翔栄ファーム・前橋農場のKと申します。
今回は、秋に栽培して初冬に新ジャガとして収穫する「出島(デジマ)」というジャガイモについてご案内します。
群馬県にある、私ども翔栄ファーム・前橋農場では8月に定植を終えて、現在、丹精込めて栽培しています。
■ 秋ジャガのポイントは「休眠期間」
さて、ジャガイモで最もポピュラーな「男爵(だんしゃく)」は、春に植えて初夏に新ジャガを収穫します。
ご家庭でも、ジャガイモを保存しておくと芽が出ますが、実はそれを植えてもすぐには育ちません。
何故かというと、ジャガイモには休眠期間というものがあって、この休眠期間を終えないと、育たないのです。
男爵の休眠期間は長く、夏から翌年の春まで休眠します。
ところが「出島」は、休眠期間が3か月程度です。
初夏に収穫したイモを、その秋に定植すると、初冬に新ジャガとして収穫できます。
そして、その新ジャガを3月頃に定植するとまた6月頃に収穫できます。
「出島」は名前のとおり長崎県で開発された品種です。
「出島」より少し身がしっかりした品種で「ニシユタカ」がありますが、これも年2回収穫できます。
皮が赤くて身が黄色くとても柔らかい「アンデスレッド」という品種もあります。
■ 「出島」の定植作業
ジャガイモを畑に植える場合は、皆さんが学校で習ったように半分に切って植えていきます。
切った面が腐らないように、草木灰をつけてから10センチくらいの深さに植えます。
ただ、8月下旬に種芋を植える秋ジャガは、暑さのせいで腐りやすいので丸いまま植えます。ちょっともったいないですが、大人の握りこぶしより大きなイモでもそのまま植えます。
ジャガイモの種芋は、ホームセンターで販売されているのを見かけますが、これらは農林水産省の検定を受けたものとなっています。
翔栄ファームでは、自家採取のタネを植えることを原則にしていて、ジャガイモも自家採取のいもを種芋として使用します。
ただし、ジャガイモには「そうか病」という病気があってその病気にかかっていないか一つ一つしっかりチェックしてから植えています。
■ 一つ一つ丁寧に手で定植
ジャガイモは、親芋とつながっていた部分の反対側に芽が出る部分(これをストロンと呼びます)があります。
定植前には、その部分を上に向けて箱に並べて芽出しという作業をします。
日に当てるとイモ全体が少し緑色になって、ジャガイモの上に向けた部分から少しだけ芽が出て来ます。
これを、溝を切った畑に、30センチ間隔で、10センチの深さに一列に植えます。
その上から土をかけて、ジャガイモの定植の完成です。
定植した後に水やりはしません。
■ 発芽してからの一連の作業
定植してから1~2週間すると発芽します。
これが10センチ以上になったら多く出た芽を2~3本程度に減らします。
これを芽欠きと言います。
芽が多いままで育てると、養分が分散して小芋ばかりになってしまうので、それを防ぐために行います。
芽欠きが終わったら、次は土寄せを行います。
ジャガイモは、親イモから出た芽の茎に出るストロンの先端にイモができます。
そのできたイモが土から出ないように土をかぶせるのが土寄せの目的です。
■ 楽しみな収穫
今年の初夏に収穫した出島は大変好評でした。
収穫作業はとても薄い新ジャガの皮がむけないように、土の中から桃を拾うようにとても気を使いました。
暑い夏の期間は保管中に芽が出ないように保冷庫でしっかりと保管しました。
秋のジャガイモは、12月初め頃の収穫になる予定です。
前橋農場では、赤城山から吹く冷たい風に当たりながら寒い時期に育ちます。
そのため、同じ「出島」でも、春ジャガよりも、でんぷん質が多くなりホクホク感が増すと言われています。
春の出島を食べた方は、ぜひ今度の秋の出島と食べ比べをしてみてください。
皆様においしかったと言ってもらえるように、この秋の出島も丹精込めて育てたいと思います。