固定種で自然栽培の野菜作りをしてみて4年が経ちました。
まだまだわからないことだらけですが、これまでに感じたことを書いてみようと思います。
■ 野菜本来とは?
固定種や自然栽培ですることの良さとして、野菜本来の味わいや風味が楽しめると良く言いますよね。
それはその通りで一般的な野菜と比べると、やっぱり味が濃いし、えぐみも少ないと感じます。「でもそれってなんでなの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。
そもそも本来とは?自分の中では昔そのまま自然に自生していた時の野菜の味であったり、形のことを指すのかなと思っています。
そして理由の1つとして種が昔ながらの種であること。
今のお野菜の9割以上はF1種なので、なんらかの人為的な手が加えられ、味を薄くしていたり、柔らかくなるようにしていたり、その時代のニーズとともに種類が増えていきました。これはこれで画期的だなと個人的には思います。
しかしその反面、野菜本来の風味が感じられなくなってしまったのです。
種採りのできる固定種で自家採種をすることはさらに、その地域に根付いた野菜となっていき、種のもつ本来の風味にその地域のオリジナリティのある変化が加わっていきます。
そして、種の持つ情報はどんどんDNAに刻み込まれ、種の持つ力が増していくと私は考えています。
霜にあたりながらも横に広がり陽ざしの当たる部分を自力で増やそうとするケール
■ 完成した草木灰
そして、2つ目に自然栽培であること。自然栽培って色々な考え方があり、人によって全然違う栽培をしています。定義がないのです。
それはそれで生産者・消費者にしかり、色々な価値観・需要供給があるので、選択肢が増えていいと感じます。
翔栄ファームにおける自然栽培は、「種・土において余計なものを使用しない・加えない」がスタイルです。なので、今現在は基本的に無肥料の栽培です。現在使用している肥料は自家製の腐葉土や草木灰のみになります。
主に苗を育てる種まきの際に使用し、畑に播ける量はごくごく少量に限られます。そうすると、畑は自然の循環だけで形成されます。
そのような環境で野菜はどうでしょうか?決して肥力は高くなく、野菜にとって楽な環境ではないでしょう。
しかし、人と同じで過酷な環境でこそ野菜の真価が発揮されるのです。少しでも栄養を吸収しようと根は深く・広く張ります。冬になると太陽の光を少しでも浴びて成長しようと、葉っぱの一枚一枚が横に広がっていきます。
それでも決して成長は早くなく、体感は一般的な栽培の1.5倍の生育期間がかかります。もちろんその分、お野菜も硬くなりがちです。
ケール同様に横に広がるほうれん草
代表的な例がほうれん草です。ほうれん草の根は太く、そして深く張るので引っこ抜くのは本当に大変です。そして葉っぱは満遍なく広き、葉は肉厚になります。野菜の努力の結晶です。
今季の冬は野菜本来の形であり、その努力の結晶を形に残すべく、葉っぱを広げた状態で梱包して出荷をしています。味も寒さにあたって少しかわいそうですが、フルーツと遜色ないぐらいに甘いです。その驚愕的な甘さも自然栽培でしか出せない本来の甘さなのかなと感じます。野菜の持つ力、その種の持つ力に気づいた時の感動は忘れられません。
このように固定種・自然栽培のお野菜は大量の安定供給はできません。しかしその安全性と味にはそれだけの価値があると信じています。本当に甘い本来のほうれん草をそのまま生で全国の人に食べてもらいたい。笑
叶わない夢ですが、少しでも多くの方にこういった野菜もあるよ!というのを知っていただき、食卓に取り入れていただけたら嬉しいなと思う日々です。
開墾地の竹を使い、草木灰の手作り風景