皆さんは、みどりの食料システム戦略」「みどりの食料システム法」という言葉をお聞きになったことはありますか?
いったいそれは何なの?
何をどうするのかな?
私たちは何をしたらいいのかな?
よくわからないので調べてみました。
■ みどりの食料システム戦略とは?
2021年5月に農林水産省が策定した食料生産の方針で、温室効果ガスの放出、化石燃料由来の肥料の使用量の削減など環境負荷の低減策を中心とした戦略のことをそのように呼んでいます。
具体的には2050年までに・・・
・有機農業の面積割合を全体の農地の25%に拡大する
・化学農薬の使用量を50%減らす
・輸入原料や化石燃料を原料とした、化学肥料の使用量を30%減らす
などの数値目標があげられています。
■ みどりの食料システム法
国内農林水産業の生産力強化、持続可能な食料生産を可能にするための政策、みどりの食料システム戦略を全国の生産者に普及させ、実現を目的として成立されたのが「みどりの食料システム法」です。2022年4月に成立、同年7月に施行されました。
みどりの食料システム法とは、「農林漁業及び食品産業の持続的な発展等を図るため、環境と調和のとれた食料システムの確立に関する基本理念等を定めるとともに、農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う事業活動等に関する認定制度を設けることにより、農林漁業及び食品産業の持続的な発展、環境への負荷の少ない健全な経済の発展等を図るもの。」とあります。
食は生産から加工、流通、消費まで、これらのつながりにより成り立ちます。この仕組みを「食料システム」と呼んでいます。
未来の子供たちの「食」のためにはこの「食料システム」を環境に優しいもの(=みどり)でなければいけない、誰もが「食」について関心をもって支えていくことが大切と考えられ、これを基本理念としたものがみどりの食料システム法として定められました。
環境に優しい安全な農林水産物がお店に並んでいる、人々がそれを買って食べる、それが当たり前の社会にすることを実現させるための取り組みを進めて行くことが目的です。
「消費者」は有機農産物など環境に配慮したものを選ぶことで、自身の健康はもちろんのこと地球環境を守ることができます。
「生産者」にとっては未来の子供たちのために豊かな自然を残すことができます。また、環境を配慮することで、安心安全な農林水産物を消費者に届けることができます。
「事業者」にとってはその配慮された安全な環境から新たなビジネスチャンスを生み出すことができます。など、それぞれの立場で環境を意識することの「きっかけづくり」となることを期待して定められたと考えられます。
「みどり戦略」では2050年までの目標として以下のことを挙げています。
〇農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現
〇化学農薬使用量(リスク換算)50%低減
〇化学肥料使用量30%低減
〇有機農業の面積割合を25%(100万ha)に拡大
これらの目標は食料システムについて生産者だけでなく、食品産業(流通)、機械や資材メーカーなどの事業者、消費者まで食に関わる全員が関与しなければ達成できないことを現わしています。
生産者や事業者は無利子・低利子による融資を受けることができます。これは資金調達や設備投資の初期負担が軽くするなどの支援を受けることができるうれしい制度です。
目標を達成するために!
〇2030年までに有機農業の面積を63,000haに2040年までに次世代有機農業技術を確立することとあります。
〇2020年から段階的に10年ごとに10個の技術革新を加えていくことで目標を達成できるとされています。
〇有害な化学物質を減らし食の安全性を高める事、化学肥料・化学農薬により水・土・大気汚染を避け、環境保全を目的としています。
■ 有機農業の現状と課題
みどりの食料システム法で目標としている有機農業の面積割合を25%(100万ha)に拡大するとありますが、実際はどうなのでしょうか?
私達消費者にとっても”有機”と表記された野菜をスーパーでも見かけるようになり、最近ではかなり浸透したようにも感じます。しかしながら、日本の農地面積における有機栽培の畑の割合は2020年度の農林水産省のまとめによると25200haと耕地面積に占める割合は0.6%しかないのが現状です。それでも過去10年で約5割も拡大されたということです。
世界の農地の1.5%が有機農地です。(2021年2月)オセアニアでは世界の有機農地の半分、ヨーロッパは23%、ラテンアメリカは11%と、日本の有機農地の割合のその少なさは歴然です。
その理由を考えてみました。
〇まずは農産物の販売価格が高くなってしまう事があげられますね。私も健康のために安全なものを食べたいと思いながらもその値段の高さになかなか手が出せないと日々感じてしまいます。
〇次に自然栽培のため見た目が悪い、きれいではない、虫食いがあるなど消費者に敬遠されがちな理由が色々とあるようです。
〇生産者にとってもコストがかかってしまう、病害虫への抵抗力が弱く、手間がかかる、人手不足など様々な課題があります。栽培技術が確立されていないため生産者の勘と経験に頼るしかないため収穫量や品質の安定も難しいようです。
有機栽培とは化学肥料・農薬を使わず作物を育て、その土壌にも負担をかけないように配慮する必要があります。遺伝子組み換え技術は使いません。
その結果、有機栽培で育てられた作物を食べることは人体に負担をかけにくいというのが魅力なのですが、有機農業が環境に配慮して信頼性の高い作物を生産しているということを世間に受け入れてもらうにはまだまだ時間がかかるのかもしれません。
有機栽培農産物として認めてもらうにも厳しい条件があります。種まき・植付けに3年以上前から農薬・化学肥料・除草剤を使っていない田畑で栽培しなければなりません。有機農業を始めるための土地を確保するだけでも容易ではないようです。
農薬や化学肥料ばかりを使用している土地は土中の微生物が失われ微生物によって成り立つはずの生態系が崩れてしまいます。それにより、従来の土の保水力、保肥力が失われてしまいます。
大量に与え続けた過剰な化学肥料によって植物に吸収されなかったものが地下水に流れ出てしまうこともあり知らず知らずのうちに環境を汚しています。
これらを考えると、化学的に合成された肥料や農薬を使用しない安全な農作物を作ることが私たちの健康だけではなく、地球環境さえも変え、安全・安心で住みやすい世の中を与えてくれる、有機農業を広めていくことは子供たちの未来のためにも私達大人がすぐにでも真剣に取り組んでいかなければいけない大きな課題であることは間違いありません。