世界的紛争によりエネルギーや
各分野原材料のサプライチェーンが
機能不全を起こしています。
食料も同様で、国内においても値上げのニュースは
ほぼ毎日あちらこちらから聞こえてきます。
恐らく多くの方がこれからの食料の物価上昇に対して、
漠然とした不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
なぜならば私たちは日本の食糧自給率が、
とても低いことをよく知っているからです。
しかしその実態は?
となるとあまりうまく説明できないものです。
ということで、当コラムのタイトルは
「飽食の時代が終わり食料摂取点検の時代へ」ですが、
先ずは食料自給率ってそもそも何ですか?
というところから始めて大枠の実態把握をしたいと思います。
■ そもそも食料自給率って何?
農林水産省の
「その1:食料自給率って何?日本はどのくらい?」
からその説明を抜粋してみます。
「食料自給率」とは、その言葉の通り我々が食べる「食料」を「自給している率(割合)」です。つまり、
「日本全体に供給された食料」に占める「日本で生産した食料」の割合ということになります。
「食料」には、米や麦、肉、魚介類、野菜、果物など様々なものがあります。そこで、これらを品目毎に分類して、国内で生産している量や輸入している量を把握、そして計算したものが食料自給率です。
因みに「食料」には、日本人が口にする「全ての食べ物」が含まれます。例えば、スーパーや商店等で売られている生鮮品や加工食品、レストラン等での外食に使用される食材、輸入される原料や加工食品、お菓子類やジュースなども含め、日本で流通している全ての食料を対象にしています。(ただし、お酒だけは嗜好品なので対象外とし、食料自給率の計算にも含めていません。例えば日本酒をたくさん飲むと、米の消費が増えて国内の生産基盤の強化には繋がりますが、自給率には反映されません)
■ 食料自給率の算出方法
食料自給率の算出方法にはカロリーベースと
生産額ベースによる方法とがあります。
個々の説明は割愛しますが、
一般的に「日本の食料自給率は約38%」という時の数値は
カロリーベースの食料自給率を指しています。
食料は人間が生きていくために
欠かすことのできないものです。
この食料安全保障の観点から、
最も基礎的な栄養価である熱量(カロリー)に
着目したものが「カロリーベースの食料自給率」です。
因みに令和元年度の値は「約38%」とは、
国民1人1日当たりに供給している
全品目の合計熱量(2,426kcal)のうち、
国産品目の合計熱量(918kcal)が占める割合
を計算した結果となります。
■ 品目別の食料自給率
まず初めに、日本人が昔から食べてきた品目である
米、野菜、魚介類について見ていきたいと思います。
実はこれら米や野菜、魚介類の自給率は、
それぞれ97%、79%、52%と比較的高くなっています。
これは昔から食べていた分、
生産基盤や生産技術が受け継がれていることや、
生鮮野菜は長期保存ができず輸入が難しい、
魚介類は国内で新鮮なまま流通できるといった理由が考えられます。
次に畜産物(牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳・乳製品)を見ると、
牛肉35%、豚肉49%、鶏肉64%、
鶏卵96%、牛乳・乳製品59%となっており、
これは国内で生産している割合を示しています。
オヤッと思いませんか?
これだけを見ると結構高い自給率に見えます。
しかし実態はこうです。
家畜はとうもろこしや牧草などの飼料を毎日必要とします。
飼料の多くは外国から輸入されており、
飼料の自給率は畜産物全体で25%しかありません。
この飼料の自給率を考慮すると、
例えば、牛肉の自給率は「35%(9%)」と記載するのが正しく、
これは、牛肉の「35%」は国内で生産されていますが、
国産の飼料を食べて純粋に国内で生産されたものは
わずかに「9%」であるということです。
畜産物の自給率は、飼料自給率を考慮に入れると
ずいぶん低い数字になることが分かります。
その他にも品目別の自給率が発表されていますが、
ここでは最後に外国で大規模に生産されている
小麦、大豆、油脂類・飼料の原料について見てみたいと思います。
このあたりは当コラム読者が
明るい分野ではないかと思いますが、
小麦や油脂類・飼料の原料となる
大豆、菜種、とうもろこしなどは、
日本の限られた農地では大量に生産するのが難しく、
生産に適した気候で広大な農地を有する国、
アメリカ、オーストラリア、カナダ、中国、ブラジルなどで
大規模に生産されたものが輸入されており、
自給率はそれぞれ小麦16%、大豆6%、
油脂類13%とかなり低いのが実態です。
■ 飽食の時代は終わり、食物摂取点検の時代へ
前置きが長くなってしまいました。
いよいよ本題に入ります。
恐らく皆様は米の自給率97%と
野菜の79%の数値を見て
「結構大丈夫そう」と思われたのではないでしょうか?
確かに食料自給率全体の約38%と見比べれば
そう思う気持ちは分かります。
ただここで冷静になる必要があります。
これらのほぼすべては慣行農法により栽培されたもので、
農薬や化学肥料が規定量以内において使われています。
規定量以内とは穏やかな表現ですが、
日本は農薬大国であることを思い出してください。
(翔栄ファーム|コラム:国産野菜の安全神話は本当か?)
ここが肝なのです。
冒頭でお伝えした通り、世界の食料サプライチェーンは
大きく変化していくでしょう。
場合によってはサラダ油の原料となっている
輸入トウモロコシや大豆がものすごく高騰して、
「これじゃ国産より高いよね」
なんて事態にならないとも限りません。
当然誰かが需要に応えてくれるでしょう。
その際、輸入が無理なら国内の生産量を
増やそうということになるでしょうし、
日本では米の生産余力がまだ十分にあるから、
食用油用に米を栽培しようとか、
飼料も国産で何とかしてみようとかいう流れも生まれると思います。
ここがポイントです!
つまり「どのように栽培するか?」ということを
真剣に考える絶好のチャンスが訪れるのです。
たとえ物価上昇への対応は避け辛いとしても、
遺伝子組換えとうもろこしや大豆、
グリホサート漬け(残留農薬)の小麦を輸入している現状から
脱却できる道が実は開けているともいえるのではないでしょうか。
そしてその選択ができたとしたら、
それは結果的に自給率が上がることにもなります。
そのためには今置かれている食料の生産方法並びに加工実態を
私たち一人一人が認識する必要があるのです。
すでに飽食の時代は過ぎ去りました。
これからは何を選択していくかという
食物摂取に関する点検と選択のステージ。
この流れに本格的に突入していくことを
日本人の共通認識にしていく必要があるのです。
世界的紛争によりエネルギーや各分野原材料のサプライチェーンが機能不全を起こしています。食料も同様で、国内においても値上げのニュースはほぼ毎日あちらこちらから聞こえてきます。恐らく多くの方がこれからの食料の物価上昇に対して、漠然とした不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
なぜならば私たちは日本の食糧自給率が、とても低いことをよく知っているからです。しかしその実態は? となるとあまりうまく説明できないものです。
ということで、当コラムのタイトルは「飽食の時代が終わり食料摂取点検の時代へ」ですが、先ずは食料自給率ってそもそも何ですか? というところから始めて大枠の実態把握をしたいと思います。
■ そもそも食料自給率って何?
農林水産省の「その1:食料自給率って何?日本はどのくらい?」からその説明を抜粋してみます。
「食料自給率」とは、その言葉の通り我々が食べる「食料」を「自給している率(割合)」です。つまり、
「日本全体に供給された食料」に占める「日本で生産した食料」の割合ということになります。
「食料」には、米や麦、肉、魚介類、野菜、果物など様々なものがあります。そこで、これらを品目毎に分類して、国内で生産している量や輸入している量を把握、そして計算したものが食料自給率です。
因みに「食料」には、日本人が口にする「全ての食べ物」が含まれます。例えば、スーパーや商店等で売られている生鮮品や加工食品、レストラン等での外食に使用される食材、輸入される原料や加工食品、お菓子類やジュースなども含め、日本で流通している全ての食料を対象にしています。(ただし、お酒だけは嗜好品なので対象外とし、食料自給率の計算にも含めていません。例えば日本酒をたくさん飲むと、米の消費が増えて国内の生産基盤の強化には繋がりますが、自給率には反映されません)
■ 食料自給率の算出方法
食料自給率の算出方法にはカロリーベースと生産額ベースによる方法とがあります。個々の説明は割愛しますが、一般的に「日本の食料自給率は約38%」という時の数値はカロリーベースの食料自給率を指しています。
食料は人間が生きていくために欠かすことのできないものです。この食料安全保障の観点から、最も基礎的な栄養価である熱量(カロリー)に着目したものが「カロリーベースの食料自給率」です。
因みに令和元年度の値は「約38%」とは、
国民1人1日当たりに供給している全品目の合計熱量(2,426kcal)のうち、国産品目の合計熱量(918kcal)が占める割合
を計算した結果となります。
■ 品目別の食料自給率
まず初めに、日本人が昔から食べてきた品目である米、野菜、魚介類について見ていきたいと思います。
実はこれら米や野菜、魚介類の自給率は、それぞれ97%、79%、52%と比較的高くなっています。これは昔から食べていた分、生産基盤や生産技術が受け継がれていることや、生鮮野菜は長期保存ができず輸入が難しい、魚介類は国内で新鮮なまま流通できるといった理由が考えられます。
次に畜産物(牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳・乳製品)を見ると、牛肉35%、豚肉49%、鶏肉64%、鶏卵96%、牛乳・乳製品59%となっており、これは国内で生産している割合を示しています。
オヤッと思いませんか? これだけを見ると結構高い自給率に見えます。
しかし実態はこうです。家畜はとうもろこしや牧草などの飼料を毎日必要とします。飼料の多くは外国から輸入されており、飼料の自給率は畜産物全体で25%しかありません。この飼料の自給率を考慮すると、例えば、牛肉の自給率は「35%(9%)」と記載するのが正しく、これは、牛肉の「35%」は国内で生産されていますが、国産の飼料を食べて純粋に国内で生産されたものはわずかに「9%」であるということです。畜産物の自給率は、飼料自給率を考慮に入れるとずいぶん低い数字になることが分かります。
その他にも品目別の自給率が発表されていますが、ここでは最後に外国で大規模に生産されている小麦、大豆、油脂類・飼料の原料について見てみたいと思います。
このあたりは当コラム読者が明るい分野ではないかと思いますが、小麦や油脂類・飼料の原料となる大豆、菜種、とうもろこしなどは、日本の限られた農地では大量に生産するのが難しく、生産に適した気候で広大な農地を有する国、アメリカ、オーストラリア、カナダ、中国、ブラジルなどで大規模に生産されたものが輸入されており、自給率はそれぞれ小麦16%、大豆6%、油脂類13%とかなり低いのが実態です。
■ 飽食の時代は終わり、食物摂取点検の時代へ
前置きが長くなってしまいました。いよいよ本題に入ります。
恐らく皆様は米の自給率97%と野菜の79%の数値を見て「結構大丈夫そう」と思われたのではないでしょうか? 確かに食料自給率全体の約38%と見比べればそう思う気持ちは分かります。
ただここで冷静になる必要があります。これらのほぼすべては慣行農法により栽培されたもので、農薬や化学肥料が規定量以内において使われています。規定量以内とは穏やかな表現ですが、日本は農薬大国であることを思い出してください。(翔栄ファーム|コラム:国産野菜の安全神話は本当か?)
ここが肝なのです。
冒頭でお伝えした通り、世界の食料サプライチェーンは大きく変化していくでしょう。場合によってはサラダ油の原料となっている輸入トウモロコシや大豆がものすごく高騰して、「これじゃ国産より高いよね」なんて事態にならないとも限りません。
当然誰かが需要に応えてくれるでしょう。その際、輸入が無理なら国内の生産量を増やそうということになるでしょうし、日本では米の生産余力がまだ十分にあるから、食用油用に米を栽培しようとか、飼料も国産で何とかしてみようとかいう流れも生まれると思います。
ここがポイントです!
つまり「どのように栽培するか?」ということを真剣に考える絶好のチャンスが訪れるのです。たとえ物価上昇への対応は避け辛いとしても、遺伝子組換えとうもろこしや大豆、グリホサート漬け(残留農薬)の小麦を輸入している現状から脱却できる道が実は開けているともいえるのではないでしょうか。
そしてその選択ができたとしたら、それは結果的に自給率が上がることにもなります。そのためには今置かれている食料の生産方法並びに加工実態を私たち一人一人が認識する必要があるのです。
すでに飽食の時代は過ぎ去りました。これからは何を選択していくかという食物摂取に関する点検と選択のステージ。この流れに本格的に突入していくことを日本人の共通認識にしていく必要があるのです。