・品種改良
・遺伝子組み換え
・ゲノム編集
似たジャンルだけど違う、
しかしどこがどう違うのと聞かれると
「ん?」ってなる言葉、結構ありますよね。
たとえば音楽のジャンル分けとか。
聞けば分かると思うのですが、
そりゃ確かにそうですけど知らない人には
説明しづらい感じってありますよね。
というわけで改めて用語について
整理してみるというのが今回の趣旨です。
ベーシックな話なので
既知の方も多いと思いますが、
そういう方は今回はサーっと
読み飛ばしていただいて、
次回にご期待いただければと思います。
言葉の内容を再確認です
今回確認するのはこちらです。
「品種改良」・「遺伝子組換え」・「ゲノム編集」
……ん?
ちょっと分け方が良くないかもしれません。
これらは並列する概念ではないですね。
そもそも品種改良というのは
この項全体の説明になっているので、
本来はここに他の2ワードが含まれます。
だから並列できない。
しかし全体解説を含めて
時系列で説明するのも悪くはない気がするので、
今回はこの順番で進めます。
「品種改良」
「品種改良」とは文字通りなのですが、
品種を人に有利になるよう改変することです。
「人」というのは生産者と消費者です。
この二者の利益になるのが一番の目的ですね。
現在の視点では環境への配慮なんかも必要ですが、
ここは昔の人はたいして気にしてなかったでしょう。
ということで人類のためになること、
つまり主に生産効率および品質の向上を
目指して太古より行われてきました。
農業での基本的な方法は、
よい個体を選別して残し、
かけ合わせてさらに選抜していくやり方。
収穫量が多かったり、
病気になりにくかったり、
もちろん味や見た目が良かったり、
という美点を持っているものを
取り置いておいくわけです。
実際にかけ合わせることは、
「交配育種」といいます。
さらにここでは自然に起こる
突然変異も利用されてきました。
ですが、たとえば数だけをみても
「収穫量が多いもの=生き残りやすいもの」
とも言えますから、放っておいてもそうした品種が
増える可能性は高いですよね。
味がよくなるのも本来は
植物がその種を増やすためでしょう。
そこをあえて人が選ぶことで早めていく、
人為的な選択がずっと行われてきたわけです。
このクラシックなやり方は、
手間と時間に頼る方法といえます。
もちろん自然だけに任せるよりは、
はるかに早いのですけどね。
古から続く、人類の努力ポイントです。
「遺伝子組換え」
遺伝子組み換え技術とは、
生物固有の遺伝子を別の生物に導入して、
新しい品種を作り出す技術のことです。
近年の科学の進歩により出現した
遺伝子工学に基づく品種改良の新型スタイルです。
栽培コストと生育の待ち期間が減り、
手間と時間に頼るという部分が削減できます。
具体的には、細胞の中にあるDNAの一部を、
他の生物の細胞に導入します。
そうすることで、新しく入れた生物の特徴が
入れられたほうの生物に出てくるのです。
イメージとしては、部品を追加する
というような感じですかね。
交配が難しいもの同士でも、比較的容易に
行えるところも利点とされています。
初期は耐病害特性付与など
効率重視の生産者よりのものが多かったですが、
近年は栄養要素増強などの
消費者よりの特徴を持ったものも
開発されるようになってきました。
「ゲノム編集」
ゲノム編集。
これも遺伝子工学によるものですが、
遺伝子組み換えとは少し違います。
ゲノムというのは、遺伝情報の総体のこと。
上で言っている遺伝子というのは
パーツの設計図みたいなもので、
たとえば花の形とかが書いてあります。
他にも葉っぱの色とか
実の大きさとかを決めている
設計図もあるわけです。
それらを集めてようやく、
ひとつの植物なりなんなりが
どういうものか決まってくるのです。
それを生物ごとに特定してセットにしたものが
ここで言っている「ゲノム」です。
やや強引に簡単にすれば設計図を全部まとめた
バインダー、みたいな感じでしょうか。
扱う範囲としてはスケールが大きくなりました。
上で挙げた遺伝子組み換えは、
実はそこまで万能ではありません。
そこでもっとアクティブなやり方が考えられました。
ゲノムの中で特徴がわかっている部分を切って、
それを変化させるのです。
これは生物の機能により修復されるのですが、
そのときに新しい特性を得られることがあるので
それを利用する、という方法になります。
狙ったものが得られるまでは
繰り返し実施する必要がありますが、
切ること自体の手間は比較的少ないので
再試行がしやすくなっています。
遺伝子組み換えのところでは
「部品を追加する」と言いましたが、
こちらは削ってからその部分を再生させる、
というイメージでしょうか。
より生物の力に頼った技術、
ということもできそうです。
従来の品種改良に比べてはもちろん、
遺伝子組み換えと比べても
かかる時間とコストが下がりました。
他の生物の遺伝子を入れるわけではないので、
原理的には自然の突然変異と同じです。
そのためできあがったもの自体を、
クラシックな方法でつくられたものと
後から区別するのは難しいのです。
進歩と規制と安全性
以上、簡単ですが進歩の順にみてきました。
基本的には時代の新技術を乗せていく発展で、
順当な変化ともいえます。
それまでの品種改良の下地があったからこそ、
組み換え技術なども出てきたということです。
もちろん遺伝子工学そのものは
発展途上の技術でもあるので、
これではできないことも多いようです。
たとえば「おいしさ」といった数値化しづらく、
多くの遺伝情報に関連すると思われる改良などは、
従来通りの交配育種に分があるかも知れませんね。
また発展途上の技術であるが故に
安全性が担保されていない
という見方もできるでしょう。
時間経過による信頼感というものは、
やっぱり大きいですからね。
実際、日本を含む多くの国では、
遺伝子工学による作物の
表示に関する規定があります。
このこと自体が、そのような意見が多くあることや
規制の必要性の裏付けになっているのだと思います。
消費者としては様々な方法をよく見比べて、
能動的な選択がしていけるのが理想です。
そのためにはやはり知識が必要なのは
言うまでもありません。
・品種改良
・遺伝子組み換え
・ゲノム編集
似たジャンルだけど違う、しかしどこがどう違うのと聞かれると「ん?」ってなる言葉、結構ありますよね。たとえば音楽のジャンル分けとか。聞けば分かると思うのですが、そりゃ確かにそうですけど知らない人には説明しづらい感じってありますよね。
というわけで改めて用語について整理してみるというのが今回の趣旨です。
ベーシックな話なので既知の方も多いと思いますが、そういう方は今回はサーっと読み飛ばしていただいて、次回にご期待いただければと思います。
言葉の内容を再確認です
今回確認するのはこちらです。「品種改良」・「遺伝子組換え」・「ゲノム編集」。
……ん?
ちょっと分け方が良くないかもしれません。これらは並列する概念ではないですね。そもそも品種改良というのはこの項全体の説明になっているので、本来はここに他の2ワードが含まれます。だから並列できない。
しかし全体解説を含めて時系列で説明するのも悪くはない気がするので、今回はこの順番で進めます。
「品種改良」
「品種改良」とは文字通りなのですが、品種を人に有利になるよう改変することです。「人」というのは生産者と消費者です。この二者の利益になるのが一番の目的ですね。
現在の視点では環境への配慮なんかも必要ですが、ここは昔の人はたいして気にしてなかったでしょう。
ということで人類のためになること、つまり主に生産効率および品質の向上を目指して太古より行われてきました。農業での基本的な方法は、よい個体を選別して残し、かけ合わせてさらに選抜していくやり方。
収穫量が多かったり、病気になりにくかったり、もちろん味や見た目が良かったり、という美点を持っているものを取り置いておいくわけです。実際にかけ合わせることは、「交配育種」といいます。
さらにここでは自然に起こる突然変異も利用されてきました。ですが、たとえば数だけをみても「収穫量が多いもの=生き残りやすいもの」とも言えますから、放っておいてもそうした品種が増える可能性は高いですよね。
味がよくなるのも本来は植物がその種を増やすためでしょう。そこをあえて人が選ぶことで早めていく、人為的な選択がずっと行われてきたわけです。
このクラシックなやり方は、手間と時間に頼る方法といえます。もちろん自然だけに任せるよりは、はるかに早いのですけどね。古から続く、人類の努力ポイントです。
「遺伝子組換え」
遺伝子組み換え技術とは、生物固有の遺伝子を別の生物に導入して、新しい品種を作り出す技術のことです。近年の科学の進歩により出現した遺伝子工学に基づく品種改良の新型スタイルです。栽培コストと生育の待ち期間が減り、手間と時間に頼るという部分が削減できます。
具体的には、細胞の中にあるDNAの一部を、他の生物の細胞に導入します。そうすることで、新しく入れた生物の特徴が入れられたほうの生物に出てくるのです。イメージとしては、部品を追加するというような感じですかね。交配が難しいもの同士でも、比較的容易に行えるところも利点とされています。
初期は耐病害特性付与など効率重視の生産者よりのものが多かったですが、近年は栄養要素増強などの消費者よりの特徴を持ったものも開発されるようになってきました。
「ゲノム編集」
ゲノム編集。これも遺伝子工学によるものですが、遺伝子組み換えとは少し違います。
ゲノムというのは、遺伝情報の総体のこと。上で言っている遺伝子というのはパーツの設計図みたいなもので、たとえば花の形とかが書いてあります。他にも葉っぱの色とか実の大きさとかを決めている設計図もあるわけです。それらを集めてようやく、ひとつの植物なりなんなりがどういうものか決まってくるのです。
それを生物ごとに特定してセットにしたものがここで言っている「ゲノム」です。やや強引に簡単にすれば設計図を全部まとめたバインダー、みたいな感じでしょうか。扱う範囲としてはスケールが大きくなりました。
上で挙げた遺伝子組み換えは、実はそこまで万能ではありません。そこでもっとアクティブなやり方が考えられました。ゲノムの中で特徴がわかっている部分を切って、それを変化させるのです。これは生物の機能により修復されるのですが、そのときに新しい特性を得られることがあるのでそれを利用する、という方法になります。
狙ったものが得られるまでは繰り返し実施する必要がありますが、切ること自体の手間は比較的少ないので再試行がしやすくなっています。遺伝子組み換えのところでは「部品を追加する」と言いましたが、こちらは削ってからその部分を再生させる、というイメージでしょうか。より生物の力に頼った技術、ということもできそうです。
従来の品種改良に比べてはもちろん、遺伝子組み換えと比べてもかかる時間とコストが下がりました。他の生物の遺伝子を入れるわけではないので、原理的には自然の突然変異と同じです。そのためできあがったもの自体を、クラシックな方法でつくられたものと後から区別するのは難しいのです。
進歩と規制と安全性
以上、簡単ですが進歩の順にみてきました。基本的には時代の新技術を乗せていく発展で、順当な変化ともいえます。それまでの品種改良の下地があったからこそ、組み換え技術なども出てきたということです。
もちろん遺伝子工学そのものは発展途上の技術でもあるので、これではできないことも多いようです。
たとえば「おいしさ」といった数値化しづらく、多くの遺伝情報に関連すると思われる改良などは、従来通りの交配育種に分があるかも知れませんね。
また発展途上の技術であるが故に安全性が担保されていないという見方もできるでしょう。時間経過による信頼感というものは、やっぱり大きいですからね。実際、日本を含む多くの国では、遺伝子工学による作物の表示に関する規定があります。このこと自体が、そのような意見が多くあることや規制の必要性の裏付けになっているのだと思います。
消費者としては様々な方法をよく見比べて、能動的な選択がしていけるのが理想です。そのためにはやはり知識が必要なのは言うまでもありません。