■ 【農場便り】無農薬にこだわり、トラブル続出の土地で麦を作りたい!第1話のおさらい
粘土質で重たく水はけが悪い荒地を、道具をお借りしてなんとか開墾し、小ロットでも製粉加工してくれる業者さんを見つけて、麦こがし(はったい粉)を製品化するというゴールに向けて、六条大麦を作るべく翔栄ファームのメンバーは畑に向かったのです。
■ 六条大麦作り開始!
2020年10月の朝、意気揚々と畑に乗り込んだ私たちは、アドバイザーの指導のもと種まきを開始しました。大麦も小麦も秋に種まきをすれば年内に芽が出るのです。日々の麦畑巡回の中で徐々に芽吹く麦を見て、みんなに笑顔があふれました。
年末時期の大事な作業は”麦踏み”です。初めて聞いたときは、正直戸惑いました。大事に育てた麦を踏む作業?!いいの?!
しかし、これは麦にとってとても大事な作業なんです。麦は踏むと穂の数が多くなる性質があり、寒さで発生する霜柱によって浮いてくる麦の根っこを地面に押し込む必要があるのです。しかし私たちには”麦踏みローラー”なんて超便利な農業マシーンはありません。「踏まれて強くなれよ」と念じながら地道に自分の足で踏みました。
麦踏みの数日後、畑は雪に覆われました。六条大麦の大豊作を祈りながら2020年は幕を閉じました。
年が明けて麦畑は育ってきましたが、チョロチョロと生えている雑草の高さにも負けていました。
私は正直不安で、麦が全滅する悪い想像で頭が一杯の状態で数ヶ月過ごしました。しかしそれは私が知らなかっただけで、3月半ばからの春雨で麦は一気に育っていったのです!
■ 待ちに待った収穫!まさかの手作業・・・
麦は6月に収穫期を迎えます。さあ!収穫だ!と意気込んで畑に向かう私の手にはカマがしっかりと握られていました。もちろんコンバインなんて超超便利な農業マシーンなんかありません。親切に貸してくださる方も見つかりませんでした。
コンバインの存在は知っていましたが、米用とは別に麦用コンバインがあることを初めて知りました。米用コンバインでも収穫は可能ですが、米や粟やひえが残って麦と混ざると米の等級が下がってしまうため、米と麦の併用は避けられていました。
私たちは自分の手とカマで4日間かけて麦を刈り取りました。
刈り取りのあとは麦の粒を穂から取り離す、脱穀という作業が待っています。コンバインなら刈り取りと脱穀を同時に自動でやってくれるのですが、私たちにとっては夢のまた夢の話。どうやったら脱穀できるのやらと困り果てていると、そこにまたもや助け舟が接岸したのです!
知り合いの農家の方が「納屋に、千歯扱き(せんばこき)と唐箕(とうみ)があるから」と貸してくださったのです。私たちは江戸時代から使われている農具で1週間かけて脱穀しました!
六条大麦は穂の先部分が長いため、こちらも手作業で取らなければいけません。その方法は袋に入れて揉んで取るという単純ですが、これまた数日間の大変な作業でした。
こうしてとうとう1回目の六条大麦の収穫が終わりました。
翔栄ファームは無農薬の穀物栽培を悲願としていました。これをみるために頑張ってきたのです。
初めての麦作りは「できればいいな」」と失敗を覚悟していましたが、1700平米(1平米は1m×1m)の広さで120キロ収穫を想定していましたが、実際に収穫できたのは80キロでした。
■ やっとできた麦が・・・
収穫した六条大麦は専門業者で焙煎してもらいます。しかし小ロットで焙煎をしてくれる業者さんが見つからないのです。
業界的には、小麦はキロ単位ではなくトン単位でなければ商売にはならず、80キロ程度は工場の窯を温めただけでも出るゴミ程度なのだそうです。
またもや小規模農業には渡れない海の出現です。
しかしここでまたも助け舟が到来したのです。それはなんと東京都板橋区の業者さんでした。
岐阜で作った六条大麦を、東京の板橋まで車で半日かけて運びました。
釜で煎って香ばしさをまとった麦こがし(はったい粉)に、私たちは歓喜しました。
荒地の開墾から製品化するまでの、11ヶ月間の苦労が報われた瞬間でした。
無農薬の麦こがし(はったい粉)は、取り扱っているところも少なくすぐに完売しました!
しかし収穫量に比べての費用対効果は低く、結果的に大赤字となってしまいました。
2021年10月、数々の困難を克服したことを糧に望んだ2回目の麦作りは順調でした。種まきと麦踏みを終え、迎えた年明けの春の雨で麦はすくすくと育っていきました。アドバイザーも「今回は期待できる!」との言葉に私たちの期待で胸が高まりました。
6月に入り、日々育っていく麦に梅雨の雨が降り注ぎました。その雨は連日降り続き、ついには麦にカビを生やしたのです。
翔栄ファームの麦は無農薬栽培のため、防カビの農薬は使っていませんでした。その結果、私たちの六条大麦は梅雨で全滅してしまいました。
失意の中、以前購入してくださった方々から問い合わせがありました。「今年はいつ無農薬の麦こがし(はったい粉)が買えますか?」有り難すぎるお尋ねに、事情を話し丁重にお断りしました。
下を向いてばかりいられない私たちは、次こそはと動き出しました。
しかし岐阜での麦作り3回目は連作障害の可能性があるため、大豆と黒豆を作りました。
麦作りの場所を群馬に移しての再チャレンジが始まったのです。
第3話につづく