野菜や花の種には大きく分けて、
「固定種」と「F1種」の2種類があります。
最大の違いは「自家採種」をするかどうか
という1点に尽きるように思います。
ここでいう「自家採種するかどうか」ということは、
「自家採種できるかどうか」という意味ではないことが
とても重要になってきますので、
これは後ほど詳しくご説明します。
さて、今回の主役は「F1種」ですが、
本題に入る前に「固定種」の
簡単なおさらいをしておきます。
■ 固定種について
「固定種」は各地域において自家採種により
何代にもわたり植え続けられてきた植物の種で、
その土地の気候や風土に適応しているがゆえに、
性質や形状が受け継がれているのが特徴です。
簡潔に言えば、「同じ植物から種を取って
来年植えてまた収穫して種を取る」
の繰り返しを行っている種ということです。
因みに全国各地で栽培されている
「伝統品種」のようなものは
「固定種」であることが多いです。
イメージとしては昔から自然の恵みそのままを
享受している感じでしょうか。
物理的にはこんな面もあります。
例えば、見た目は大きさがばらばらだったり、
形がひん曲がっていたりなど、
普段スーパーで見慣れているものとは違います。
味についても個体差があるのも事実のため、
一般的な流通野菜を食べ慣れた消費者には
ある意味カルチャーショックかもしれません。
ただし、味の濃さという点では
あきらかに一般流通野菜とは異なります。
場合によっては本来の野菜が持つ
苦味や癖の強さによって食べづらい
ということもあるかもしれません。
このように均一性ではなく
多様性を持っているのが「固定種」なのです。
■ F1種に対しては広義と狭義の認識が混在している
植物の交配育種において、
異なる優良な形質を持った親をかけ合わせると、
その第一代の子(F1=雑種第一代)は、
両親の形質のうち、優性だけが現れます。
あらゆる形質でこの優性遺伝子だけが発現するため、
交配種野菜は、一見まったく同じ形にそろいます
(品質の統一)。
これは「雑種第一代、ハイブリッド」とも呼ばれ
品種改良が得意な日本においても
盛んに行われてきた交配育種の技術です。
いわゆるメンデルの第一法則「優勢の法則」です。
(「優性と劣性」とは品種が優れているか
劣っているか、ということではありません)
しかし、「F1種」から採種した種(雑種第二代)は
逆に様々な形質が発現するため安定せず、
実質的に自家採取することはできないのです
(作物の品質がバラバラになってしまう)。
これが広義の意味における「F1種」です。
「異なる優良な形質を持った親を掛け合わせる」
という部分が人為的で違和感を覚える
という方もおられると思いますが
狙った品質の作物が1世代しか取れないとはいえ、
交配育種の結果である「第一世代(F1種)」
=「不自然」というわけではないことが
お分かりいただけると思います。
■ 雄性不稔とは
しかし、狭義の意味の「F1種」となると、
違和感をはるかに通り越し、
嫌悪感を持つ人が大勢出てくるのです。
その理由は人為的に作られた
「雄性不稔(ゆうせいふねん)」にあります。
雄性不稔とは、正常に花粉形成ができず
種子ができない突然変異の個体のことです。
元々の「F1種」は、「除雄(じょゆう)」といって、
雄しべをピンセット等を使って手作業で除去し、
他の品種と交配させる方法により
交配育種され採種されていました。
その後、品種改良の技術が進歩していく過程で、
「自家不和合性(自家受精を防ぐ遺伝的性質)」
を利用する技術へと発展を遂げ、現在においては
上述の「雄性不稔」という突然変異の個体を
交配の母株に利用する方法が主流となっています。
これが「F1種」の代名詞のようになっており、
狭義の「F1種」といわれる所以です。
これらは農業生産方法の一つに過ぎませんが、
通常、自然界では起こりえないような
異なる品種同士の交配が行われていたり、
近年の放射線や化学薬品などを用いて、
人為的に「雄性不稔株」を生む技術が、
狭義の「F1種」の意味において
ネガティブな印象を与えているように感じられます。
というわけで、広義・狭義のいずれにせよ、
「F1種」が自然受粉できないようにして
人工授粉により作られていることは事実です。
「F1種」は悪者か否か。
野菜や花の種には大きく分けて、「固定種」と「F1種」の2種類があります。最大の違いは「自家採種」をするかどうかという1点に尽きるように思います。
ここでいう「自家採種するかどうか」ということは、「自家採種できるかどうか」という意味ではないことがとても重要になってきますので、これは後ほど詳しくご説明します。
さて、今回の主役は「F1種」ですが、本題に入る前に「固定種」の簡単なおさらいをしておきます。
■ 固定種について
「固定種」は各地域において自家採種により何代にもわたり植え続けられてきた植物の種で、その土地の気候や風土に適応しているがゆえに、性質や形状が受け継がれているのが特徴です。簡潔に言えば、「同じ植物から種を取って来年植えてまた収穫して種を取る」の繰り返しを行っている種ということです。
因みに全国各地で栽培されている「伝統品種」のようなものは「固定種」であることが多いです。イメージとしては昔から自然の恵みそのままを享受している感じでしょうか。
物理的にはこんな面もあります。例えば、見た目は大きさがばらばらだったり、形がひん曲がっていたりなど、普段スーパーで見慣れているものとは違います。味についても個体差があるのも事実のため、一般的な流通野菜を食べ慣れた消費者にはある意味カルチャーショックかもしれません。ただし、味の濃さという点ではあきらかに一般流通野菜とは異なります。場合によっては本来の野菜が持つ苦味や癖の強さによって食べづらいということもあるかもしれません。
このように均一性ではなく多様性を持っているのが「固定種」なのです。
■ F1種に対しては広義と狭義の認識が混在している
植物の交配育種において、異なる優良な形質を持った親をかけ合わせると、その第一代の子(F1=雑種第一代)は、両親の形質のうち、優性だけが現れます。あらゆる形質でこの優性遺伝子だけが発現するため、交配種野菜は、一見まったく同じ形にそろいます(品質の統一)。
これは「雑種第一代、ハイブリッド」とも呼ばれ、品種改良が得意な日本においても盛んに行われてきた交配育種の技術です。いわゆるメンデルの第一法則「優勢の法則」です(「優性と劣性」とは品種が優れているか劣っているか、ということではありません)。
しかし、「F1種」から採種した種(雑種第二代)は逆に様々な形質が発現するため安定せず、実質的に自家採取することはできないのです(作物の品質がバラバラになってしまう)。これが広義の意味における「F1種」です。
「異なる優良な形質を持った親を掛け合わせる」という部分が人為的で違和感を覚えるという方もおられると思いますが、狙った品質の作物が1世代しか取れないとはいえ、交配育種の結果である「第一世代(F1種)」=「不自然」というわけではないことがお分かりいただけると思います。
■ 雄性不稔とは
しかし、狭義の意味の「F1種」となると、違和感をはるかに通り越し、嫌悪感を持つ人が大勢出てくるのです。その理由は人為的に作られた「雄性不稔(ゆうせいふねん)」にあります。
雄性不稔とは、正常に花粉形成ができず種子ができない突然変異の個体のことです。
元々の「F1種」は、「除雄(じょゆう)」といって、雄しべをピンセット等を使って手作業で除去し、他の品種と交配させる方法により交配育種され採種されていました。
その後、品種改良の技術が進歩していく過程で、「自家不和合性(自家受精を防ぐ遺伝的性質)」を利用する技術へと発展を遂げ、現在においては上述の「雄性不稔」という突然変異の個体を、交配の母株に利用する方法が主流となっています。これが「F1種」の代名詞のようになっており、狭義の「F1種」といわれる所以です。
これらは農業生産方法の一つに過ぎませんが、通常、自然界では起こりえないような異なる品種同士の交配が行われていたり、近年の放射線や化学薬品などを用いて、人為的に「雄性不稔株」を生む技術が、狭義の「F1種」の意味においてネガティブな印象を与えているように感じられます。
というわけで、広義・狭義のいずれにせよ、「F1種」が自然受粉できないようにして人工授粉により作られていることは事実です。
「F1種」は悪者か否か。
参照資料
主要農作物種子法 農林水産省