いきなりですが、「日本は品種改良が盛んな国」
であることをご存知でしょうか。
日本はお米が主食の文化です。
もちろんそれは今も変わりませんが、
昔の日本では、お米は生きていく上で欠かせない
最も大切な食糧でした。
そう、すでにお分かりの通り
本格的に品種改良を始めた作物は「イネ」で、
明治時代後半くらいから始まったと言われています。
■ 自家採種は当たり前だった
もちろんその他の農作物、
すなわち野菜についても各地域において
様々な工夫が施されていたのかもしれませんが、
従来においては収穫した作物から種を採り、
それを次の年に播種して栽培、
また収穫物から種を採って翌年に備える。
このサイクルを繰り返し、繰り返し継続する、
サスティナブルな営みを日本人は行ってきたのです。
いわゆる今でいうところの固定種、
そして特に地域性が高ければ
在来種ということになります。
(当時はこれが当たり前であったため
固定種・在来種という言葉は
ほとんど一般的ではありませんでした)
このサプライチェーンの中で
時折発生する突然変異。
翌年種を植えて栽培してみると
一部だけもの凄く味覚的に優れていたり、
栄養素が濃かったりなどの特異なものが
生まれることがあります。
となれば、農家としては栽培作物の
全てがそうなることを期待しないでしょうか。
ここで「交配」という工夫が始まるわけです。
大雑把に言えば突然変異によって誕生した
美味しい作物の株の花粉を
通常の株に受粉させるのです。
この地道な取組みを何代にも渡って行った結果、
品質の高い作物の再現量が増えていったのです。
換言すればこの性質を固定していったわけです。
(したがってこれも固定種ということになります)
■ 固定種と原種の違い
ところで、恐らく多くの方が
混乱なさるであろうことが
「固定種」と「原種」の違いだと思います。
元々は大元になった原種があるはずですが、
突然変異も含め、何世代にもわたり
生命の循環が繰り返さる中で、
何かしらの変化あるいは進化を遂げ、
はじめにあった原種とは完全に同一ではない、
ある特定の性質が固定化されていきます。
これが固定種です。
誤解を恐れずに言えば、固定種や在来種は
進化し続けることもできるのです。
■ 交配育種の歴史
交配の話に戻ります。
既述の通り、「交配」とは
優れた性質を持つ株の花粉を
平均的な株に受粉させることで
次世代の株の全てを優れた性質を持つものに
グレードアップさせようという試みです。
そして日本人はこの交配育種
(交配させて優れた種を育てる)が
ものすごく得意であったりもするのです。
換言すれば、改良・改善に長けているのです。
その結果として、
日本には多くの品種が存在しました。
「~しました」とした理由は
当シリーズ「種の履歴書」の最終回でお話しますが、
簡単に言ってしまえば、自家採種する農家が
ほとんどなくなってしまった、ということです。
すなわちそれは日本発祥の固定種の消滅、
特に地域性による個性豊かな在来種が
姿を消そうということでもあります。
つまり現代の流通する農作物のほぼ全ては
自家採種により繋げられてきた生命ではなく、
品種改良の“その他の手法”である、
遺伝子工学に基づき生み出された種により
実った農作物を食べていることになります。
これらは一般的にF1種と言われますが、
実は本来のF1種の意味とは大きく異なります。
(※「本来のF1種」は過去コラム、
または次回の記事をご参照下さい)
文脈的に検討が付くと思いますが、
前者のF1種は種を繋がない一世代限りの
途切れた生命ということになるのです。
そしてほぼ全ての日本人が
それを食べているのが現状です。
しかしF1種については、
広義と狭義の意味合いがまるで異なるため、
次回の“シリーズ「 種の履歴書」その2”で
しっかりと整理してみようと思います。
いきなりですが、「日本は品種改良が盛んな国」であることをご存知でしょうか。
日本はお米が主食の文化です。もちろんそれは今も変わりませんが、昔の日本では、お米は生きていく上で欠かせない最も大切な食糧でした。
そう、すでにお分かりの通り、本格的に品種改良を始めた作物は「イネ」で、明治時代後半くらいから始まったと言われています。
■ 自家採種は当たり前だった
もちろんその他の農作物、すなわち野菜についても各地域において様々な工夫が施されていたのかもしれませんが、従来においては収穫した作物から種を採り、それを次の年に播種して栽培、また収穫物から種を採って翌年に備える。このサイクルを繰り返し、繰り返し継続する、サスティナブルな営みを日本人は行ってきたのです。
いわゆる今でいうところの固定種、そして特に地域性が高ければ在来種ということになります(当時はこれが当たり前であったため固定種・在来種という言葉は、ほとんど一般的ではありませんでした)。
このサプライチェーンの中で時折発生する突然変異。翌年種を植えて栽培してみると一部だけもの凄く味覚的に優れていたり、栄養素が濃かったりなどの特異なものが生まれることがあります。
となれば、農家としては栽培作物の全てがそうなることを期待しないでしょうか。
ここで「交配」という工夫が始まるわけです。大雑把に言えば突然変異によって誕生した美味しい作物の株の花粉を通常の株に受粉させるのです。
この地道な取組みを何代にも渡って行った結果、品質の高い作物の再現量が増えていったのです。換言すればこの性質を固定していったわけです(したがってこれも固定種ということになります)。
■ 固定種と原種の違い
ところで、恐らく多くの方が混乱なさるであろうことが、「固定種」と「原種」の違いだと思います。元々は大元になった原種があるはずですが、突然変異も含め、何世代にもわたり生命の循環が繰り返さる中で、何かしらの変化あるいは進化を遂げ、はじめにあった原種とは完全に同一ではない、ある特定の性質が固定化されていきます。これが固定種です。
誤解を恐れずに言えば、固定種や在来種は進化し続けることもできるのです。
■ 交配育種の歴史
交配の話に戻ります。既述の通り、「交配」とは優れた性質を持つ株の花粉を平均的な株に受粉させることで、次世代の株の全てを優れた性質を持つものにグレードアップさせようという試みです。
そして日本人はこの交配育種(交配させて優れた種を育てる)がものすごく得意であったりもするのです。換言すれば、改良・改善に長けているのです。
その結果として、日本には多くの品種が存在しました。「~しました」とした理由は当シリーズ「種の履歴書」の最終回でお話しますが、簡単に言ってしまえば、自家採種する農家がほとんどなくなってしまった、ということです。すなわちそれは日本発祥の固定種の消滅、特に地域性による個性豊かな在来種が姿を消そうということでもあります。
つまり現代の流通する農作物のほぼ全ては自家採種により繋げられてきた生命ではなく、品種改良の“その他の手法”である、遺伝子工学に基づき生み出された種により実った農作物を食べていることになります。
これらは一般的にF1種と言われますが、実は本来のF1種の意味とは大きく異なります(※「本来のF1種」は過去コラム、または次回の記事をご参照下さい)。文脈的に検討が付くと思いますが、前者のF1種は種を繋がない一世代限りの途切れた生命ということになるのです。そしてほぼ全ての日本人がそれを食べているのが現状です。
しかしF1種については、広義と狭義の意味合いがまるで異なるため、次回の“シリーズ「 種の履歴書」その2”でしっかりと整理してみようと思います。
参照資料
主要農作物種子法 農林水産省