそうです。
※過去コラム参照
「土中の微生物の働きは、自然の偉大な循環サイクルです」
「土の中の微生物について」
つまり自身の腸内とその人が食べている作物を栽培する畑の中の微生物群は似てくるということです。農薬や化学肥料は土中の微生物の量を減らし、やがては死滅させます。食べるものを正していかない限り、我々の腸内フローラがバランス良く、しかも善玉菌で賑わうことはありません。
一体、“食べるものを正す”とは何でしょうか?
それは「今まで農薬・化学肥料を一切使用したことのない、かつ自然の力に手を添える程度に自然由来の有機肥料(近隣の落ち葉などから作った堆肥など)を使って地力を上げた畑で、農薬・化学肥料不使用の農作物に食べるもの全てを切り替える」ということです。
そしてもう一つ。
固定種・在来種の作物に切り換えることです。慣行農法で使われるほとんどのF1種は人為的にコントロールされた不自然な種と言わざるを得ません。対して固定種・在来種は、採種→播種→栽培→採種を続ける限り自然の命が受け継がれます。
繰り返しますが、減農薬や低農薬では意味がないばかりか、事態を悪化させるだけなのです。なぜならば、前半で説明した通り、食料と地球温暖化による自然破壊とはつながっています。そろそろ目を覚まさないと、地球が壊れていくのと同時進行で我々の健康も破壊され、世界中の食糧は消滅してしまいます。
参照資料
朝日新聞DITAL「亜酸化窒素が最大のオゾン層破壊物質 米機関が警告」