近年では日本においても、健康の観点から
普段食べるものを見直そうとする動きが
活発になっているように思います。
そしてその範囲は栄養バランスのみに留まらず、
食品の製造工程や食材そのものにまで及んでいます。
一般的なスーパーマーケットでも
顔の見える食材としての地産地消の推奨や、
有機JAS食材、特別栽培農作物のコーナーが
少しずつではありますが目に付くようになりました。
とはいえ、それを選択しようとするに際しては、
多くの場合、どうしても価格の問題により、
結果的に回避してしまうことも事実のようです。
その裏付けとして日本の全耕作面積に対して
有機栽培の耕作面積が占める割合は、
わずか0.5%に過ぎないことはよく知られています。
ここで一つの疑問が生まれます。
果たして日本人の食に対する意識のレベルは
どの程度のものだろうかということです。
もう少し突っ込んで言えば、
「食材やそれを育む土壌の安全性への関心度」が
どの程度日本に根付いているのでしょうか?
今回のコラムでは欧州のBIO(ビオ)との対比で、
このテーマを考察していきたいと思っています。
■ 日本とフランスの認証制度の違い
日本には農水省が認証する「有機JAS」という
有機農産物の農業生産工程管理が存在します。
つまりこの有機JAS認証を受けた
農産物、畜産品、加工品のみが「有機食品」や
「オーガニック」食品と名乗ることができます。
この有機JASのような有機栽培由来製品を
欧州ではBIO製品といい各国に規定があります。
今回はフランスの状況を概観しながら、
日本人の食の安心安全への関心度を
客観的に捉えられればと思います。
先ず、フランスにおいては
フランス農務省認可の有機栽培由来製品に対し、
「ABマーク」が認証されます。
これが政府公認のBIO商品ということになります。
BIOの規定に達する食材や製品を
EU各国が認証することでBIO商品と名乗ることが
できるという方式を取っています。
大陸続きの欧州ならではの仕組みと言えます。
ということで本題に入ります。
■ BIO(ビオ)商品の浸透度の違い
フランスではパリ、マルセイユ、
リヨンのような大都市以外でも
BIO専門店は簡単に見つかります。
そして田舎のスーパーマーケットであっても
かなりのスペースをBIO食品・製品コーナーが
占めているようです。
すでにこの段階で日本の有機JASの浸透度
(特定栽培農作物を含めたとしても)とは
かなりの違いがあるように思います。
更に価格面でも、日本では有機JAS野菜の価格は
慣行農法の2倍から3倍程度であるのに対し、
フランスでは1.1倍から1.4倍程度と
日々の食生活にフィットする市場が形成されています。
ただし肉や魚に関しては若干の割高感があるようです。
そして何といってもBIOの浸透度の高さは
BIOが適用される食材の範囲が示しています。
野菜、果物、肉、卵、魚のような生鮮品以外にも、
飲料、お菓子、パン、パスタ、シリアルなどの
加工品にまで及んでいるのです。
日本にも有機加工食品の認定規定があるのですが、
第一次産業の段階で生産量が圧倒的に少ないため、
そもそも有機加工食品を目にする機会は
自ずと限定されることになります。
因みにBIOでは、農作物は100%有機農法が当然で、
加工品は95%がBIO由来、
残り5%も自然由来が望ましいとされています。
■ オーガニック(有機)栽培の歴史
オーガニック栽培の提唱は20世紀後半ではなく
約1世紀前から始まっていました。
ご存じの方も多いと思いますが、
神智学者であり教育学者でもあった
ルドルフ・シュタイナーが提唱した
「循環型有機農法(バイオダイナミック農法)」という
自然と宇宙との調和をベースにした実践的理論です。
その後、イギリスの植物学者アルバート・ハワードが
農薬・化学肥料に頼らないオーガニック農法を提唱。
この時ハワードは、東洋にて実践されていた、
そもそも初めから農薬・化学肥料に頼らない農業に
大きな影響を受けたと言われています。
実は日本でも明治時代に農薬や化学肥料が
先端技術として輸入される前までは、
有機JASと同レベル以上の有機農法
(あえてこの言葉を使います)を行っていました。
■ 日本の農薬使用量は世界のトップクラス
にもかかわらず、日本の近代農業開始依頼、
様相は一変してしまいました。
慣行農法の割合は99.5%に及び、
種の自家採種はほぼ壊滅状態で、農薬の使用量も
世界でトップクラスであると言われています。
ではなぜこの状況を我々日本人は
放置しているのでしょうか?
日本人の意識の低さが問題なのでしょうか?
いいえ、それは違うと思っています。
日本人は人を疑わないのです。
国が認めた制度の下、ルールの範囲で栽培され、
製造・販売されて食卓に上るものに
疑念を抱く人などいないのです。
これが一定の当を得ているとすれば、
自然との調和を信条とする強いリーダーが、
経済との共存を目指した上で、日本の農業政策を
再構築する必要があるように思います。
安心安全な食の実現は、環境問題の改善にも
直結するアクションなのですから。
近年では日本においても、健康の観点から普段食べるものを見直そうとする動きが活発になっているように思います。そしてその範囲は栄養バランスのみに留まらず、食品の製造工程や食材そのものにまで及んでいます。
一般的なスーパーマーケットでも顔の見える食材としての地産地消の推奨や、有機JAS食材、特別栽培農作物のコーナーが少しずつではありますが目に付くようになりました。
とはいえ、それを選択しようとするに際しては、多くの場合、どうしても価格の問題により、結果的に回避してしまうことも事実のようです。その裏付けとして日本の全耕作面積に対して有機栽培の耕作面積が占める割合は、わずか0.5%に過ぎないことはよく知られています。
ここで一つの疑問が生まれます。
果たして日本人の食に対する意識のレベルはどの程度のものだろうかということです。もう少し突っ込んで言えば、「食材やそれを育む土壌の安全性への関心度」がどの程度日本に根付いているのでしょうか?
今回のコラムでは欧州のBIO(ビオ)との対比で、このテーマを考察していきたいと思っています。
■ 日本とフランスの認証制度の違い
日本には農水省が認証する「有機JAS」という有機農産物の農業生産工程管理が存在します。
つまりこの有機JAS認証を受けた農産物、畜産品、加工品のみが「有機食品」や「オーガニック」食品と名乗ることができます。
この有機JASのような有機栽培由来製品を欧州ではBIO製品といい各国に規定があります。今回はフランスの状況を概観しながら、日本人の食の安心安全への関心度を客観的に捉えられればと思います。
先ず、フランスにおいてはフランス農務省認可の有機栽培由来製品に対し、「ABマーク」が認証されます。これが政府公認のBIO商品ということになります。BIOの規定に達する食材や製品をEU各国が認証することでBIO商品と名乗ることができるという方式を取っています。大陸続きの欧州ならではの仕組みと言えます。
ということで本題に入ります。
■ BIO(ビオ)商品の浸透度の違い
フランスではパリ、マルセイユ、リヨンのような大都市以外でもBIO専門店は簡単に見つかります。そして田舎のスーパーマーケットであってもかなりのスペースをBIO食品・製品コーナーが占めているようです。
すでにこの段階で日本の有機JASの浸透度(特定栽培農作物を含めたとしても)とはかなりの違いがあるように思います。
更に価格面でも、日本では有機JAS野菜の価格は慣行農法の2倍から3倍程度であるのに対し、フランスでは1.1倍から1.4倍程度と日々の食生活にフィットする市場が形成されています。ただし肉や魚に関しては若干の割高感があるようです。
そして何といってもBIOの浸透度の高さはBIOが適用される食材の範囲が示しています。野菜、果物、肉、卵、魚のような生鮮品以外にも、飲料、お菓子、パン、パスタ、シリアルなどの加工品にまで及んでいるのです。
日本にも有機加工食品の認定規定があるのですが、第一次産業の段階で生産量が圧倒的に少ないため、そもそも有機加工食品を目にする機会は自ずと限定されることになります。因みにBIOでは、農作物は100%有機農法が当然で、加工品は95%がBIO由来、残り5%も自然由来が望ましいとされています。
■ オーガニック(有機)栽培の歴史
オーガニック栽培の提唱は20世紀後半ではなく約1世紀前から始まっていました。ご存じの方も多いと思いますが、神智学者であり教育学者でもあったルドルフ・シュタイナーが提唱した「循環型有機農法(バイオダイナミック農法)」という自然と宇宙との調和をベースにした実践的理論です。
その後、イギリスの植物学者アルバート・ハワードが農薬・化学肥料に頼らないオーガニック農法を提唱。この時ハワードは、東洋にて実践されていた、そもそも初めから農薬・化学肥料に頼らない農業に大きな影響を受けたと言われています。
実は日本でも明治時代に農薬や化学肥料が先端技術として輸入される前までは、有機JASと同レベル以上の有機農法(あえてこの言葉を使います)を行っていました。
■ 日本の農薬使用量は世界のトップクラス
にもかかわらず、日本の近代農業開始依頼、様相は一変してしまいました。慣行農法の割合は99.5%に及び、種の自家採種はほぼ壊滅状態で、農薬の使用量も世界でトップクラスであると言われています。ではなぜこの状況を我々日本人は放置しているのでしょうか? 日本人の意識の低さが問題なのでしょうか?
いいえ、それは違うと思っています。日本人は人を疑わないのです。
国が認めた制度の下、ルールの範囲で栽培され、製造・販売されて食卓に上るものに疑念を抱く人などいないのです。これが一定の当を得ているとすれば、自然との調和を信条とする強いリーダーが、経済との共存を目指した上で、日本の農業政策を再構築する必要があるように思います。安心安全な食の実現は、環境問題の改善にも直結するアクションなのですから。