こんにちは!翔栄ファーム龍ヶ崎圃場(ほじょう)のKとMです。
翔栄ファームでは、自社農園で無農薬・無化学肥料栽培にて色々な作物を作っています。野菜以外にも、お米、大豆、麦などの穀類も栽培しています。
それは、食卓に並ぶ全てを”安心・安全な翔栄ファーム印の食べ物”で提供したい!という目的からです。
前回は、『翔栄ファームのお米作り2023年』が始まり、泥が入り込んだ水路をなんとか掘り返して始まった田植えですが、自動で4本の苗を同時に植え付けられるはずの田植え機は1本が壊れてしまったため、手植えで植え切ったのでした。そして害虫から稲を守るための激烈な猛暑の中での数回にわたる除草作業など、汗と涙を吹き出しながら米作りの工程は折り返しました。
【農場便り】安心で安全な自然栽培で美味しいお米を作りたい!2023年翔栄ファームの米作りは汗と涙が噴き出すような苦労の連続②
今回は、汗と涙が搾り取られた”収穫”についてお話しいたします。
■ 伸び伸び育った稲穂、さあ収穫だ!
翔栄ファームの物作りは農薬も化学肥料も除草剤も使いません。それを聞いた農家さんのほとんどはとても驚き、呆れた顔で「わざわざなんでそんな苦労する農業をするの?」とおっしゃいます。
初夏に行った手植えの腰痛や、激烈猛暑の中で除草作業で滴り落ちる汗を思い出しながら、今の目の前で風にそよぐ青々とした稲穂の姿を見て万感の思いが込み上げました。
米作りにおいて立ちはだかる難関の一つに”病気”があります。代表的な病気は『いもち病』です。
いもち病菌が稲に付着して、そこに水滴があると必ず発芽します。 菌糸が毒素を出しながら、稲の表皮細胞を破って侵入し葉や穂を枯らします。 ひどい場合は、稲が萎縮して枯死(こし)することもあります。
田んぼを一通り巡回したところ、そういった兆候は見られませんでした。病気にかからず育ってくれた稲にも感謝を覚えました。そしてこのまま無事に育ってくれることを祈りました。
稲は日々元気に成長して稲穂に色がつき始め、次の工程が迫ってきました。収穫・乾燥です。
この工程は2023年の米作りで最後の、そして最大の難関でした。
■ 現代の慣行農法とは違う翔栄ファームの収穫・乾燥は80年前の方法!?
昔の収穫では稲刈りをしてから天日で乾燥させ、その後で脱穀を行っていましたが、現代の慣行農法ではコンバインで稲刈りと脱穀を同時に行います。
現代の慣行農法の収穫作業を具体的な工程に分けるとこのようになります。
1.コンバインを使い稲刈りと脱穀を同時に行う
2.乾燥機で約12時間ほど乾燥させ、水分量を減らす
3.精米機を使で籾(もみ)を籾殻と玄米に分ける
翔栄ファームの田んぼの規模から考えれば、慣行農法で1日半もあれば終わる作業ですが、機械設備や諸事情によりこのような収穫作業でした。
1.バインダーで稲を刈り取り、稲架台(はさだい)に掛けるために、稲を束にして紐で結んでくれる稲束の結束まで行う
2.稲束を干すために、田んぼに稲架台と呼ばれる干し台を設置して、バインダーで束にした稲束を掛けて乾燥させ、観察しながら水分量を減らす
3.ハーベスターで脱穀
4.精米機を使って籾殻と玄米に分ける
翔栄ファームの工程は、昭和30年代くらいにやっていた工程で、米作り全体を通すと今では農業体験ぐらいでしかやらない米作りの方法なのです。手間と時間は現代の慣行農法より3倍以上はかかりました。
私は以前コンバインでの収穫を経験していたので、稲束を拾い集めて稲架台にかけるまでの作業は5倍くらいの時間と労力に感じました。
乾燥の工程は数日かかり、天気予報と空模様を睨みながら「雨よ降らないでくれ!」とハラハラしながらなんとか乾燥を作業を終えることができました。
私たちは米作り最後の工程である、精米機を使って籾殻と玄米に分ける工程を迎えましたが、この工程こそが最大の難関だったのです。
■ やってきました最後の難関『精米』!やっぱり簡単にはいかない・・・
最後の難関は『精米機探し』でした。
現代の慣行農法ではJAなどのライスセンターで、巨大な精米機を使うことによって一気に精米できますが、翔栄ファームで作ったお米は使うことができませんでした。その理由は、最低でも3〜4トンくらいの量が必要であり、基準にあった農薬を使っているかどうか?という2点を、翔栄ファームの田んぼはまだまだ小さく収穫量が至らず、無農薬にこだわっているため、クリアできないためでした。
昨年は個人で精米機を持っている方を探しまくった結果「今回だけ」ということで精米機をお借りすることができたのです。精米器はそう簡単に使わせてくれるものではありません。
米の品質を保つことは細心の注意で行っています。
例えばブランドとして1級品である魚沼産のコシヒカリを精米するときに、ほんの少しでも別の種類のお米が混じってしまうと等級が下がってしまう可能性があるのです。なので精米器は決めた品種のものだけでした使いたくないのは当然です。
精米器を自分で持っている人は農家の1割ほどというごくわずかです。持っている方を探すだけでも大変ですが、さらに貸していただける方となると・・・
方々探し回った結果、近所の方に頼み込んでなんとか「今回だけは」ということで精米機を貸してもらえることができました。
そこに至るまでは、本当に奇跡としか言いようがないほど、いろんな方々のお力とご縁によってたどり着いたのです。
天日干ししたお米を乾燥機にもかけずに精米機にかけるのは初めてのことだったり、万が一壊れたらどう責任を取るのか?という懸念もあったのですが、説得とご好意によって遂に精米することができました。
精米の結果、収穫量は昨年の250キロから倍増以上の、700キロもあげることができました!
これは、田んぼの面積が増えたことと、昨年の経験や日々のお世話が収量を増やせた要因になりました。
とれたての秋田小町を炊いた玄米ご飯はとても甘かく、昔ながらの米作りの数々の工程や、四季折々の田んぼの風景など、これまでの1年間が頭を駆け巡ったことも一緒に噛み締めて、とても美味しくいただきました。
■ 2023年のお米作りを振り返って
ノウハウや経験値もないところから始めるた米作りですが、2回目でたくさんの経験を積むことができました。
次回に向けての反省点や改善点はたくさんあります。
・田んぼの面積に対して2種類の米作りは手狭だったことと、燃料費の高騰や人件費でまだまだ大赤字なので、採算を合わせるためには田んぼを今の10倍に広げる必要があること。
・自前の乾燥機や精米機を用意する必要があること。
・決まったメンバーが専属で田んぼに集中するため、他の畑仕事を他のメンバーで担うのは大変だったので、種まき・収穫の時期を逃しそうになることがしばしばあったため、細い役割分担ともっと人手が必要であること。
その他にも問題点や考えることは山ほどあります。
2023年の米作りを改めて思い出して「2024年にまたあれをやるのか・・・」と視線が落ちる気分になりますが、全ては『安心・安全な食のために、食卓に乗る全てを翔栄ファーム印のものを提供したい』という思いが私の視線を持ち上げてくれます。
”お米は毎日食べるものだから、玄米は酵素玄米にして食べやすくすると、とても体に良い”ということは、私自身が毎日酵素玄米を食べて元気に農作業をやれていることで実証済みです。
皆様にもぜひ、自然の力がたっぷり詰まった翔栄ファームの新米を味わっていただきたいです!
茨城県の龍ヶ崎は寒くなってきましたが、湿田を冬の間に乾燥させないと、機械が埋まるため春先の耕運ができません。2024年の米作りはもう始まっています。