農薬を一切使用しない農業において
害虫駆除は農家にとっての
生死を掛けた宿命ともいえる
壮大な取組であることはご存じの通りです。
今回は3大ウイルス媒介害虫の筆頭格、
「アブラムシ」について、
自然栽培の先生からお聞きした概要を
皆様にシェアさせていただこうと思います。
■凄まじい繁殖力
先生は開口一番、
「アブラムシはエイリアンのようなものです!」
と仰いました。
前提として手強く怖いのは当然として、
エイリアンと言わしめる最大の特徴は
繁殖の仕方にあります。
一匹が生まれた時点でその個体の体内には、
すでに2~3匹の子供がクローンのように
潜んでいるというのです。
生まれてくる個体はほとんどがメスで、
交尾なしに子供を作り出すことができます。
しかもその繁殖力は凄まじく、成虫までに約10日、
その間に数回の脱皮を繰り返し、
あっという間に増殖してしまいます。
その子供を生み続けるスピードは10分に1匹。
寿命は30日~40日程度ですが、
その生存期間中に1匹のアブラムシは
1万匹程度になるといわれています。
というわけでアブラムシはエイリアンのようなものだ、
との先生のイメージ的表現はかなり的確であるように感じます。
■アリとの共生関係?
「アブラムシがいるところ必ずアリの姿あり!」
とはよく耳にする話ではないでしょうか?
もちろんアリはどこにでもいます。
しかし両者には蜜月関係ともいえるような
特別な共生関係があるのです。
アブラムシは植物の体液(=導管液)を吸って生きています。
そして消化しきれない甘露と呼ばれる液体を排出します。
アリはこの甘露を貴重な糖分として摂取しているのです。
アリにとってアブラムシはなくてはならない
食料安全保障上の重要なパートナーというわけです。
一方アブラムシにとってもアリは重要なパートナーです。
というのはアブラムシの天敵である
「てんとう虫」を追い払ってくれたり、
場合によっては集団で食べてしまうことがあるからです。
こちらは軍事的な安全保障上の役務を担っているわけです。
もちろんてんとう虫がアリを食べてしまうこともあります。
しかしアブラムシから見れば、
体を張ってボディーガードをしてくれる
頼れる仲間であることに相違ありません。
まさに共生関係が成り立っているのです。
■アリを退治したらどうなるか?
すでにお分かりのことと思います。
そうです。アブラムシの数は減ります。
しかし害虫駆除という目的においてはあまり意味を成しません。
アブラムシの威力はそんな生易しいものではないからです。
よって両者の共生関係を活用したアブラムシ退治に
一定の効果をもたらすためには、アブラムシの駆除をしつつ
アリの数も減らしていくことが重要であるということです。
■アブラムシはウィルスを媒介する
ところで作物の3大被害といえば
「ウイルス、細菌、カビ」です。
アブラムシは特にウイルスを媒介するといわれています。
中でもモザイク病という伝染病は深刻で、
このウイルスは植物の成長をストップさせてしまいます。
そしてウイルスに罹患した株を取り除かなければ、
辺り一帯の全滅に繋がりかねません。
このような最悪の状態に陥らないために、
もし作物にアブラムシが付いてしまったら、
それらを全て駆除しなければならないのです。
とはいえ、いたるところに棲息するアブラムシ。
これらの被害に遭わないためにはどうすればいいのでしょうか?
■自然栽培とは、圃場の観察に尽きる
「自然栽培の営農に必要な13のポイント(後編)」
の中でもピックアップされていますが、答えは「観察」です。
ただし参照記事では分かりやすく、
敢えて13ポイントの中の1つとして
クローズアップされていますが、
実は観察は全てのポイントのベースになるものであり、
誤解を恐れずにいえば、「自然栽培とは圃場の観察に尽きる」
といっても過言ではないのです。
つまり日々の営農活動の中でいかに観察力を養うかが
自然栽培を継続していく上での最重要事項であり、
アブラムシ対策の唯一のソリューションなのです。
つまり取って付けたような場当たり的な手段は、
自然栽培の世界には存在しないということが
先生の強調点であったように思います。
■アブラムシは変幻自在
蛇足ですが、アブラムシは大半がメスであり
生まれた時点でその体内には数匹の個体が存在する
ということは前半でお話した通りです。
しかし作物の数が激減する晩秋になると
少し様相が変わってきます。
なんと羽が生えた個体が現れるというのです。
そしてオスの数が増えてきます。
そして交尾が行われ繁殖しますが、
どうやらこの時期特有の現象のようです。
羽が生える理由については、
あくまでも自然栽培の先生の仮説
という前提で申し上げると、
晩秋から冬にかけては既述の通り作物が激減します。
そもそも慣行農法は12月でほぼ圃場を更地にしてしまうため、
ターゲットになるのは自然栽培や自然農法の
数少ない作物となります。
しかしこれらも近隣に豊富に存在するわけではないため、
作物の体液(=導管液)を吸い尽くしたら
集団で移動しなくてはなりません。
だからこの時期のアブラムシには
羽が生えるのではないかという推測です。
これが本当だとするとこの自然界は
何と緻密で完璧なのだろうと思います。
因みにアブラムシの大好物はソラマメです。
そして3大ウイルス媒介害虫は
「アブラムシ、スリップス(アザミウマ)、カメムシ」です。
しかし相手が誰であろうと、
害虫から作物を守るためには「初動が大切!」
そして食い止める努力を決して怠らない強い気持ちが
何よりも重要であるということを
先生は力説なさっておりました。
農薬を一切使用しない農業において、害虫駆除は農家にとっての生死を掛けた宿命ともいえる壮大な取組であることはご存じの通りです。
今回は3大ウイルス媒介害虫の筆頭格、「アブラムシ」について、自然栽培の先生からお聞きした概要を皆様にシェアさせていただこうと思います。
■凄まじい繁殖力
先生は開口一番、「アブラムシはエイリアンのようなものです!」と仰いました。
前提として手強く怖いのは当然として、エイリアンと言わしめる最大の特徴は繁殖の仕方にあります。
一匹が生まれた時点でその個体の体内には、すでに2~3匹の子供がクローンのように潜んでいるというのです。生まれてくる個体はほとんどがメスで、交尾なしに子供を作り出すことができます。しかもその繁殖力は凄まじく、成虫までに約10日、その間に数回の脱皮を繰り返し、あっという間に増殖してしまいます。その子供を生み続けるスピードは10分に1匹。寿命は30日~40日程度ですが、その生存期間中に1匹のアブラムシは1万匹程度になるといわれています。
というわけでアブラムシはエイリアンのようなものだ、との先生のイメージ的表現はかなり的確であるように感じます。
■アリとの共生関係?
「アブラムシがいるところ必ずアリの姿あり!」とはよく耳にする話ではないでしょうか?
もちろんアリはどこにでもいます。しかし両者には蜜月関係ともいえるような特別な共生関係があるのです。
アブラムシは植物の体液(=導管液)を吸って生きています。そして消化しきれない甘露と呼ばれる液体を排出します。アリはこの甘露を貴重な糖分として摂取しているのです。アリにとってアブラムシはなくてはならない食料安全保障上の重要なパートナーというわけです。
一方アブラムシにとってもアリは重要なパートナーです。というのはアブラムシの天敵である「てんとう虫」を追い払ってくれたり、場合によっては集団で食べてしまうことがあるからです。こちらは軍事的な安全保障上の役務を担っているわけです。もちろんてんとう虫がアリを食べてしまうこともあります。しかしアブラムシから見れば、体を張ってボディーガードをしてくれる頼れる仲間であることに相違ありません。まさに共生関係が成り立っているのです。
■アリを退治したらどうなるか?
すでにお分かりのことと思います。そうです。アブラムシの数は減ります。しかし害虫駆除という目的においてはあまり意味を成しません。アブラムシの威力はそんな生易しいものではないからです。よって両者の共生関係を活用したアブラムシ退治に一定の効果をもたらすためには、アブラムシの駆除をしつつアリの数も減らしていくことが重要であるということです。
■アブラムシはウィルスを媒介する
ところで作物の3大被害といえば「ウイルス、細菌、カビ」です。
アブラムシは特にウイルスを媒介するといわれています。中でもモザイク病という伝染病は深刻で、このウイルスは植物の成長をストップさせてしまいます。そしてウイルスに罹患した株を取り除かなければ、辺り一帯の全滅に繋がりかねません。このような最悪の状態に陥らないために、もし作物にアブラムシが付いてしまったら、それらを全て駆除しなければならないのです。
とはいえ、いたるところに棲息するアブラムシ。これらの被害に遭わないためにはどうすればいいのでしょうか?
■自然栽培とは、圃場の観察に尽きる
「自然栽培の営農に必要な13のポイント(後編)」の中でもピックアップされていますが、答えは「観察」です。
ただし参照記事では分かりやすく、敢えて13ポイントの中の1つとしてクローズアップされていますが、実は観察は全てのポイントのベースになるものであり、誤解を恐れずにいえば、「自然栽培とは圃場の観察に尽きる」といっても過言ではないのです。
つまり日々の営農活動の中でいかに観察力を養うかが自然栽培を継続していく上での最重要事項であり、アブラムシ対策の唯一のソリューションなのです。
つまり取って付けたような場当たり的な手段は、自然栽培の世界には存在しないということが先生の強調点であったように思います。
■アブラムシは変幻自在
蛇足ですが、アブラムシは大半がメスであり、生まれた時点でその体内には数匹の個体が存在するということは前半でお話した通りです。
しかし作物の数が激減する晩秋になると少し様相が変わってきます。なんと羽が生えた個体が現れるというのです。そしてオスの数が増えてきます。そして交尾が行われ繁殖しますが、どうやらこの時期特有の現象のようです。
羽が生える理由については、あくまでも自然栽培の先生の仮説という前提で申し上げると、晩秋から冬にかけては既述の通り作物が激減します。そもそも慣行農法は12月でほぼ圃場を更地にしてしまうため、ターゲットになるのは自然栽培や自然農法の数少ない作物となります。
しかしこれらも近隣に豊富に存在するわけではないため、作物の体液(=導管液)を吸い尽くしたら集団で移動しなくてはなりません。だからこの時期のアブラムシには羽が生えるのではないかという推測です。これが本当だとするとこの自然界は何と緻密で完璧なのだろうと思います。
因みにアブラムシの大好物はソラマメです。そして3大ウイルス媒介害虫は「アブラムシ、スリップス(アザミウマ)、カメムシ」です。
しかし相手が誰であろうと、害虫から作物を守るためには「初動が大切!」そして食い止める努力を決して怠らない強い気持ちが何よりも重要であるということを先生は力説なさっておりました。
参考:
プレジデント社刊「WIRED VOL.40(マイクロオーガニズム共生基礎ガイド2021)」