一般的に世界中で大不作が起きない限り
日本では食料危機は生じない
と言われています。
なぜでしょうか。
一定の所得水準にある国にとっては
価格が高騰してもさほど影響がないためです。
先進国の中でこの20年間所得が
ほとんど増えていないのは日本だけですが、
それでも世界全体から見れば日本は所得の
高い国であることは間違いありません。
とはいえ、仮に穀物価格が
2~3倍になったとしたらどうでしょうか。
実は2008年に世界的な穀物価格高騰が起こりました。
もちろん影響がないわけではありませんでしたが、
その度合いは食料品の消費者物価指数が
2.6%上昇した程度で済んでいます。
その理由は、日本の飲食料の最終消費額のうち
約85%が加工、流通、外食が占めるためです。
つまり、輸入農水産物の一部である
穀物の価格が上がっても、
最終消費には大きな影響を与えない
ということです。
このような消費パターンは先進国に共通しています。
我々は農産物ではなく、加工、流通、外食に
お金を払っているということです。
しかし発展途上国においてはそうはいきません。
潜在的に抱える食糧問題解決への糸口は?
さて視点を変えます。
日本の受給率の低さは
すべての日本人が知るところです。
2018年の日本のカロリーベース自給率
(一般的に自給率は生産額ベースではなく
カロリーベースを使います)は約37%であり、
特に畜産に仕向けられる
飼料の自給率は25%にとどまっています。
海外先進国の自給率は米国130%、
フランス127%、ドイツ95%、
英国65%ですから、日本の食料自給率が
いかに低いかが分かると思います。
米、野菜、海藻類以外は
大きく海外からの輸入に
頼っているのが実情です。
昔話ではありますが、戦前の日本では、
米や野菜を中心にした食事でした。
しかし、欧米化が進み、
輸入だよりの小麦粉を使ったパンや
輸入飼料を使った畜産物や油脂類を
多く使用した食事に変化してきた事が
現状を生み出す大きな原因と言われています。
これらの現況を踏まえた上で、
日本が潜在的に抱える食料問題を
どのように解決の方向に
シフトさせることが可能でしょうか。
キャノングローバル戦略研究所の
研究主幹である山下一仁氏による執筆記事
「新型コロナウイルスで食料危機が起きるのか?
https://www.canon-igs.org/column/macroeconomics/20200416_6362.html」
に非常に示唆に富んだ
明確な切り口が示されているので
一部分を抜粋要約してみたいと思います。
(※ただし「米の減反政策廃止」の件は除く。
減反政策は2018年に既に廃止されているため)
食料輸入国家である日本において
最悪の状況であるシーレーンが
破壊された状況を想定した場合、
具体的な食料安全保障対策の基本政策は、
短期的には食料備蓄での対応、
中長期的には食料増産ということに他なりません。
つまり食料生産拡大のため、
農地などの農業資源の維持を
平時からしておくことはいうまでもなく、
米の生産量を増強して、
敢えて米価を下げた上で、
米を大量に輸出することを
検討する必要があるのです。
平時には、小麦や牛肉を海外から輸入し、
日本からは米を輸出します。
海外との物流が途絶え、
輸入が困難となったときは、
輸出していた米を消費するのです。
平時の際の米の輸出は、
お金のかからない食料備蓄の役割を果たすのです。
また、輸出できるほど米の生産を行うことは、
水田という農地資源の維持にもつながります。
もちろんこれは「量」の問題に対する
一つの解決策であって、決して
「質」の担保に言及するものではありません。
穀物輸入に関する具体的な一例として、
鶏卵の国内生産を見てみると、
国内外の生産比率は国内96%となりますが、
飼料の輸入を考慮すると
自給率は12%に一気に降下します。
理由は、鶏卵を生産するために、
牧草や麦わらなどの粗飼料の27%、
穀物やエコフィード(パンくずや豆腐粕)
といったような濃厚飼料の86%を
海外からの輸入に頼っているためです。
もしこれらが遺伝子組換え作物だったとすると
私たち日本人が食べる鶏卵のほぼすべてが
遺伝子組み換え飼料により育った
鶏が生んだものというわけです。
これらの飼料を国内で非遺伝子組換え、
農薬・化学肥料不使用により
生産することができたらいかがでしょうか。
世界的に産業構造が
変わりつつあるこのタイミングで、
日本における第一次産業の
役割の重要さを再確認する必要が
あるのではないかと思うのです。
一般的に世界中で大不作が起きない限り日本では食料危機は生じないと言われています。
なぜでしょうか。
一定の所得水準にある国にとっては価格が高騰してもさほど影響がないためです。先進国の中でこの20年間所得がほとんど増えていないのは日本だけですが、それでも世界全体から見れば日本は所得の高い国であることは間違いありません。
とはいえ、仮に穀物価格が2~3倍になったとしたらどうでしょうか。実は2008年に世界的な穀物価格高騰が起こりました。もちろん影響がないわけではありませんでしたが、その度合いは食料品の消費者物価指数が2.6%上昇した程度で済んでいます。その理由は、日本の飲食料の最終消費額のうち約85%が加工、流通、外食が占めるためです。
つまり、輸入農水産物の一部である穀物の価格が上がっても、最終消費には大きな影響を与えないということです。このような消費パターンは先進国に共通しています。我々は農産物ではなく、加工、流通、外食にお金を払っているということです。
しかし発展途上国においてはそうはいきません。
潜在的に抱える食糧問題解決への糸口は?
さて視点を変えます。
日本の受給率の低さはすべての日本人が知るところです。2018年の日本のカロリーベース自給率(一般的に自給率は生産額ベースではなくカロリーベースを使います)は約37%であり、特に畜産に仕向けられる飼料の自給率は25%にとどまっています。
海外先進国の自給率は米国130%、フランス127%、ドイツ95%、英国65%ですから、日本の食料自給率がいかに低いかが分かると思います。米、野菜、海藻類以外は大きく海外からの輸入に頼っているのが実情です。
昔話ではありますが、戦前の日本では、米や野菜を中心にした食事でした。しかし、欧米化が進み、輸入だよりの小麦粉を使ったパンや輸入飼料を使った畜産物や油脂類を多く使用した食事に変化してきた事が現状を生み出す大きな原因と言われています。
これらの現況を踏まえた上で、日本が潜在的に抱える食料問題をどのように解決の方向にシフトさせることが可能でしょうか。
キャノングローバル戦略研究所の研究主幹である山下一仁氏による執筆記事「新型コロナウイルスで食料危機が起きるのか?(https://www.canon-igs.org/column/macroeconomics/20200416_6362.html)」に非常に示唆に富んだ明確な切り口が示されているので一部分を抜粋要約してみたいと思います。
(※ただし「米の減反政策廃止」の件は除く。減反政策は2018年に既に廃止されているため)
食料輸入国家である日本において最悪の状況であるシーレーンが破壊された状況を想定した場合、具体的な食料安全保障対策の基本政策は、短期的には食料備蓄での対応、中長期的には食料増産ということに他なりません。
つまり食料生産拡大のため、農地などの農業資源の維持を平時からしておくことはいうまでもなく、米の生産量を増強して、敢えて米価を下げた上で、米を大量に輸出することを検討する必要があるのです。
平時には、小麦や牛肉を海外から輸入し、日本からは米を輸出します。海外との物流が途絶え、輸入が困難となったときは、輸出していた米を消費するのです。平時の際の米の輸出は、お金のかからない食料備蓄の役割を果たすのです。また、輸出できるほど米の生産を行うことは、水田という農地資源の維持にもつながります。
もちろんこれは「量」の問題に対する一つの解決策であって、決して「質」の担保に言及するものではありません。
穀物輸入に関する具体的な一例として、鶏卵の国内生産を見てみると、国内外の生産比率は国内96%となりますが、飼料の輸入を考慮すると自給率は12%に一気に降下します。理由は、鶏卵を生産するために、牧草や麦わらなどの粗飼料の27%、穀物やエコフィード(パンくずや豆腐粕)といったような濃厚飼料の86%を海外からの輸入に頼っているためです。
もしこれらが遺伝子組換え作物だったとすると私たち日本人が食べる鶏卵のほぼすべてが遺伝子組み換え飼料により育った鶏が生んだものというわけです。これらの飼料を国内で非遺伝子組換え、農薬・化学肥料不使用により生産することができたらいかがでしょうか。
世界的に産業構造が変わりつつあるこのタイミングで、日本における第一次産業の役割の重要さを再確認する必要があるのではないかと思うのです。