前回の翔栄ファームコラムでは、
肥育ホルモン剤の使用状況について、
輸入牛肉を中心とした現状をお伝えしました。
※過去コラム『輸入牛肉と肥育ホルモン剤について考えてみる』
その中で国産牛肉は本当に安全なのか?
という疑問をお持の方もいらっしゃるであろう
という推測の下、今回は国産牛について
生育状況等のお話してみようと思います。
■ 飼育における肥育ホルモン剤は禁止
農林水産省のwebサイトにある
「肥育ホルモンについて」には、
肥育ホルモンとは、牛や豚などの肥育促進を目的に使用される動物用医薬品等です。日本国内では、農林水産大臣による動物用医薬品としての承認はなく、また飼料添加物としても指定されていないため、使用されていません
ということが明記されています。
したがって国産牛肉ではこの心配は不要です。
しかし、これだけで安心安全について
確証を得ることは当然不可能です。
チェックするべき要素は他にもいくつかありますが、
今回は代表的なものとして「抗生物質」と
「遺伝子組換え飼料」を見てみようと思います。
■ 抗生物質の使用は認められています
抗生物質と聞くと真っ先に思い浮かぶものは
疾病時の処方薬ではないでしょうか。
つまり何かの菌やウイルスを消滅させる
作用を持つ薬といった感じだと思います。
実際も大体イメージ通りです。
つまり抗生物質とは、細菌などの
微生物の成長を阻止する物質のことで、
肺炎や化膿したときなどの細菌感染症に
効果があると言われています。
そして人類史上初の抗生物質が
ペニシリンであることは有名で、
その作用は感染症の原因となる
ブドウ球菌などの発育を抑えることです。
そもそも「抗生」とは、
生命に拮抗するという意味で、
病原体の生命(細胞)と拮抗して
病原体を殺すということです。
そして人体の細胞に毒でないものは
治療薬として使われているのです。
これは動植物にも同様で、
細菌やウイルスに侵された牛にも
定められた抗生物資の使用は制限されません。
因みに「抗生剤不使用 国産牛肉」
といったキーワードでWEB検索をすると、
それを謳い文句にした食肉センターなどが
ズラーっと並びますが、よくよく見ると、
「解体時に一切不使用」という表現が目立ちます。
つまり飼育時段階まで言及されていない場合が多く、
その点は念頭に置く必要があります。
では、もし抗生物質不使用の牛肉を探そうとした場合、
何を頼りにしたらいいのでしょうか?
一番簡単な方法はその精肉が「JAS認定農場」から
仕入れられているかどうかということです。
これは、有機JAS認定農場が
一切抗生剤を使用しないというわけではありません。
病気の家畜に対しては必要な治療は施されます。
しかしJAS規格を満たす牧場では、
繁殖、肥育、出生から出荷までの全期間にわたり、
その生産履歴が管理されています。
もちろん飼料に関しても、その内容が明示され、
安心安全品質の証となり得るものです。
■ 遺伝子組み換え飼料かどうかの判別
飼料についても「JAS認定農場」のものであれば
問題はありませんが、そもそも日本では
ヨーロッパのBIOのような
オーガニック食品が少ないのが現状です。
※過去コラム『日本人の「食の安心安全」への関心度』
したがってJASマーク以外の方法で
Non GMO(※1)を見極める必要があります。
その意味において、間違いないのは
グラスフェッドの家畜となります。
念のためグラスフェッドを簡単に説明すると、
放牧により野山に自生している草だけを
食べている家畜、ということです。
(その他の飼料を与えていないことが前提ですが)
これが一番価値の高い家畜である
とされていることは言うまでもありません。
理由は「自然」であるからです。
ただ、グラスフェッドの家畜は数が少なく、
一般的な市場に出回ることはまずありません。
そのため別の目線も持つ必要があります。
それはすばり「食品表示」です。
スーパーや精肉店で飼料に関する情報は
まず見ることが出来ないでしょう。
どうしてでしょうか?
それはNon GMOの飼料ではないから、書かないのです。
もしNon GMOの飼料を与えて飼育しているのであれば、
それは最高のキャッチフレーズになります。
鶏卵を例に取ると、先ず目に付くのは、
「餌の種類」と「飼育環境(ex.平飼い)」です。
つまり他製品との差別化のキャッチコピーです。
しかし、多くの方がここで満足してしまい、
Non GMO飼料かどうかまでは気にしていません。
そして実際にはNon GMOの鶏卵は
恐ろしく少ないことも事実です。
話を元に戻しますが、国産牛の場合であっても
Non GMOの表記を探すことが大切です。
■ 牛肉のトレーサビリティー
日本では、BSEのまん延防止措置において
その的確な実施を図ることを目的とし、
牛を個体識別番号により一元管理しています。
また、生産から流通・消費の各段階において
個体識別番号を正確に伝達することにより、
消費者に対して個体識別情報の提供を促進しています。
そしてこの個体識別情報を我々一般消費者が
簡単に確認できる方法があることをご存知でしょうか。
スーパーで購入する国産牛のパックの
食品表示ラベルをよく見てください。
そこには個体識別番号の表記と共に
実際の番号が記載されています。
その番号を、独立行政法人家畜改良センターの
「牛の個体識別情報検索サービス」に入力すると、
性別、種類(黒毛、褐毛等)、出生、屠畜、
消費までの全ての履歴を確認することが可能です。
残念ながら飼料の質までの確認はできませんが
飼育場所については判明するため、
問い合わせはできるようになります。
手間はかかりますが、本気になれば
それなりの調べられる環境が整っていることは
覚えておかれるといいと思います。
■ 結局、国産牛の購入に必要なことは?
今まで国産和牛を取り巻く現状について
お伝えしてきましたが、面倒くさい
というのが正直なところだと思います。
こんな手間が掛かるなら輸入牛肉でいいや、
と思うのも無理はないでしょう。
しかし何を食べるべきか、という点については
明確な答えを示す必要があると思いますので、
結論のみをお伝えします。
それは、
「自然に近い環境で育てられていること」。
これにつきます。
人間に置き換えれば分かりやすいと思います。
つまり、
・家畜全体が健康であるかどうか?(病気がない、正しい食事)
・適度な運動をしているか?(ストレス、筋肉と脂肪の割合)
このような環境で育った国産牛に
出会える人は大変幸福だと思います。
※1 遺伝子組み換えでない
前回の翔栄ファームコラムでは、肥育ホルモン剤の使用状況について、輸入牛肉を中心とした現状をお伝えしました。
※過去コラム『輸入牛肉と肥育ホルモン剤について考えてみる』https://syouei-farm.net/anzen/201110/
その中で国産牛肉は本当に安全なのか? という疑問をお持の方もいらっしゃるであろうという推測の下、今回は国産牛について生育状況等のお話してみようと思います。
■ 飼育における肥育ホルモン剤は禁止
農林水産省のwebサイトにある「肥育ホルモンについて」には、
肥育ホルモンとは、牛や豚などの肥育促進を目的に使用される動物用医薬品等です。日本国内では、農林水産大臣による動物用医薬品としての承認はなく、また飼料添加物としても指定されていないため、使用されていません
ということが明記されています。したがって国産牛肉ではこの心配は不要です。
しかし、これだけで安心安全について確証を得ることは当然不可能です。チェックするべき要素は他にもいくつかありますが、今回は代表的なものとして「抗生物質」と「遺伝子組換え飼料」を見てみようと思います。
■ 抗生物質の使用は認められています
抗生物質と聞くと真っ先に思い浮かぶものは疾病時の処方薬ではないでしょうか。つまり何かの菌やウイルスを消滅させる作用を持つ薬といった感じだと思います。実際も大体イメージ通りです。
つまり抗生物質とは、細菌などの微生物の成長を阻止する物質のことで、肺炎や化膿したときなどの細菌感染症に効果があると言われています。そして人類史上初の抗生物質がペニシリンであることは有名で、その作用は感染症の原因となるブドウ球菌などの発育を抑えることです。
そもそも「抗生」とは、生命に拮抗(きっこう)するという意味で、病原体の生命(細胞)と拮抗して病原体を殺すということです。そして人体の細胞に毒でないものは治療薬として使われているのです。これは動植物にも同様で、細菌やウイルスに侵された牛にも定められた抗生物資の使用は制限されません。
因みに「抗生剤不使用 国産牛肉」といったキーワードでWEB検索をすると、それを謳い文句にした食肉センターなどがズラーっと並びますが、よくよく見ると、「解体時に一切不使用」という表現が目立ちます。つまり飼育時段階まで言及されていない場合が多く、その点は念頭に置く必要があります。
では、もし抗生物質不使用の牛肉を探そうとした場合、何を頼りにしたらいいのでしょうか?
一番簡単な方法はその精肉が「JAS認定農場」から仕入れられているかどうかということです。
これは、有機JAS認定農場が一切抗生剤を使用しないというわけではありません。病気の家畜に対しては必要な治療は施されます。しかしJAS規格を満たす牧場では、繁殖、肥育、出生から出荷までの全期間にわたり、その生産履歴が管理されています。もちろん飼料に関しても、その内容が明示され、安心安全品質の証となり得るものです。
■ 遺伝子組み換え飼料かどうかの判別
飼料についても「JAS認定農場」のものであれば問題はありませんが、そもそも日本ではヨーロッパのBIOのようなオーガニック食品が少ないのが現状です。
※過去コラム『日本人の「食の安心安全」への関心度』https://syouei-farm.net/anzen/201103/
したがってJASマーク以外の方法で「Non GMO(※1)」を見極める必要があります。
その意味において、間違いないのはグラスフェッドの家畜となります。念のためグラスフェッドを簡単に説明すると、放牧により野山に自生している草だけを食べている家畜、ということです。(その他の飼料を与えていないことが前提ですが)これが一番価値の高い家畜であるとされていることは言うまでもありません。理由は「自然」であるからです。
ただ、グラスフェッドの家畜は数が少なく、一般的な市場に出回ることはまずありません。そのため別の目線も持つ必要があります。
それはすばり「食品表示」です。スーパーや精肉店で飼料に関する情報はまず見ることが出来ないでしょう。どうしてでしょうか?
それはNon GMOの飼料ではないから、書かないのです。もしNon GMOの飼料を与えて飼育しているのであれば、それは最高のキャッチフレーズになります。
鶏卵を例に取ると、先ず目に付くのは、「餌の種類」と「飼育環境(ex.平飼い)」です。つまり他製品との差別化のキャッチコピーです。しかし、多くの方がここで満足してしまい、Non GMO飼料かどうかまでは気にしていません。そして実際にはNon GMOの鶏卵は恐ろしく少ないことも事実です。
話を元に戻しますが、国産牛の場合であってもNon GMOの表記を探すことが大切です。
■ 牛肉のトレーサビリティー
日本では、BSEのまん延防止措置においてその的確な実施を図ることを目的とし、牛を個体識別番号により一元管理しています。また、生産から流通・消費の各段階において個体識別番号を正確に伝達することにより、消費者に対して個体識別情報の提供を促進しています。そしてこの個体識別情報を我々一般消費者が簡単に確認できる方法があることをご存知でしょうか。
スーパーで購入する国産牛のパックの食品表示ラベルをよく見てください。そこには個体識別番号の表記と共に実際の番号が記載されています。その番号を、独立行政法人家畜改良センターの「牛の個体識別情報検索サービス」に入力すると、性別、種類(黒毛、褐毛等)、出生、屠畜、消費までの全ての履歴を確認することが可能です。
残念ながら飼料の質までの確認はできませんが飼育場所については判明するため、問い合わせはできるようになります。手間はかかりますが、本気になればそれなりの調べられる環境が整っていることは覚えておかれるといいと思います。
■ 結局、国産牛の購入に必要なことは?
今まで国産和牛を取り巻く現状についてお伝えしてきましたが、面倒くさいというのが正直なところだと思います。こんな手間が掛かるなら輸入牛肉でいいや、と思うのも無理はないでしょう。しかし何を食べるべきか、という点については明確な答えを示す必要があると思いますので、結論のみをお伝えします。
それは「自然に近い環境で育てられていること」。
これにつきます。
人間に置き換えれば分かりやすいと思います。つまり、
・家畜全体が健康であるかどうか?(病気がない、正しい食事)
・適度な運動をしているか?(ストレス、筋肉と脂肪の割合)
このような環境で育った国産牛に出会える人は大変幸福だと思います。
※1 遺伝子組み換えでない