■ 持続可能な農業とは?
これまで、「農業資材や燃料の価格高騰」と「農家の高齢化」の2つの問題を考えてきました。
合わせて、私たち翔栄ファームの取組(アグリソーラーと耕作放棄地の再生)についても触れました。
結局、現代の農業の課題を考えた場合、この「持続可能な農業とは?」というのが一番の課題かなと考えています。
「持続可能な」とは、人・種・資源・収支といった様々な意味で考えられると思います。
逆にどれか一つでもかけたら持続可能でなくなってしまうのではとさえ、思っています。
現在の慣行栽培(一般に行われている栽培方法。現在では「F1種」の種を使い、「農薬」と「化学肥料」を使用する農業を指す)は、主に生産量・販売の安定性・お客様の食に対するニーズに焦点をおいて、今の形になっていると思います。
- 均質な野菜を大量生産しやすい「F1種」の種
- 除草・害虫駆除の作業を劇的に軽減する「農薬」
- 野菜を素早く、大きく育てる「化学肥料」
ただでさえ食料自給率が低いと言われる日本ですから、そういう意味では、9割以上の農家さんが、慣行栽培を行っているのは、自然ななりゆきのように感じます。
さらに、現在の農業は機械化も進み、生産者への負担もだいぶ軽減されたのではないでしょうか。
どんな形であれ、農業は必要で、それはこれからも今後も変わらないと個人的には思っています。
同じ農業者として他の農業を否定することはしたくありません。
購入されるお野菜の選択も消費者の方々それぞれの意思選択ですし、環境も違いますのでそれぞれの選択があっていいと思います。
持続可能な農業を考えた場合、慣行栽培は1つの答えなのかもしれません。
■ 私たち翔栄ファームが目指すもの
その中で私たち翔栄ファームは
「体へ入れるものは真に安心安全なものを、そしてもっとも大事な資産である種の継承」
という目的のもと今の農業に取り組んでいます。
そのため、翔栄ファームでは、慣行栽培とは真逆で、「固定種・在来種」の種を使い、「農薬」「化学肥料」を一切使用しない栽培方法を実践しています。
まだまだ日本ではオーガニック文化は発展途上です。
しかし、そこに意識がある方々たくさんいらっしゃいますし、その方々とともに、私たちは啓蒙活動をしていけたらと考えています。
- 世界的な種苗メーカーが化学を駆使して大量生産する「F1種」の種が、人類の健康にどのような影響を与えるのか?
これについては、疑う人が増えてる一方、研究は進んでいません。 - 野菜に残留する「農薬」の問題に、多くの方が気づき始めています。
(日本は世界的に見ても、農薬の規制がとても緩い国です) - 「化学肥料」と「農薬」の多用が、農地を不毛の地へと変えていくことが、近年の研究で明らかになりつつあります。
このように、慣行栽培には、さまざまな問題があることが、明らかになりつつあります。
本当に、持続可能なのか?
改めて検討する必要があるでしょう。
ただ、一番の問題は、もし、慣行栽培でない野菜を入手しようと考えた時、今の日本ではほとんど不可能に近い状態だということです。
■ 翔栄ファームの農業は持続不可能?
正直、私たちの農業は、なかなか収支・人の面での持続性という点では、厳しい状況にあります。
- 「固定種・在来種」の野菜は、成長がマチマチで、日本のスーパーや八百屋さんの流通網では、なかなか評価されません。
- 「農薬」を使用しないので、除草や害虫駆除の作業に日々追われています。
- 「化学肥料」ではない、天然の肥料である腐葉土を自分たちで作って育てる野菜は、成長まで時間がかかります。(慣行栽培よりも収量が少なくなります=利益が減ります)
慣行栽培に比べ、手間ひまは恐ろしくかかり、しかも、今の日本では、高く売ることが難しい状況にあります。
それでも将来的な地球環境・人への影響というのを考慮した際には、私たちの農業が再び必要とされてくると思います。
そして、誰かがやらなければならないことだと考えています。
幸い、最近はそういった情報を発信する方も増えてきています。
私たち翔栄ファームも、同じ志のもと手を取り合って、まだ在来種・自然栽培といった野菜を知らない方々の選択肢を増やせるように、日々、取り組んでいきたいと思います。
そして、まだ若い分類に入る生産者として、農業に興味をもってくれる若者が、少しでも増えてくれるようなPRをしていきたいと思います。
その結果、日本国全体の食料自給率が増えると同時に、私たちのように、「安心・安全の野菜」を育てる農家さんが増えてくれることを願っています。