こんにちは!翔栄ファーム 前橋圃場(ほじょう)のMです。
翔栄ファームでは一般的な農業の方法である慣行農法(農薬・肥料の投入量や散布回数などにおいて相当数の生産者が実施している)ではなく、「固定種・在来種」の種で、農薬・化学肥料を使わない農業を行なっています。
新たなチャレンジとして、今まで捨てていた雑草を資源に変える循環型農法「雑草マルチ」をやってみたところ、ものすごい効果があったんです!
冒頭の画像がその証拠ですので、もう一度ご覧ください。右側の支柱で支えている作物と、それと比べて背丈が半分以下の左側の作物は、同じ種を同じ時期に植えたものです。明かな生育の違いに自分自身も驚いています!
今回は、土壌改良にとても効果があり、雑草や害虫対策にもなり、労力やコストの負担も減り、化学肥料を削減する観点からも注目が集まっている雑草マルチについてご紹介します。
■ 雑草マルチとは?
黒いビニールのマルチングのことですが、
・雑草が生えるのを防ぐ
・地温を上げて作物の生育を良くする
・地温の上がり過ぎを防いで作物の生育を良くする
・雨の跳ね返りを防ぎ病気になるのを防ぐ
・雨で土壌の養分や土壌自体が流出するのを防ぐ
・土の水分を保つ
などのたくさんのメリットがあります。
雑草マルチはビニールマルチを雑草に置き換えて畝を覆うというものです。雑草マルチには、ビニールマルチを超えるメリットがあるんです。
■ 効果丸わかりの雑草マルチ
1つ目のメリットは、雑草が太陽を遮るので雑草が生えるのを抑える効果があります。
畝の上は雑草で敷きつめられるため、日光が当たりにくくなるので雑草の発芽を防止する効果があり、その後の草抜きにかかる手間はかなり抑えることができます。
更には雑草に取られていた土の養分を作物に集中することができます。
上の画像は2023年6月に種まきをして、数日後の状態です。
2列の畝がありますが、茶色くなっている部分は雑草マルチを敷いています。左側の手前側、緑色の雑草に覆われている畝は何もしていません。
ちなみに敢えて違いを確認するために区別したわけではなく、雑草マルチが足りなかったためでした。
周囲の雑草をリヤカー5杯分も刈り取ったのですが、雑草マルチは株から10ほどセンチ離して、高さ10センチも積み上げるため足りなくなってしまったんです。
上の画像は雑草マルチを敷いたことにより作物がだいぶ育ってきたので、隣と絡み合わないよう上に伸ばすために、2023年7月に支柱を設置しました。
一方雑草マルチを敷いていない下の画像は、明らかに生育の度合いが違っています。農薬を使用しないため雑草が生えていますが、その雑草の延長とも見えそうな状態です。
2つ目のメリットですが、 雑草が分解されて畝の養分になる効果です。
雑草マルチは微生物やダンゴムシなどに食べられて分解されていき、窒素分などの養分は土に戻っていきます。微生物やダンゴムシを食べる虫が集まることで作られた生態系は、害虫被害の拡大を抑えたり病原菌が発症しにくい効果も生み出します。
雑草の持っていた養分は土から吸い上げていたものなので、分解されて土に戻されることになります。養分が100%リサイクルされるわけではありませんが、刈り取った雑草を捨ててしまうと養分は減っていく一方ですが、草マルチを利用することで養分のリサイクルができるというメリットがあります。
3つ目のメリットは、 適度な水分量に調整できる効果です。
雑草マルチをすることで日光が、直接畝に当たることはなくなるので、畝から水分が蒸発するスピードを抑えることができます。
また、雨が降ると雑草マルチでワンクッションしてから畝に水分が届くか、そのままはじかれて畔(あぜ,畝と畝の間のこと)に落ちるため、降った雨がそのまま畝の水分に変わるわけではありません。つまり、雑草マルチをすることで畝の乾燥と加湿をマイルドにするメリットがあります。
株が順調に育っている間は加湿を防ぐことで根腐れ予防にもつながり、種を直接まいた場合は乾燥を防止して発芽しやすい環境を整えてくれます。
4つ目のメリットは、 土が硬く締まるのを防ぎ、団粒化が期待できる効果です。
畝が裸の場合は雨が降るたびに土が締まって硬くなっていきますが、雑草マルチをしていれば直接雨が当たらないので土が硬く締まることはありません。
更には土中の微生物を活性化して、土をふかふかの「団粒構造」に変えていくメリットが期待できます。
団粒構造とは、だんご状になった大小の土の塊がバランス良く混ざり合っていて、適度な隙間がたくさんつくられ、土が柔らかくなり通気と排水に優れて、微生物が多く繁殖して作物の生育に適した状態です。
雑草マルチはビニールマルチに比べて、敷きつめた雑草の分だけ有機質が多くなるため、土はふかふかになりやすくなります。
■ まだまだあるメリット
他にもまだまだメリットがあります。
・野菜を作っている畝で同時に腐葉土も作ることができる
・刈りとった草や落ち葉をゴミとして捨てたり燃やしたりする手間がなく、回収や処理にかかる行政コストを軽減する
・焼却処分しないので煙で近所迷惑にならずCO2も発生しない
・家庭菜園と組み合わせれば、草刈りや落ち葉の掃除が進み町がきれいになる
・畑の畝の間にも敷き詰めることで雨の後でも、ぬかるむことがなく歩きやすい
・ビニールマルチの手間と費用を削減する効果です。
雑草マルチは畝や周りに生えている雑草を刈り取って畝の上にしきつめるだけなので、ビニールマルチに比べて手間もかかりません。
私にとっての最大のメリットであり、雑草マルチへチャレンジの動機となったポイントは、自然に帰らないプラスチック製品を使わず、今まで捨てていた雑草を資源に変えることができ、環境にも優しく作物を作るたびに土壌の質が良くなっていく循環型農法を確立できることです。
ビニールマルチより手間は減るとはいえ、雑草の刈り取り・その雑草を集める・リヤカーに積む・畑に運ぶ・雑草マルチを敷くなどの工程は1日がかりの作業になります。
しかし実現し素晴らしい効果を目の当たりにしたことで、変なクセがついてしまいました。出かけた先で刈られた雑草を見ると「雑草にマルチにしたい!」と自然にかつ強く思うほどになっている自分に気づきました。
美味しく、安全な物作りのために雑草マルチはうってつけです。ぜひ家庭菜園でも取り入れてみてください。