翔栄ファームコラムは今号で第100話を迎えました。
これもひとえに翔栄ファームを応援してくださる
皆様のお陰であることは言うまでもありません。
改めて御礼申し上げます。
祈念すべき第100号ということもありますので、
2021年の終わりに改めて日本の食料安全保障について
現状把握をしておきたいと思います。
■ 各国の農業支援状況
鈴木宣弘氏の著書「農業消滅」によると、
日本の農業は全くといっていいほど
国の財政的支援を受けていないそうです。
一昔前はよく耳にした「日本の農業は過保護過ぎる」というのは
政府やメディアによるプロパガンダで全くの出鱈目だというのです。
一方、欧州は生産コストに対して
8割から9割が補助金で賄われています。
ご存じの方は多いと思いますが、
地続きの欧州では国境地帯の多くが農地です。
つまり農業は国防を担っているのです。
国、環境、命を守る大切な役割を果たしていることを
欧州の国々の人々はみんな知っています。
だから農業を税金で支援することに反対する人は皆無です。
■ 市場価格と生産価格
日本のコメの生産価格(所得も含む)は
1俵(60kg)約15,000円です。
文字通りコメを1俵生産するために
掛かる費用が15,000円ということです。
しかしこの国では不思議なことが起こります。
何と市場価格は約9,000円なのです。
お分かりですよね。6,000円の逆ザヤです。
お疑いだと思いますが事実です。
このままでは日本のコメ生産は消滅します。
因みにアメリカの大規模農業では
生産価格と市場価格の乖離及び農家の所得は
100%補助金で賄われます。
なぜ日本では自国の農業を
保護することができないのでしょうか?
■ 輸出補助金はご法度
グローバル社会においては
各国の様々な産業構造を維持するために
様々な分野における相互協力が不可欠です。
(当コラムは食料分野に限った話をしているので
恐らく大国が悪者のように感じられる可能性がありますが、
私たちのスタンスは常に現状をお伝えすることであり、
そこには偏重はありません)
つまり日本においては
自国の農業生産の低下(自給率の低下)と
自動車などの工業製品といった得意分野の
輸出拡大とのトレードオフによる
均衡が保たれているのかもしれません。
しかし、アメリカの穀物輸出状況を見てみると
そこには明らかに不公平が存在します。
WTO(世界貿易機関)では輸出補預金を原則禁止しています。
輸出補助金とは読んで字のごとく
「輸出を促進させるために輸出企業に与えられる補助金」のことです。
なぜ禁止するかというと、もし経済的に裕福な国が、
生産物を圧倒的な安さで大量に輸出した場合、
他国の参入の余地はなくなり国際的な競争力は失われます。
そして生産国の生産者には
生産価格と輸出価格の乖離分を補助金で埋め合わせします。
これは支配です。
しかし、アメリカでは大規模農家が
輸出用の他に国内用も生産しているという
屁理屈とも思える法解釈によって、
輸出農産物に対しても補助金を交付しているのです。
つまり輸出補助金ではないと言い張っているわけです。
■ 主要穀物の国産比率
さて、話を農作物に戻します。
コメ以外の主要穀物である小麦、大豆、
とうもろこしの国内生産比率をご存じでしょうか?
小麦は約15%、大豆は約5%、
エサ用のとうもろこしにいたっては0%です。
そしてこれらは全て日本が輸入を認める遺伝子組換え作物です。
つまり言い回しを変えると、
日本国内に流通する小麦の約85%は遺伝子組換え作物、
大豆は約95%、エサ用とうもろこしは全部、
という状況を看過しないでください。
私はパンも麺類も食べないし
豆腐や油揚げも嫌いだから大丈夫、
という方がいたらかなり脇が甘いと言わざるを得ません。
一番身近なものは油です。
日常生活でサラダ油を使っていませんか?
原料は大豆やとうもろこし、輸入菜種(遺伝子組換え)などです。
お昼ご飯などの外食で完全に油を使っていないものがありますか?
また何かしらの加工品を買ったりすることはありませんか?
また、肉を食べることはありませんか?
和牛を食べているから大丈夫だと思っていませんか?
家畜の餌はとうもろこしです。
エサ用とうもろこしは100%が輸入です。
(過去コラム:「遺伝子組換え作物はどのような食品に使われていますか?」)
■ なぜ日本政府はコメを守らないのか?
先述の鈴木氏の著作「農業消滅」には、
このままでは日本のコメまでもが
全て輸入物に取って代わられかねないと警鐘を鳴らしています。
日本のコメの生産量が年間約1億トンですので、
先ほどの市場価格と生産価格との差額である
6,000円を補助金で賄ったとすると6,000億円です。
日本人の主食であるコメと生産能力を守るため、
つまり食料安全保障に必要な経費と考えた場合、
この6,000億円/年は高いのでしょうか? 安いのでしょうか?
このような保護によってコメ以外の食料についても
国内自給率が上がっていくように波及していくのであれば、
多くの人々の見方も変わってくるというものです。
ではなぜ日本政府はコメ生産のシュリンクに対して
一切目を向けようとしないのでしょうか?
根本的にはグローバリズムの中での
力関係が全てだとは思っていますが、
少なくとも表面的には財務省の
緊縮財政(プライマリーバランスの黒字化)によって
“手の付けようのない”というのが実情のようです。
因みにこれは軍事の話ですが、
国防分野においてはF35戦闘機147機を
維持費含め約6.6兆円で購入したばかりです。
■ 安全安心な食はどこにある?
結論から申し上げると「探すのは困難」とういうことです。
現時点では辛うじて一部の豆腐や味噌には
「遺伝子組換えでない」の表示がありますが、
ここにはゲノム編集や農薬使用量に関する情報は一切ありません。
念のため申し上げると日本においては、
ゲノム編集の有無については全く謳う必要がないのです。
欧州ではもちろんあり得ない話ですし、
当然完全義務化されています。
そしてもっと大きな問題と考えているのは
「残留農薬・除草剤」です。
少なくとも国産大豆の農場で
ラウンドアップのような除草剤が使われているは思いませんが、
輸入大豆等から作られている食品
(その種類は想像以上に多い!)のほとんどから
除草剤の成分が検出されます。
翔栄ファームは農薬、化学肥料、
もちろん除草剤は一切使わずに
固定種・在来種のみの野菜を栽培しています。
しかし、私たちの食生活は
野菜だけを食べているわけではありません。
穀物、発酵食品、肉・魚、乳製品など
幅広い自然の恵みをいただきます。
これらの食材や食品が本当に安全安心かどうかは、
しっかりと探さない限り入手困難な時代になっているのが
実際のところなのです。
■ 遺伝子組み換え表示制度の変更
2023年4月1日より遺伝子組換えの
表示制度が変更となります。
現行制度では、
分別生産流通管理をして、意図せざる混入を5%以下に抑えている大豆及びとうもろこし並びにそれらを原材料とする加工食品
が“遺伝子組換え食品ではない”との表示をしていますが
(過去コラム:「食品表示にも落とし穴が存在するのです」)、
新制度では上記の同管理状況において、一例ですが
原材料に使用しているトウモロコシは、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています
のような表記に変更となります。
つまり「5%以下まで遺伝子組換え原材料は入っています」
という宣言をすることになります。
もちろん完全にNon GMOであれば
“遺伝子組換えでない”と表記することは可能です。
しかしここに落とし穴があります。
「農業消滅」の著者である鈴木氏によると、
そもそも大豆流通業者が95%の輸入GMO大豆と国産品とを、一切の混流なしに分別管理することは先ず不可能に近いため、大豆食品メーカーが“遺伝子組換えでない”と言いきることは、大手になればなるほど現実的ではない、なぜならばほんの僅かでもGMO大豆が検出されたら摘発されるからだ
というのです。
となれば完全なNon GMO食品を探すことは、
今以上に難しくなることは間違いないでしょう。
■ ゲノム編集食品の加速的増加
先述の通り欧州と違い、
日本にはゲノム編集の有無に関する表示義務はありません。
背景には日本と関係性の深い大国の
影響が大きいからだとする向きがあります。
だからこそ余計に見えづらくなっているわけですが、
今ゲノム編集の領域は大変動きが活発で、
日本においてゲノム編集による新品種開発には
補助金が出されています。
ご存じの通り改正種苗法では
新品種の権利(特許権のようなもの)が守られており、
新品種登録する組織はそのほとんどが
アメリカ系資本の企業に行きつきます。
(過去コラム:「地球環境破壊下における世界的農業の現状」)
(過去コラム:「改正種苗法と翔栄ファーム」)
■ ゲノム編集トマト
あるバイオテクノロジー企業が開発した
ゲノム編集トマトがあります。
このトマトが家庭菜園向けに
4,000株無料配布されたそうです。
更に障害児施設にもゲノム編集苗を無償で配布しました。
配布内容を無視すれば
これらは社会貢献と呼ばれるべき話だと思います。
しかし、ゲノム編集作物の安全性が
証明されていない現状においては、
何か裏や思惑があるのではないかと、
ついつい勘繰ってしまいたくなります。
しかも2023年にはこのゲノム編集トマト苗を
日本の小学校に提供し“皆で育てて食べましょうね”
と展開するそうです。
この主体者が日本の企業なのか
アメリカの企業なのかどうかは分かりませんが、
日本の食糧事情を構造的に見る限りにおいては、
少なくとも主従関係は明確であり
コントロールの方向性もはっきりしているように思います。
■ 安全安心な食品をどのように調達したらいいのか?
日本には安全安心な食品が想像以上に少なく、
リスクに満ち溢れているという現状が
ある程度お分かりいただけたと思います。
ではこれらの危険から身を守るために
私たちはどうしたらいいのでしょうか?
一番の理想は自給自足をすることですが、
これはほとんどの人にとって不可能です。
であれば一生懸命に安全安心な食品を探す。
もちろんそうするべきです。
しかし、こちらも表示が乏しいため困難を極め、
恐らく結果的に長続きしないでしょう。
このような状況下で出来ることがあるとすれば、
新たな流通ルートを確保する、いや作ることです。
当コラムでは食品の健康被害に留まらず、
気候変動、その他環境破壊、飢饉の原因は、
現在の世界的食料システムそのものにある
ということを指摘し続けてきました。
世界ではすでにこの問題に対する
多くの取り組みが行われています。
例えばアメリカ。
食品ラベル表示から安全性を読み取ることができない、
そんな現状に対して恐怖を抱く多くの消費者や、
現在の食料生産システムに疑問を感じる流通従事者、
メーカー、そして生産者達が協力して、
安全安心な食品を垂直統合で流通させるシステムを構築しました。
初めは小規模なものでしたが、
同調者が増えるにつれ、
とうとう大型小売流通や食品メーカーも
このシステムに参加しだしたのです。
ウォルマートやスターバックス、ダノンなどが代表的です。
そしてこの動きは食品分野に留まらず、
パタゴニアなどの他業界にも飛び火しているのはご存じの通りです。
(過去コラム:「環境再生農業って何ですか?」)
■ 日本で安全安心な食品流通システムが作れるか?
規模の議論は抜きにして、
作れるか作れないかでいえばもちろん作ることはできます。
近江商人の「三方よし」に照らし合わせてみれば、
売り手 = 安全安心な食品の生産者・流通・小売り
買い手 = 安全安心な食品を求める消費者
社会貢献 = 健康被害・環境破壊の減少
という具合に“三方すべてよし”となります。
私たち翔栄ファームはもちろんですが、
日本全国の自然に根差した生産者、
つまり無農薬・無化学肥料・化学品無添加
・Non GMO・Nonゲノム編集により
一次産品を生産している方々、
またこれらの一次産品を使って
食品を生産するメーカーや加工業、
加えて安全安心な食品のみを取り扱う小売流通、
そして何よりもこのような食品を求めている消費者が協力すれば、
一定レベルでの独自の食料システムの構築は可能です。
恐らく皆様もお感じのこととは思いますが、
日本においても機は熟しているのではないでしょうか。
翔栄ファームコラムは今号で第100話を迎えました。これもひとえに翔栄ファームを応援してくださる皆様のお陰であることは言うまでもありません。改めて御礼申し上げます。祈念すべき第100号ということもありますので、2021年の終わりに改めて日本の食料安全保障について現状把握をしておきたいと思います。
■ 各国の農業支援状況
鈴木宣弘氏の著書「農業消滅」によると、日本の農業は全くといっていいほど国の財政的支援を受けていないそうです。一昔前はよく耳にした「日本の農業は過保護過ぎる」というのは政府やメディアによるプロパガンダで全くの出鱈目だというのです。
一方、欧州は生産コストに対して8割から9割が補助金で賄われています。ご存じの方は多いと思いますが、地続きの欧州では国境地帯の多くが農地です。つまり農業は国防を担っているのです。国、環境、命を守る大切な役割を果たしていることを欧州の国々の人々はみんな知っています。だから農業を税金で支援することに反対する人は皆無です。
■ 市場価格と生産価格
日本のコメの生産価格(所得も含む)は1俵(60kg)約15,000円です。文字通りコメを1俵生産するために掛かる費用が15,000円ということです。
しかしこの国では不思議なことが起こります。何と市場価格は約9,000円なのです。お分かりですよね。6,000円の逆ザヤです。お疑いだと思いますが事実です。このままでは日本のコメ生産は消滅します。
因みにアメリカの大規模農業では生産価格と市場価格の乖離及び農家の所得は100%補助金で賄われます。なぜ日本では自国の農業を保護することができないのでしょうか?
■ 輸出補助金はご法度
グローバル社会においては各国の様々な産業構造を維持するために様々な分野における相互協力が不可欠です(当コラムは食料分野に限った話をしているので恐らく大国が悪者のように感じられる可能性がありますが、私たちのスタンスは常に現状をお伝えすることであり、そこには偏重はありません)。
つまり日本においては自国の農業生産の低下(自給率の低下)と自動車などの工業製品といった得意分野の輸出拡大とのトレードオフによる均衡が保たれているのかもしれません。
しかし、アメリカの穀物輸出状況を見てみるとそこには明らかに不公平が存在します。WTO(世界貿易機関)では輸出補預金を原則禁止しています。輸出補助金とは読んで字のごとく「輸出を促進させるために輸出企業に与えられる補助金」のことです。なぜ禁止するかというと、もし経済的に裕福な国が、生産物を圧倒的な安さで大量に輸出した場合、他国の参入の余地はなくなり国際的な競争力は失われます。そして生産国の生産者には生産価格と輸出価格の乖離分を補助金で埋め合わせします。これは支配です。
しかし、アメリカでは大規模農家が輸出用の他に国内用も生産しているという屁理屈とも思える法解釈によって、輸出農産物に対しても補助金を交付しているのです。つまり輸出補助金ではないと言い張っているわけです。
■ 主要穀物の国産比率
さて、話を農作物に戻します。コメ以外の主要穀物である小麦、大豆、とうもろこしの国内生産比率をご存じでしょうか?
小麦は約15%、大豆は約5%、エサ用のとうもろこしにいたっては0%です。
そしてこれらは全て日本が輸入を認める遺伝子組換え作物です。
つまり言い回しを変えると、日本国内に流通する小麦の約85%は遺伝子組換え作物、大豆は約95%、エサ用とうもろこしは全部、という状況を看過しないでください。私はパンも麺類も食べないし豆腐や油揚げも嫌いだから大丈夫、という方がいたらかなり脇が甘いと言わざるを得ません。
一番身近なものは油です。日常生活でサラダ油を使っていませんか? 原料は大豆やとうもろこし、輸入菜種(遺伝子組換え)などです。
お昼ご飯などの外食で完全に油を使っていないものがありますか?
また何かしらの加工品を買ったりすることはありませんか?
また、肉を食べることはありませんか?
和牛を食べているから大丈夫だと思っていませんか? 家畜の餌はとうもろこしです。エサ用とうもろこしは100%が輸入です。(過去コラム:「遺伝子組換え作物はどのような食品に使われていますか?」)
■ なぜ日本政府はコメを守らないのか?
先述の鈴木氏の著作「農業消滅」には、このままでは日本のコメまでもが全て輸入物に取って代わられかねないと警鐘を鳴らしています。日本のコメの生産量が年間約1億トンですので、先ほどの市場価格と生産価格との差額である6,000円を補助金で賄ったとすると6,000億円です。日本人の主食であるコメと生産能力を守るため、つまり食料安全保障に必要な経費と考えた場合、この6,000億円/年は高いのでしょうか? 安いのでしょうか?
このような保護によってコメ以外の食料についても国内自給率が上がっていくように波及していくのであれば、多くの人々の見方も変わってくるというものです。
ではなぜ日本政府はコメ生産のシュリンクに対して一切目を向けようとしないのでしょうか?根本的にはグローバリズムの中での力関係が全てだとは思っていますが、少なくとも表面的には財務省の緊縮財政(プライマリーバランスの黒字化)によって“手の付けようのない”というのが実情のようです。因みにこれは軍事の話ですが、国防分野においてはF35戦闘機147機を維持費含め約6.6兆円で購入したばかりです。
■ 安全安心な食はどこにある?
結論から申し上げると「探すのは困難」とういうことです。現時点では辛うじて一部の豆腐や味噌には「遺伝子組換えでない」の表示がありますが、ここにはゲノム編集や農薬使用量に関する情報は一切ありません。
念のため申し上げると日本においては、ゲノム編集の有無については全く謳う必要がないのです。欧州ではもちろんあり得ない話ですし、当然完全義務化されています。
そしてもっと大きな問題と考えているのは「残留農薬・除草剤」です。少なくとも国産大豆の農場でラウンドアップのような除草剤が使われているは思いませんが、輸入大豆等から作られている食品(その種類は想像以上に多い!)のほとんどから除草剤の成分が検出されます。
翔栄ファームは農薬、化学肥料、もちろん除草剤は一切使わずに固定種・在来種のみの野菜を栽培しています。しかし、私たちの食生活は野菜だけを食べているわけではありません。穀物、発酵食品、肉・魚、乳製品など幅広い自然の恵みをいただきます。これらの食材や食品が本当に安全安心かどうかは、しっかりと探さない限り入手困難な時代になっているのが実際のところなのです。
■ 遺伝子組み換え表示制度の変更
2023年4月1日より遺伝子組換えの表示制度が変更となります。現行制度では、
分別生産流通管理をして、意図せざる混入を5%以下に抑えている大豆及びとうもろこし並びにそれらを原材料とする加工食品
が“遺伝子組換え食品ではない”との表示をしていますが(過去コラム:「食品表示にも落とし穴が存在するのです」)、新制度では上記の同管理状況において、一例ですが
原材料に使用しているトウモロコシは、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています
のような表記に変更となります。つまり「5%以下まで遺伝子組換え原材料は入っています」という宣言をすることになります。もちろん完全にNon GMOであれば“遺伝子組換えでない”と表記することは可能です。
しかしここに落とし穴があります。「農業消滅」の著者である鈴木氏によると、
そもそも大豆流通業者が95%の輸入GMO大豆と国産品とを、一切の混流なしに分別管理することは先ず不可能に近いため、大豆食品メーカーが“遺伝子組換えでない”と言いきることは、大手になればなるほど現実的ではない、なぜならばほんの僅かでもGMO大豆が検出されたら摘発されるからだ
というのです。となれば完全なNon GMO食品を探すことは、今以上に難しくなることは間違いないでしょう。
■ ゲノム編集食品の加速的増加
先述の通り欧州と違い、日本にはゲノム編集の有無に関する表示義務はありません。背景には日本と関係性の深い大国の影響が大きいからだとする向きがあります。だからこそ余計に見えづらくなっているわけですが、今ゲノム編集の領域は大変動きが活発で、日本においてゲノム編集による新品種開発には補助金が出されています。
ご存じの通り改正種苗法では新品種の権利(特許権のようなもの)が守られており、新品種登録する組織はそのほとんどがアメリカ系資本の企業に行きつきます。(過去コラム:「地球環境破壊下における世界的農業の現状」)(過去コラム:「改正種苗法と翔栄ファーム」)
■ ゲノム編集トマト
あるバイオテクノロジー企業が開発したゲノム編集トマトがあります。このトマトが家庭菜園向けに4,000株無料配布されたそうです。更に障害児施設にもゲノム編集苗を無償で配布しました。配布内容を無視すればこれらは社会貢献と呼ばれるべき話だと思います。
しかし、ゲノム編集作物の安全性が証明されていない現状においては、何か裏や思惑があるのではないかと、ついつい勘繰ってしまいたくなります。
しかも2023年にはこのゲノム編集トマト苗を日本の小学校に提供し“皆で育てて食べましょうね”と展開するそうです。
この主体者が日本の企業なのかアメリカの企業なのかどうかは分かりませんが、日本の食糧事情を構造的に見る限りにおいては、少なくとも主従関係は明確でありコントロールの方向性もはっきりしているように思います。
■ 安全安心な食品をどのように調達したらいいのか?
日本には安全安心な食品が想像以上に少なく、リスクに満ち溢れているという現状がある程度お分かりいただけたと思います。ではこれらの危険から身を守るために私たちはどうしたらいいのでしょうか?
一番の理想は自給自足をすることですが、これはほとんどの人にとって不可能です。であれば一生懸命に安全安心な食品を探す。もちろんそうするべきです。しかし、こちらも表示が乏しいため困難を極め、恐らく結果的に長続きしないでしょう。
このような状況下で出来ることがあるとすれば、新たな流通ルートを確保する、いや作ることです。当コラムでは食品の健康被害に留まらず、気候変動、その他環境破壊、飢饉の原因は、現在の世界的食料システムそのものにあるということを指摘し続けてきました。世界ではすでにこの問題に対する多くの取り組みが行われています。
例えばアメリカ。食品ラベル表示から安全性を読み取ることができない、そんな現状に対して恐怖を抱く多くの消費者や、現在の食料生産システムに疑問を感じる流通従事者、メーカー、そして生産者達が協力して、安全安心な食品を垂直統合で流通させるシステムを構築しました。
初めは小規模なものでしたが、同調者が増えるにつれ、とうとう大型小売流通や食品メーカーもこのシステムに参加しだしたのです。ウォルマートやスターバックス、ダノンなどが代表的です。そしてこの動きは食品分野に留まらず、パタゴニアなどの他業界にも飛び火しているのはご存じの通りです。(過去コラム:「環境再生農業って何ですか?」)
■ 日本で安全安心な食品流通システムが作れるか?
規模の議論は抜きにして、作れるか作れないかでいえばもちろん作ることはできます。近江商人の「三方よし」に照らし合わせてみれば、
売り手 = 安全安心な食品の生産者・流通・小売り
買い手 = 安全安心な食品を求める消費者
社会貢献 = 健康被害・環境破壊の減少
という具合に“三方すべてよし”となります。私たち翔栄ファームはもちろんですが、日本全国の自然に根差した生産者、つまり無農薬・無化学肥料・化学品無添加・Non GMO・Nonゲノム編集により一次産品を生産している方々、またこれらの一次産品を使って食品を生産するメーカーや加工業、加えて安全安心な食品のみを取り扱う小売流通、そして何よりもこのような食品を求めている消費者が協力すれば、一定レベルでの独自の食料システムの構築は可能です。恐らく皆様もお感じのこととは思いますが、日本においても機は熟しているのではないでしょうか。
参考:
鈴木宣弘 著「農業消滅」(平凡新書)
[三橋TV第471回]遺伝子組み換え・ゲノム編集という脅威から「我々の食」を護るために