前回のコラム、
シリーズ種の履歴書その2「F1種は悪者か?」
では、F1種を用いた栽培は自家採種を
必要としないということを中心に、
広義のF1種と狭義のF1種とに整理をしました。
日本の農業においてはF1種が
全体の約99.5%を占めています。
つまり、ほぼすべての農家が、
「自家採種をしない=毎年種を購入する必要がある」
という状況下で営農をしているわけです。
というわけで今回は「種」の生産や流通について
説明をしていきたいと思います。
■ 世界の種子市場
世界の種子市場は、3兆2,400億円と言われており、
トウモロコシ、大豆などの穀物が
2兆7,000億円と大半を占めています。
続いて野菜が5,000億円、
草花が400億円となっています。
種苗業界はバイオメジャー主導による
大再編が行われた結果、一層の寡占化が進み、
上位4社で種子は6割以上、
農薬は8割のシェアを握るに至りました。
しかし、日本の種がバイオメジャーに
飲み込まれているわけではなさそうです。
Access to Seeds(2017)の調査報告によると
日本の「サカタのタネ社」が7位、
「タキイ種苗社」が11位だそうです。
特に「サカタのタネ社」においては、
ブロッコリーの世界シェア、実に65%です。
これらは一例に過ぎません。
世界の野菜品種800種のうち、150種が常食され、
海外料理向けを含めると300種類が栽培されるなど、
数値が表すとおり、日本は野菜大国なのです。
欧州最多のフランスで100種、
アメリカで95種であることを見れば
日本の品種多様性は群を抜いている
ということが分かると思います。
■ 国内の野菜の多くは日本の種会社が開発したもの
「種苗をめぐる情勢」という
農林水産省のレポートでは、
我が国における種苗需給動向として、
「輸出入額は近年いずれも増加傾向にある」
としているものの、
「野菜の種子は、我が国の種苗会社が開発した、優良な親品種の雄株と雌株を交配することでより優良な品種が生産されるが、この交配の多く(約9割)が海外で行われている」
とあります。
また、同省の「消費者の部屋」内、
「種にはなぜ外国産のものが多いのですか?」
という質問に対する答えとして、
「国内で売られている多くの野菜の種は、日本の種会社が開発した種で、種を生産するための条件が良い場所が少ないので、日本の種の会社は外国に親種を持っていって、交配して種をとり、日本へ持って帰ってきています」
と記載しています。
その上で、海外で交配育種する理由として
農水省は以下の2点を挙げています。
(1)多種多様な品目の供給が必要となる野菜の種子を、安定的に生産する必要性
(2)一般に、作物は原産地に似た気候で育てた方が良質な種子ができること等
(総じて人件費の問題が大きく影響しているようです)
これだけみれば国内における食品流通の大半が
「F1種」であることに変わりないにせよ、
モンサント(現バイエル)によって
作られた種子なのではないか、とか、
遺伝子組換え・ゲノム編集の種子なのではないか、
などの疑念は一旦取り除かれるような気はします。
しかし、国内で開発された種子が
そもそもどのようなものなのか、
また、原種(開発した種子)を
輸出先でどのように交配育種したのかが
分かりづらいのは事実です。
種の開発元が国産であれ
結果的に種を輸入している現状は
決して好ましい状況とは考えません。
世界各国同士の関係性や自然災害による影響等、
何かしらの原因によって
輸出入のバランスが変化することは
充分にあり得る話です。
多くの種類の野菜が常食される日本においては、
国が主導して国内生産の仕組みを
整備する必要があるのではないでしょうか。
前回のコラム、シリーズ種の履歴書その2「F1種は悪者か?」https://syouei-farm.net/anzen/200922/ では、F1種を用いた栽培は自家採種を必要としないということを中心に、広義のF1種と狭義のF1種とに整理をしました。
日本の農業においてはF1種が全体の約99.5%を占めています。つまり、ほぼすべての農家が、「自家採種をしない=毎年種を購入する必要がある」という状況下で営農をしているわけです。
というわけで今回は「種」の生産や流通について説明をしていきたいと思います。
■ 世界の種子市場
世界の種子市場は、3兆2,400億円と言われており、トウモロコシ、大豆などの穀物が2兆7,000億円と大半を占めています。続いて野菜が5,000億円、草花が400億円となっています。
種苗業界はバイオメジャー主導による大再編が行われた結果、一層の寡占化が進み、上位4社で種子は6割以上、農薬は8割のシェアを握るに至りました。しかし、日本の種がバイオメジャーに飲み込まれているわけではなさそうです。
Access to Seeds(2017)の調査報告によると日本の「サカタのタネ社」が7位、「タキイ種苗社」が11位だそうです。特に「サカタのタネ社」においては、ブロッコリーの世界シェア、実に65%です。
これらは一例に過ぎません。世界の野菜品種800種のうち、150種が常食され、海外料理向けを含めると300種類が栽培されるなど、数値が表すとおり、日本は野菜大国なのです。欧州最多のフランスで100種、アメリカで95種であることを見れば日本の品種多様性は群を抜いているということが分かると思います。
■ 国内の野菜の多くは日本の種会社が開発したもの
「種苗をめぐる情勢」という農林水産省のレポートでは、我が国における種苗需給動向として、「輸出入額は近年いずれも増加傾向にある」としているものの、
「野菜の種子は、我が国の種苗会社が開発した、優良な親品種の雄株と雌株を交配することでより優良な品種が生産されるが、この交配の多く(約9割)が海外で行われている」
とあります。
また、同省の「消費者の部屋」内、「種にはなぜ外国産のものが多いのですか?」という質問に対する答えとして、
「国内で売られている多くの野菜の種は、日本の種会社が開発した種で、種を生産するための条件が良い場所が少ないので、日本の種の会社は外国に親種を持っていって、交配して種をとり、日本へ持って帰ってきています」
と記載しています。
その上で、海外で交配育種する理由として、農水省は以下の2点を挙げています。
(1)多種多様な品目の供給が必要となる野菜の種子を、安定的に生産する必要性
(2)一般に、作物は原産地に似た気候で育てた方が良質な種子ができること等
(総じて人件費の問題が大きく影響しているようです)
これだけみれば国内における食品流通の大半が「F1種」であることに変わりないにせよ、モンサント(現バイエル)によって作られた種子なのではないか、とか、遺伝子組換え・ゲノム編集の種子なのではないか、などの疑念は一旦取り除かれるような気はします。
しかし、国内で開発された種子がそもそもどのようなものなのか、また、原種(開発した種子)を輸出先でどのように交配育種したのかが分かりづらいのは事実です。
種の開発元が国産であれ結果的に種を輸入している現状は決して好ましい状況とは考えません。世界各国同士の関係性や自然災害による影響等、何かしらの原因によって輸出入のバランスが変化することは充分にあり得る話です。
多くの種類の野菜が常食される日本においては、国が主導して国内生産の仕組みを整備する必要があるのではないでしょうか。