翔栄ファームは固定種・在来種の
自家採種100%を目指しています。
これは揺るぎない私たちの活動の中心をなすものです。
今回の自然栽培の先生のお話の中で、
改めて私たちが実践する種取りについて、
もっと理解を深めるための
本質的な内容がありましたので
皆様にも共有させていただきます。
■ そもそも自然栽培、自家採種とは?
過去の翔栄ファームコラム
(自然栽培と自然農法は同じものですか?)で、
自然栽培と自然農法の違いについて
大まかに分類したことがありますが、
今回先生が仰ったことは、このような半ば理屈的な話ではなく、
いたって実践的且つ本質的なものでした。
(先生)「そもそも私たちが行っている自然栽培における自家採種とは何でしょうか?」
このように投げかけからスタートしました。
(先生)「当然ベースには種を守る(種をつなげる)ことがありますが、これだけではあまりも表面的過ぎて本当の意味が見えてきません。以前、地球全体が一つの生命体であり、あらゆる生き物は地球の器官や細胞のようなものです、とお話しました。
自然栽培も同様で、生物多様性の働きによる自然界の営みの中に人間も一つの細胞として農業を行っていくこと、これが正に私たちが日々実践していることなのです。端的に言うならば「環境に負荷を掛けずに自然環境の中で野菜を育てる」ということです」
先生は本題である種取りの話に入る前に、
ここをしっかりと再確認する必要があると仰いました。
■ 自然栽培の種取りは「肥毒」を抜くことが本質!
どのような土地でも(砂漠のような特殊な環境は除く)
地表から20~30センチくらいの部分を表土と呼び、
それより深いところを下層土と呼びます。
農地の場合、圧倒的に慣行農法が多いため、
この表土と下層土の境に「肥毒層」という
過剰な肥料により出来合った中間層が形成されます。
文字通り肥毒とは肥料が毒となっている状態です。
これが表土から本来的な土の栄養バランスを奪います。
もちろん施肥の多寡によって程度の違いはありますが、
基本的にその土地が本来持っている栄養量を超えた分は
毒となってしまうのです。
残念ながらそれが有機肥料であっても
過剰分はそうなります。
このような環境下で育った作物はもちろんのこと、
作物から採取した種の中にも肥毒が蓄積しています。
つまり種の「肥毒」を抜くためには、清浄な大地で
数代にわたって自家採種をし続ける必要があります。
私たち翔栄ファームが自家採種100%を目指す、
とはこういうことなのです。
とはいうものの自然本来の清浄な大地とは
どのような場所をいうのでしょうか?
■ 野菜も雑草も木々も、すべて「植物」なのに
人間視点で見ると野菜と雑草
または木々は別物として分類されがちですが、
もう少し俯瞰してみるとこれらは全て植物そのものです。
違いはといえば人間が食べるかどうかだと思います。
とはいえ疑問を感じる方もおられると思います。
なぜ木々や雑草は特に栽培されることもなく、
同じ場所で生き続けられるのでしょうか?
分かりづらいと思いますので言い方を変えます。
これらが全て植物なのに、
野菜は同じ場所で連作をするなといいながら、
どうして雑草や木々は同じ場所で生き続け、
毎年たくましく育つのでしょうか?
■ 大切なのは土壌の栄養のバランス
ここが人間の勘違い、または
欲望の結果ということになるのですが、
植物の生育に大切なことは、
その土地が持つ自然な状態での土壌の栄養バランスであり、
栄養分の多寡ではありません。
したがってそもそもその土壌に何かを加える必要はないのです。
というよりも加えるべきではないのです。
ここでいう栄養バランスとは
そこに生育する植物の存在も含まれます。
つまり植物自体が生態系の構成員であり、
自然のフロー(循環)を成す大切なメンバーです。
したがって連作がどうこうというレベルの話ではないのです。
そこに生育する雑草の種は真下に落ち発芽します。
そして木々は同じ場所に数十年あるいは数百年生き続けます。
■ 肥毒と無縁な植物は「根」が伸びる
人間の過保護による過剰な肥料が入った
畑の野菜は根があまり伸びません。
理由は明白です。根を伸ばさなくても
すぐに栄養分を吸収することができるからです。
対して自然なフローを維持している
自然に近い状態の畑では根が長く伸び、
結果丈夫な根となり作物も力強く育ちます。
種も同様です。
肥毒の蓄積された種は過剰な栄養量を必要とするため、
過剰な栄養分のある肥毒層のある畑でしか十分に生育しません。
一方、肥毒のない種は自然に近い状態の畑でよく育ち、
逆に肥毒の多い場所には相性が合いません。
翔栄ファームが肥毒の抜けた種の
自家採種100%を目指す理由はここにあります。
この目標を達成するためには、
これからも自然栽培に適した圃場を
どんどん増やしていくことがセットになります。
つまり清浄な自然栽培に適した大地を生み出すことが、
自然への感謝を示す行動そのものになると考えているからです。
■ 在来種を育てる
とはいえ清浄な大地でどんな種類でも育つわけではありません。
環境適正は当然あります。
また、仮に本来適性がある作物でも、
すぐにその土地に馴染むわけではありません。
人間も同じだと思います。
見知らぬ土地に居を移したところを
想像していただきたいのですが、
その環境、特に人間関係においてその土地に溶け込むには、
少し時間が掛かるのではないでしょうか。
作物がその大地の生物多様性の中に
順応するには少し時間が掛かります。
しかしそれが実現した頃には、
恐らく自家採種で栽培し続けた作物はその土地で在来種化し、
そして種からは肥毒が完全に抜けきっていると思うのです。
翔栄ファームはこれを目指しています。
翔栄ファームは固定種・在来種の自家採種100%を目指しています。これは揺るぎない私たちの活動の中心をなすものです。
今回の自然栽培の先生のお話の中で、改めて私たちが実践する種取りについて、もっと理解を深めるための本質的な内容がありましたので、皆様にも共有させていただきます。
■ そもそも自然栽培、自家採種とは?
過去の翔栄ファームコラム(自然栽培と自然農法は同じものですか?)で、自然栽培と自然農法の違いについて大まかに分類したことがありますが、今回先生が仰ったことは、このような半ば理屈的な話ではなく、いたって実践的且つ本質的なものでした。
(先生)「そもそも私たちが行っている自然栽培における自家採種とは何でしょうか?」
このように投げかけからスタートしました。
(先生)「当然ベースには種を守る(種をつなげる)ことがありますが、これだけではあまりも表面的過ぎて本当の意味が見えてきません。以前、地球全体が一つの生命体であり、あらゆる生き物は地球の器官や細胞のようなものです、とお話しました。
自然栽培も同様で、生物多様性の働きによる自然界の営みの中に人間も一つの細胞として農業を行っていくこと、これが正に私たちが日々実践していることなのです。端的に言うならば「環境に負荷を掛けずに自然環境の中で野菜を育てる」ということです」
先生は本題である種取りの話に入る前に、ここをしっかりと再確認する必要があると仰いました。
■ 自然栽培の種取りは「肥毒」を抜くことが本質!
どのような土地でも(砂漠のような特殊な環境は除く)地表から20~30センチくらいの部分を表土と呼び、それより深いところを下層土と呼びます。農地の場合、圧倒的に慣行農法が多いため、この表土と下層土の境に「肥毒層」という過剰な肥料により出来合った中間層が形成されます。
文字通り肥毒とは肥料が毒となっている状態です。これが表土から本来的な土の栄養バランスを奪います。もちろん施肥の多寡によって程度の違いはありますが、基本的にその土地が本来持っている栄養量を超えた分は毒となってしまうのです。残念ながらそれが有機肥料であっても過剰分はそうなります。
このような環境下で育った作物はもちろんのこと、作物から採取した種の中にも肥毒が蓄積しています。つまり種の「肥毒」を抜くためには、清浄な大地で数代にわたって自家採種をし続ける必要があります。私たち翔栄ファームが自家採種100%を目指す、とはこういうことなのです。
とはいうものの自然本来の清浄な大地とはどのような場所をいうのでしょうか?
■ 野菜も雑草も木々も、すべて「植物」なのに
人間視点で見ると野菜と雑草または木々は別物として分類されがちですが、もう少し俯瞰してみるとこれらは全て植物そのものです。違いはといえば人間が食べるかどうかだと思います。
とはいえ疑問を感じる方もおられると思います。なぜ木々や雑草は特に栽培されることもなく、同じ場所で生き続けられるのでしょうか?
分かりづらいと思いますので言い方を変えます。これらが全て植物なのに、野菜は同じ場所で連作をするなといいながら、どうして雑草や木々は同じ場所で生き続け、毎年たくましく育つのでしょうか?
■ 大切なのは土壌の栄養のバランス
ここが人間の勘違い、または欲望の結果ということになるのですが、植物の生育に大切なことは、その土地が持つ自然な状態での土壌の栄養バランスであり、栄養分の多寡ではありません。したがってそもそもその土壌に何かを加える必要はないのです。というよりも加えるべきではないのです。
ここでいう栄養バランスとはそこに生育する植物の存在も含まれます。つまり植物自体が生態系の構成員であり、自然のフロー(循環)を成す大切なメンバーです。
したがって連作がどうこうというレベルの話ではないのです。そこに生育する雑草の種は真下に落ち発芽します。そして木々は同じ場所に数十年あるいは数百年生き続けます。
■ 肥毒と無縁な植物は「根」が伸びる
人間の過保護による過剰な肥料が入った畑の野菜は根があまり伸びません。理由は明白です。根を伸ばさなくてもすぐに栄養分を吸収することができるからです。
対して自然なフローを維持している自然に近い状態の畑では根が長く伸び、結果丈夫な根となり作物も力強く育ちます。
種も同様です。肥毒の蓄積された種は過剰な栄養量を必要とするため、過剰な栄養分のある肥毒層のある畑でしか十分に生育しません。
一方、肥毒のない種は自然に近い状態の畑でよく育ち、逆に肥毒の多い場所には相性が合いません。
翔栄ファームが肥毒の抜けた種の自家採種100%を目指す理由はここにあります。この目標を達成するためには、これからも自然栽培に適した圃場をどんどん増やしていくことがセットになります。つまり清浄な自然栽培に適した大地を生み出すことが、自然への感謝を示す行動そのものになると考えているからです。
■ 在来種を育てる
とはいえ清浄な大地でどんな種類でも育つわけではありません。環境適正は当然あります。また、仮に本来適性がある作物でも、すぐにその土地に馴染むわけではありません。
人間も同じだと思います。見知らぬ土地に居を移したところを想像していただきたいのですが、その環境、特に人間関係においてその土地に溶け込むには、少し時間が掛かるのではないでしょうか。
作物がその大地の生物多様性の中に順応するには少し時間が掛かります。しかしそれが実現した頃には、恐らく自家採種で栽培し続けた作物はその土地で在来種化し、そして種からは肥毒が完全に抜けきっていると思うのです。翔栄ファームはこれを目指しています。
参考:
プレジデント社刊「WIRED VOL.40(マイクロオーガニズム共生基礎ガイド2021)」