こんにちは!翔栄ファーム 龍ヶ崎圃場(ほじょう)のNです。
みなさんは『自家採種』という言葉を聞いたことはありますか?
自家採種とは、農家が育てた野菜から自分で種を採り、採った種で次の野菜を作ることです。
全ての作物は小さな種から生まれます。農家は一番元気に育った、子孫を残していくのに相応しい作物を選び、その土地と環境と自分の栽培方法に合った品種を育てていきます。 自家採種を何度も繰り返すうちに固定された形質が親から子へ受け継がれるため、その地域にあった形で生育します。循環型農業の第一歩です。
自家採種は、とても手間のかかる作業です。多くの農家は、種苗屋から種や苗を購入しています。
今回は、なぜ私たち翔栄ファームが『自家採種』にこだわるのか、をお話しします。
■ 種には交配種(F1種)と、固定種(在来種)の2種類があります。
種には交配種(F1種)と、固定種(在来種)の2種類があります。
日本の農家の多くは交配種(F1種)を使っています。同じ規格の作物を大量に作ることが求められるため、病気に強く収穫量や品質も安定するので、種苗メーカーが開発する交配種を使っています。市場に出回っている作物の9割は慣行農法で作られる交配種(F1種)です。
残りの1割弱が固定種(在来種)による栽培と言われています。自家採種の難しさは、生育にばらつきのある作物の中から一番状態の良いものを見極め、病害虫に注意しながらい圃場に残し続ける点があげられます。
通常の慣行栽培では、収穫後にすぐに圃場を耕し次の作物を作り始めることができるため、効率的です。また連作障害(同じ畑で作物を作り続けることで土地がやせ、作物の生育が悪くなる)を避けるために農薬や化学肥料を使用することで栽培量の安定化を図っています。
私たち翔栄ファームの行っている自家採種では、収穫後も種取用に残した作物が完熟、もしくは花芽が咲くまで畑に残し続ける必要があるため、次の作物を作り始めるまでに時間もかかります。
また、連作障害を防ぐため畑を1クール(半年程度)は休息させ、自ら作った腐葉土等を利用して微生物の活性化を図り、畑の状態を戻す期間を設けています。
■ 混同しやすい『有機栽培』と『無農薬栽培』の違い
一般的に有機栽培とは、化学肥料や農薬、遺伝子組み換えに頼らず農作物を栽培する方法で「安全で健康によい」イメージがあると思います。
ちなみに有機栽培は英語で「organic(有機的)farming(農業)」と表現されます。なので「オーガニック」も、有機栽培と同じ意味だと捉えて問題ありません。
有機栽培とオーガニックの認定基準は、農林水産省が設定しており、基準に見合えば『有機農産物JAS規格』を満たした『有機農産物』として出荷・販売できます。しかし有機農産物JAS規格では天然物や、天然物由来の一部の農薬に限り、使用することが許されています。
翔栄ファームでは固定種(在来種)で、無農薬・無化学肥料栽培である自然農法を行なっています。そういった自然の中で育った作物が、人にとって最も美味しく安全だと思うからです。
化学肥料や農薬の影響を受けていない種から作物を作り、その作物からまた種を採る。そしてその種からまた作物を作る。
このサイクルを続けることで、自然の力が詰まった副作用などない “天然の万能薬”のような自然栽培作物が作られます。何年も自家採種を続けると、自然栽培環境で育った遺伝情報が引き継がれ、土地に合った自然栽培オリジナルの作物になります。
ここ龍ヶ崎圃場では自家採種を創業時より行なっており、個性的で魅力的な野菜が土地との相性の良さとが相まって、年々品質が良くなっています。
ここからは、私が龍ヶ崎で作っているおすすめの野菜をご紹介します。
■ おすすめ野菜①『四葉(スーヨー)キュウリ』
四葉キュウリは中国の華北系の品種で、昭和19年頃に韓国から導入されたと言われています。 名前は本葉が四枚付いた頃から実がなり始めることから付けられたそうです。
一般的なキュウリと比べ1.5倍ほどの大きさになりますが、25~30cm位で収穫した方が味が良いと言われています。
白イボ系キュウリで、表面にしわが寄り一見細いゴーヤーのようにも見えますが、触るととげのようにイボが出ています。しかしそのイボで傷が付きやすく、日もちも良くないため市場では見られなくなっています。
見た目と違って皮が柔らかくて歯切れが良く、他のキュウリよりも水分が少なく香りも味も濃厚で、青臭さがなくて甘みがあります。
個人的には、洗って切って塩麹や梅肉と絡めるだけの、簡単ですがご飯がすすむ食べ方が好きです。浅漬けにしても皮が薄い分漬かりがよく、心地の良い歯切れが活きて美味しいです。四葉系のキュウリだけを使うこだわりの漬物屋さんもあるほどです。
東京都の東中野にあるビセットプラザの店頭に毎年並ぶので、「ぬか漬けにはこのきゅうり!」と楽しみにしているお客様もいる大人気の野菜です。
四葉キュウリは、創業時から種取りを続けて代々育てており、年を追うごとに龍ヶ崎の土地に馴染み、サイズも大きくなり収穫量も増えました。
2023年の夏の主力野菜として3月頃に種を蒔き、芽が出て育っていくうちに、カビの発生やうどんこ病対策のため土付近の芽を剪定して雨が降った時の泥はねを防止して、7〜8月の収穫時期を待ちました。
7月になり早熟のものから収穫し始めましたが、今夏は日本や世界中に吹き荒れる異常気候の影響か、昨年と比べて雨量が半減していることや、連日の異常な猛暑によって成育不良となり壊滅状態となってしまったのです。
去年の同じ頃は毎週10キロは収穫できていました。去年とは明らかに違う酷暑が続いた結果、僅かに生き残った四葉キュウリは、来年用の種取り分にすることにしました。
毎年、珍しい品種の美味しい味を好む多くのお客様が買いに来てくださっていただけに、今年は用意することができずにとても残念です。
この異常気候が今年だけで終わるという保証は全くありません。来年は今年の体験を活かして日除けと湿度保全をしっかりとして、大豊作に向けた対策をしていこうと思います。
■ おすすめ野菜②『バターナッツ』
バターナッツは、北アメリカから南アメリカにかけての乾燥した砂漠周辺の荒野が原産地のカボチャです。
見た目はかわいいひょうたん型で、味は名前の由来となっているようにナッツのような風味があります。私はシンプルにスライスして軽く焼いて塩をふるだけの食べ方が好きで、甘みと深い味わいは何枚でも食べてしまいます。他にもポタージュスープやグラタン、煮物、炒め物、サラダ、プリンなど、どの調理方法にも対応してくれる素晴らしい食材です。
痩せた土地や水はけのいい砂質の畑でもよく育つ品種で、龍ヶ崎の土地に合っているのか、創業時から作り始めていますが毎年収穫量が増えています。今年の異常気候にも負けずにしっかりと育っています。
自然農法でも雑草対策さえしてしまえば、ほとんど手間がかからないので、家庭菜園でもおすすめです。
■ おすすめ野菜③『島オクラ』
『島オクラ』と呼ばれているオクラは沖縄で作られてきた在来種です。サヤに角がなく丸いことから『丸オクラ』とも呼ばれています。また、八丈島で作られている『八丈オクラ』という、同じく丸サヤタイプの物もありますが、外見や特徴もよく似ています。沖縄や八丈島辺りでは、現在主流となっている角のある五角オクラが入ってくる以前からこの丸オクラが作られていて、産地では「ネリ」と呼ばれていました。
島オクラは五角オクラよりも細く、15~16cmまで成長しても柔らかいのが特徴です。たまに20cmまで成長したのもありますが、大きすぎるものは筋が硬くなっていることがあるので避けた方が無難です。
私の好きな食べ方ですが、収穫したばかりの新鮮なものは生のままかじっても甘くて美味しいです。軽く茹でて酢醤油や塩で食べたり、スープや漬物やピクルスにするのも好きです。他にもサラダや炒め物や天ぷらなどにしても、とても美味しいです。
島オクラも4年ほど自家採種して育てていますが、沖縄のパワーが詰まっているのか暑さにはとても強く、今年の異常な酷暑でも元気に育っています。それどころか年々成長の度合いを増しています。
昨年は実験的に自家採種した種と、購入した種の成長度合いを比べたのですが、とんでもない結果が出ました。
購入した種の背丈は1.7mぐらいですが、自家採種した種は最高で2.3mほどにも成長したものもあります。
下の画像は、右側が購入した種、左側が自家採種した種です。
時期によっては1週間で背丈が50cmも伸びる自家採種の島オクラは、7月半ばから10月まで収穫できます。今年は背丈がまだまだ伸びていて、もしかしたら昨年よりも大きくなるかもしれません!こちらもぜひ一度味わってみてください。
翔栄ファームではこういった野菜や作物を『茨城県龍ヶ崎』と『群馬県前橋』の各圃場と、東京都の東中野にある『ビセットプラザ』で店頭販売を行っています。
また通販サイトの『しぜんとくらそ』では、各季節の旬な野菜を詰め合わせた”【定期宅配】季節の産直野菜いろどりセット”などもインターネットで販売しています。宅配にしか入らない野菜もありますので、定期宅配のご利用もお待ちしています。