翔栄ファーム・龍ヶ崎農場のKです。
前回から3回にわたって、現代の農業における課題について考えるシリーズ。第2回の今回は、
新規就農者の減少と農家の高齢化
についてです。
この問題は、今今というより、これまで常に言われてきた問題ですが、ここで改めて検討したいと思います。
■ 減少し続ける新規就農者
ここ数年、増減があるものの、全体として見れば、新規就農者の数は減少傾向にあります。
特に49歳以下で見ると、平成29年から減少の一途をたどっています。
農業は、天候などに左右され収入が安定しなかったり、労働環境が悪いといったイメージ(休みが少ない、虫が嫌い、炎天下での作業は大変…など)があったり、要因は様々かもしれません。
ちなみに、農業に携わる前の自分はと言えば、農業に対して全く興味もありませんでしたし、農業の泥臭い感じが苦手でした。(笑)
実際に農業に従事してみて、確かに収入の不安定さを実感します。
特に、翔栄ファームの農業(農薬・化学肥料不使用、固定種・在来種、土の力を活かした農業)は、自然環境の影響を受けやすく、収穫前に野菜が全滅することもあります。
前回、農業資材や燃料の価格高騰の話をしましたが、これも、農家の収入が安定しない大きな要因でしょう。
新規就農者に対しては、国や市町村から補助金や様々な支援があります。
それらの公的支援を受け、将来的な独立を目指す方々も多いと思います。
そういった新規就農者にとっては、農業ハウスの支柱、たった1本の購入でさえも、生活を左右するぐらいの重みがあるのではないでしょうか。
翔栄ファームで働く自分は、その立場になったことはありませんが、物価の高騰が新規就農者の方々に大きな痛手となることは容易に想像がつきます。
正直な話、単純に農業技術の至らなさや知識のなさであれば、自分自身の努力次第で、いくらでも頑張りようはあるのかなと思います。
しかし、物価の高騰は、本人の努力でも何ともできないものでしょう。
自分がどうすることもできない要素で収入が安定しないのは確かに厳しい仕事だと言えるかもしれません。
■ 農業は休めない仕事?
農業は休みが少ない仕事…というのは、その人のスタイルによって全然変わってくる話かもしれません。
ただ、野菜を相手にしている以上、忙しい時期は休みなく働かなければならないことは事実です。
種を蒔く時期を逸すれば、満足の行く収穫はできません。
収穫のタイミングを逃せば、大損害を被ります。
台風が接近すれば、寝ないで畑を守らなければなりません。
このような時、自分の事情よりも野菜を優先する必要があります。
とはいえ、農業は全く休みがないのか?
というと、そうではありません。
休みをしっかり確保しつつ、仕事とプライベートを両立させている農業者の方もいっぱいいると思います。
例えば、大規模にピーマンをやられている農家さんを例に挙げましょう。
ピーマンは冬場には収穫できませんので、忙しい春~秋までの9ヵ月間はしっかり働きます。
それこそ、ピーク時には休日返上、徹夜作業になることもあるでしょう。
ただ、この9ヵ月間に収量をしっかりあげて、それを売り切り、十分な収益を上げることができれば、ピーマンが収穫できない冬の3ヵ月間は、休むことができます。
実際、9ヵ月間をフルに働き、残りの3ヵ月くらいは暖かい沖縄で過ごす…といったような生活を送られている農家さんもいるようです。
サラリーマンのように、なかなか週休2日で安定した生活を送る…というのは難しいかもしれません。
しかし、農業スタイルによっては、いくらでもやりようはあるように感じます。
■ 農家の高齢化を実感
いずれにせよ、若者の農業離れは進んでいます。
その結果起こるのが、農家の高齢化です。
自分も年配の農業者の方々をたくさん知っています。
みなさんご年齢以上にお元気なのですが、農業は体力仕事なので腰にサポーターなどしながらの方もいらっしゃいます。
そのような農家さんの場合、ご子息が農業を受け継がない農家さんも、今は珍しくありません。
せっかく長く培ってきた農業技術や、まだまだ現役で使える農機具などが、継承されることなくリタイアをせざるを得ない状況なのです。
その結果、翔栄ファームには、毎年のように新規農地の賃借のお話が来たりします。
その度に、それだけリタイアされる方々がいらっしゃるのだなと実感します。
■ 耕作放棄地を誰が再生させるのか?
そのように、誰も後を継がず、農作物が全く作られなくなった畑は、やがて耕作放棄地となっていきます。
これまで、さまざまな野菜を育ていた畑に、いつの間にか木が生い茂り、ツタがはびこり、まるで森林のようになってしまいます。
たった数年で、原型をとどめなくなった畑は、作り手が現れた時にはもう遅いというような有様です。
実は、翔栄ファームでは、そのような長年放置されていた耕作放棄地を借りて開墾し、畑として再生させる試みを行っています。
実際、私がいる翔栄ファーム・龍ヶ崎農場だけでも、耕作放棄地を再生(長年放棄されていたため、ほとんど新規の農地を開墾するような状況のものばかり…)した畑が、10カ所に上ります。
また、これから開墾しなければならない耕作放棄を10カ所、新規に賃借しています。
おかげ様で、今では大変な開墾作業を楽しめるまでになりました(笑)
もはや、畑に見えなくなった耕作放棄地が、綺麗になった時の達成感は最高です。
話を戻しますが、今後も、新規就農者の減少は続く可能性が高いと思います。
そして、農家さんの高齢化もどんどん進んでいくでしょう。
そうして、放棄される農地がますます増えていくに違いありません。
翔栄ファームでは、そのような流れを少しでも止めるべく、耕作放棄地を開墾し、農業を続けていきたいと思います。
もちろん、収入の安定や労働時間の問題解決など、少しでも農業をやってみよう!と思えう方を増やせるよう、努力していきたいと思います。