老化と聞いて皆様は何を思うでしょうか。
若い方は全くピンとこないと思いますが、
一定の年齢を経た方にとっては
切実な問題であるかもしれません。
あるいは老化は自然の摂理であり、
抗うことなく流れに身を任せるべきと
達観なさっているかもしれません。
しかし最近では食生活を改善することで
老化のスピードをコントロールできるという考えが
一般的になってきているのではないでしょうか。
というわけで今回のコラムは、
「食生活と老化の関係」というテーマで、
特に「老化」にフォーカスしたお話を
考えてみたいと思っています。
■ 「最大寿命」ってご存知ですか?
平均寿命という言葉は多くの方がご存じです。
生まれてから亡くなるまでの平均的な年数ですね。
そしてこの平均寿命は男女ともに伸びており、
nippon.comによると、日本国内においては
女性は87.45歳、男性は81.41歳とあります。
戦国時代の「人生50年」という謂れと比べれば、
何て長生きできるようになったのでしょうか。
とはいえ、では皆が亡くなるその時まで
「健康かどうか」となると全くの別問題です。
そして平均寿命と併せてよく耳にする言葉は
「健康寿命」です。
厚生労働省の発表によると、
男性の健康寿命は平均寿命より約9年短く、
女性は約12年短いとされています。
つまりこの約9年~12年のあいだは、
何かしらの身体的トラブルを抱えていることに。
そういう意味では、
健康寿命に焦点を合わせた方が
現実的なのではないでしょうか。
さて、少し視点を変えて
「最大寿命」について見てみましょう。
最大寿命とは最高レベルの長寿年齢を表す言葉です。
因みに100歳まで生きる方は全体の約3%。
100人に3人という割合です。
115歳ともなると1億人に1人という数になります。
世界人口78億人とすると、
たった7~8人しかいないことになります。
■ 老化は病気である
「Lifespan(老いなき世界)」という書籍を執筆した
デビット・A・シンクレア氏
(ハーバード大学医学大学院教授)は
その中で、「人生の晩年は苦痛にまみれている」といい、
人工呼吸や投薬、放射線治療や手術など、
現代医学の力によって半ば生かされているに過ぎない、
と述べています。
併せて現代医療の弊害についても
的確な指摘をされています。
氏の言葉では、「医療は“モグラたたき”である」と。
つまり、癌なら癌、心臓病なら心臓病、
というように目の前の症状(疾病)に対して
集中的に攻撃をしているに過ぎず、
一部に過度な負荷を掛ける行為によって、
逆に身体の他の箇所に対しては
大きな負担を強いることになり、
結果として他の病気を生み出す
きっかけを作っている、というのです。
しかし、氏の真骨頂はここからです。
癌やその他の厄介な疾病はただの症状に過ぎず、
病気の根本は「老化」であり、
しかもこの「老化」は治るというのです。
つまり「老化は病気である」という
結論を述べています。
ではこの「老いなき世界」をもとに
「老化」について考えてみたいと思います。
■ 老化はなぜ起こる?
先ずは「老化のメカニズム」についてお話します。
老化とは、一言でいえば「DNAの損傷」です。
そしてDNAの損傷は日常的に頻繁に起こっています。
人間の身体は髪の毛が伸びたり、
新しい皮膚が再生されていくなど、
年齢を経ても細胞を作り変える力を持っています。
この力のことを「サーチュイン」といいます。
書籍「Lifespan」の中ではこのサーチュインを、
救助隊に例えて解説しています。
サーチュインの通常の役割は身体の再生ですが、
DNAに損傷が起こるとその箇所に対して
救助隊として出向いて修復するというのです。
この修復の頻度とダメージ箇所の数が多ければ多いほど、
このサーチュインは本来の役目である細胞の再生に
エネルギーを使えなくなってしまうため、
「老化が進む」というのです。
そしてDNAの損傷期間が長くなるほど、
その細胞は「ゾンビ細胞化」し、
サーチュインが元の場所に戻れず
結果として病気が発症するのだと。
■ 「老化は治る」って本当?
一昔前までは「成人病」という言葉がありましたが、
今ではそれは「生活習慣病」にとって代わっています。
このことは「老化」と深い関わりがあります。
老化のメカニズムはDNAの損傷であり、
年齢とは関係ないということに結び付きます。
そもそもDNAの損傷とは何でしょうか?
DNA(デオキシリボ核酸)には生命に関わる
膨大なデータが記録・保存されています。
「損傷」という言葉からは、
このデータが破損する印象を抱きがちですが、
実はDNAは堅牢で、中のデータが
文字通り損傷することはまずありません。
「Lifespan」の中では、DNAの損傷のことを
CDの表面についた傷に例えています。
この傷というアナログ的な現象により
音楽が再生されなくなりますが、
中身のデジタルデータは無事であり、
CD盤面を研磨すれば音楽は元通り鳴り響くのです。
老化も同様です。
この傷(損傷)を研磨して、
またそもそも傷がつかないようにすれば
老化は防げる、ということのようです。
更に驚くことには、老化そのものを治すだけでなく、
若がえる力を大きくすることができるというのです。
つまりサーチュインという名の救助隊を、
トレーニングによって強くすればいいと。
■ 老化対策の具体的方法1
具体的方法論を3つほど述べていきますが、
すべてに共通するポイントは、
「破壊せずに負荷をかける」ということです。
老化対策の1つ目の具体的方法は「食事を減らす」。
1日3食は論外。最高でも2食が限界。
そして各食事の量を減らします。理想は1食です。
この食事の回数と量を減らすことと、
「破壊せずに負荷をかける」との
関係性は何なのでしょうか。
簡潔にいうと、「いつも軽い空腹状態を保つ」
ということがサーチュイン(救助隊)にとって
理想的な状態であり、軽い空腹が
「破壊せずに負荷をかけている」ことになるのです。
換言すれば「軽い空腹」という軽度な負荷が、
DNAを損傷することもなく、そうかといって
サーチュインを遊ばせるわけではなく、
むしろトレーニング状況を生み出しているのです。
何を言っているかというと、
軽い空腹という負荷でサーチュインは出動しますが、
あくまでも軽い負荷でありDNAを損傷するものではなく、
すぐに帰還します。軽い空腹の間はこれを繰り返します。
これがサーチュインのトレーニングとなり、
細胞を作り変える力、つまり若返る力を
増やすことになる、というのです。
このイメージが出来たところで、
私たちがまず自覚しなければならないこと、
それは、私たちはすでに太っていて、
老化を招いている状態にあるということでしょう。
更にもう1つ。
肉、卵、乳製品、魚を減らす必要があります。
動物性たんぱく質はエネルギーが多く、
「食事を減らす」ことにより
軽い空腹にある人にとっては過剰過ぎるためです。
必須アミノ酸は植物性で十分に摂取でき、
まさにちょうどいいのです。
そして最後に非常に書きづらいことですが、
「加工品」は絶対に食べないということです。
意外かもしれませんが、世の中には加工品の
有害性に関する数多くのエビデンスが存在し、
医学界では常識です。
■ 老化対策の具体的方法2
ずばり10分から15分程度の軽いジョギングや
少し早めのウォーキングをすることです。
すでにお分かりの通り、
ここでも「破壊せずに負荷をかける」という
コアコンピタンスが貫かれています。
つまり軽く追い込むことにより、
サーチュインがトレーニングされているのです。
念のためですが、過度な運動、激しい運動は、
筋肉を鍛えることはできても
老化対策にはつながりません。
理由は恐らくDNAを損傷するからです。
少なくとも根性論は若返りには不要、
いやむしろご法度ということになりそうです。
■ 老化対策の具体的方法3
3つ目の具体的方法は、
何と「サウナに入ること」だといいます。
サウナと「破壊せずに負荷をかける」ことの
関連性はこうです。
熱いところから冷たい水風呂に入ることによって
サーチュインが活発に働き始めるというのです。
寒暖の差が、軽い負荷を生み出しているとのこと。
そしてサウナに入る習慣を作れるのであれば、
できるだけ頻度を高めることが推奨されています
(日本ではなかなか難しいですが)。
今回は「食生活と老化の関係」というテーマで
お話をしてきましたがいかがだったでしょうか。
少なくとも「食事を減らす」ことと
「軽い運動をする」ことはすぐに始められると思います。
もし皆様が「老いなき世界」への道を選択なさるのであれば、
一度食生活を見直されてみてはいかがでしょうか。
因みに喫煙は必ずDNAを損傷するそうです
(これも非常に言いづらいのですが)
老化と聞いて皆様は何を思うでしょうか。若い方は全くピンとこないと思いますが、一定の年齢を経た方にとっては切実な問題であるかもしれません。あるいは老化は自然の摂理であり、抗うことなく流れに身を任せるべきと達観なさっているかもしれません。
しかし最近では食生活を改善することで、老化のスピードをコントロールできるという考えが、一般的になってきているのではないでしょうか。
というわけで今回のコラムは、「食生活と老化の関係」というテーマで、特に「老化」にフォーカスしたお話を考えてみたいと思っています。
■ 「最大寿命」ってご存知ですか?
平均寿命という言葉は多くの方がご存じです。生まれてから亡くなるまでの平均的な年数ですね。そしてこの平均寿命は男女ともに伸びており、nippon.comによると、日本国内においては女性は87.45歳、男性は81.41歳とあります。戦国時代の「人生50年」という謂れと比べれば、何て長生きできるようになったのでしょうか。
とはいえ、では皆が亡くなるその時まで「健康かどうか」となると全くの別問題です。そして平均寿命と併せてよく耳にする言葉は「健康寿命」です。
厚生労働省の発表によると、男性の健康寿命は平均寿命より約9年短く、女性は約12年短いとされています。つまりこの約9年~12年のあいだは、何かしらの身体的トラブルを抱えていることに。そういう意味では、健康寿命に焦点を合わせた方が現実的なのではないでしょうか。
さて、少し視点を変えて「最大寿命」について見てみましょう。最大寿命とは最高レベルの長寿年齢を表す言葉です。因みに100歳まで生きる方は全体の約3%。100人に3人という割合です。115歳ともなると1億人に1人という数になります。世界人口78億人とすると、たった7~8人しかいないことになります。
■ 老化は病気である
「Lifespan(老いなき世界)」という書籍を執筆したデビット・A・シンクレア氏(ハーバード大学医学大学院教授)は、その中で「人生の晩年は苦痛にまみれている」といい、人工呼吸や投薬、放射線治療や手術など、現代医学の力によって半ば生かされているに過ぎない、と述べています。
併せて現代医療の弊害についても的確な指摘をされています。氏の言葉では、「医療は“モグラたたき”である」と。つまり、癌なら癌、心臓病なら心臓病、というように目の前の症状(疾病)に対して集中的に攻撃をしているに過ぎず、一部に過度な負荷を掛ける行為によって、逆に身体の他の箇所に対しては大きな負担を強いることになり、結果として他の病気を生み出すきっかけを作っている、というのです。
しかし、氏の真骨頂はここからです。癌やその他の厄介な疾病はただの症状に過ぎず、病気の根本は「老化」であり、しかもこの「老化」は治るというのです。つまり「老化は病気である」という結論を述べています。
ではこの「老いなき世界」をもとに「老化」について考えてみたいと思います。
■ 老化はなぜ起こる?
先ずは「老化のメカニズム」についてお話します。老化とは、一言でいえば「DNAの損傷」です。そしてDNAの損傷は日常的に頻繁に起こっています。人間の身体は髪の毛が伸びたり、新しい皮膚が再生されていくなど、年齢を経ても細胞を作り変える力を持っています。この力のことを「サーチュイン」といいます。書籍「Lifespan」の中ではこのサーチュインを、救助隊に例えて解説しています。サーチュインの通常の役割は身体の再生ですが、DNAに損傷が起こるとその箇所に対して救助隊として出向いて修復するというのです。
この修復の頻度とダメージ箇所の数が多ければ多いほど、このサーチュインは本来の役目である細胞の再生にエネルギーを使えなくなってしまうため、「老化が進む」というのです。そしてDNAの損傷期間が長くなるほど、その細胞は「ゾンビ細胞化」し、サーチュインが元の場所に戻れず結果として病気が発症するのだと。
■ 「老化は治る」って本当?
一昔前までは「成人病」という言葉がありましたが、今ではそれは「生活習慣病」にとって代わっています。このことは「老化」と深い関わりがあります。老化のメカニズムはDNAの損傷であり、年齢とは関係ないということに結び付きます。
そもそもDNAの損傷とは何でしょうか? DNA(デオキシリボ核酸)には生命に関わる膨大なデータが記録・保存されています。「損傷」という言葉からは、このデータが破損する印象を抱きがちですが、実はDNAは堅牢で、中のデータが文字通り損傷することはまずありません。
「Lifespan」の中では、DNAの損傷のことをCDの表面についた傷に例えています。この傷というアナログ的な現象により音楽が再生されなくなりますが、中身のデジタルデータは無事であり、CD盤面を研磨すれば音楽は元通り鳴り響くのです。
老化も同様です。この傷(損傷)を研磨して、またそもそも傷がつかないようにすれば老化は防げる、ということのようです。
更に驚くことには、老化そのものを治すだけでなく、若がえる力を大きくすることができるというのです。つまりサーチュインという名の救助隊を、トレーニングによって強くすればいいと。
■ 老化対策の具体的方法1
具体的方法論を3つほど述べていきますが、すべてに共通するポイントは、「破壊せずに負荷をかける」ということです。
老化対策の1つ目の具体的方法は「食事を減らす」。1日3食は論外。最高でも2食が限界。そして各食事の量を減らします。理想は1食です。この食事の回数と量を減らすことと、「破壊せずに負荷をかける」との関係性は何なのでしょうか。
簡潔にいうと、「いつも軽い空腹状態を保つ」ということがサーチュイン(救助隊)にとって理想的な状態であり、軽い空腹が「破壊せずに負荷をかけている」ことになるのです。換言すれば「軽い空腹」という軽度な負荷が、DNAを損傷することもなく、そうかといってサーチュインを遊ばせるわけではなく、むしろトレーニング状況を生み出しているのです。
何を言っているかというと、軽い空腹という負荷でサーチュインは出動しますが、あくまでも軽い負荷でありDNAを損傷するものではなく、すぐに帰還します。軽い空腹の間はこれを繰り返します。これがサーチュインのトレーニングとなり、細胞を作り変える力、つまり若返る力を増やすことになる、というのです。
このイメージが出来たところで、私たちがまず自覚しなければならないこと、それは、私たちはすでに太っていて、老化を招いている状態にあるということでしょう。
更にもう1つ。肉、卵、乳製品、魚を減らす必要があります。動物性たんぱく質はエネルギーが多く、「食事を減らす」ことにより軽い空腹にある人にとっては過剰過ぎるためです。必須アミノ酸は植物性で十分に摂取でき、まさにちょうどいいのです。
そして最後に非常に書きづらいことですが、「加工品」は絶対に食べないということです。意外かもしれませんが、世の中には加工品の有害性に関する数多くのエビデンスが存在し、医学界では常識です。
■ 老化対策の具体的方法2
ずばり10分から15分程度の軽いジョギングや少し早めのウォーキングをすることです。すでにお分かりの通り、ここでも「破壊せずに負荷をかける」というコアコンピタンスが貫かれています。つまり軽く追い込むことにより、サーチュインがトレーニングされているのです。
念のためですが、過度な運動、激しい運動は、筋肉を鍛えることはできても老化対策にはつながりません。理由は恐らくDNAを損傷するからです。少なくとも根性論は若返りには不要、いやむしろご法度ということになりそうです。
■ 老化対策の具体的方法3
3つ目の具体的方法は、何と「サウナに入ること」だといいます。サウナと「破壊せずに負荷をかける」ことの関連性はこうです。
熱いところから冷たい水風呂に入ることによってサーチュインが活発に働き始めるというのです。寒暖の差が、軽い負荷を生み出しているとのこと。そしてサウナに入る習慣を作れるのであれば、できるだけ頻度を高めることが推奨されています(日本ではなかなか難しいですが)。
今回は「食生活と老化の関係」というテーマでお話をしてきましたがいかがだったでしょうか。少なくとも「食事を減らす」ことと「軽い運動をする」ことはすぐに始められると思います。もし皆様が「老いなき世界」への道を選択なさるのであれば、一度食生活を見直されてみてはいかがでしょうか。
因みに喫煙は必ずDNAを損傷するそうです(これも非常に言いづらいのですが)。
参照資料
「Lifespan(老いなき世界)」デビット・A・シンクレア著