こんにちは。 翔栄ファーム前橋農場(群馬県)のM.Yです。
翔栄ファームでは安心・安全な食をみなさまにご提供できるよう、自社農園で除草剤を使わず、無農薬・無化学肥料の自然栽培で作物を作っています。
季節ごとのいろいろな野菜の他に、お米・大豆・麦などの穀類も栽培しています。
私は2022年2月から翔栄ファームで働き始めました。それは『人と環境にやさしく地球を汚さない、健康に良い自然を活かした野菜作りを学び、農業で地域に貢献したい』と思ったからです。
前回は、ハワイで自然栽培のコーヒーを作るべく独立起業して、初めて手摘みで収穫できたが、想定外のコロナと、さび病というハワイがこれまで経験したことのないコーヒー栽培で最悪の病気の蔓延により、コーヒー作りを断念したところまでお話しいたしました。
今回は、日本に帰国して翔栄ファームに入社して、コーヒー以外の作物で取り組んだ自然栽培についてお話しさせていただきます。
■ ハワイでのコーヒー作りは断念したが、自然栽培への情熱は消えず
ハワイでのコーヒーの自然栽培は断念することにはなりましたが、自然栽培の作物は絶対人に必要なものであるという思いには変わりはありません。
ハワイの温暖な自然環境はコーヒー作りに適していますが、私が求める自然栽培では難しく、かといって日本で最も温暖な沖縄でも台風が多く、冬の寒さはコーヒーにストレスがかかるため、日本でのコーヒー栽培は考えていませんでした。
しかし、自然栽培のことをもっともっと勉強して、たとえ他の作物でも自然栽培に関わっていけたらと模索したところ、翔栄ファームに出会ったのです。
自然栽培の発祥は日本であり、生活必需品である野菜や穀類を自然栽培で作りたい、大地にあって大地の栄養で育った特産品の作物を作りたいと思うようになった矢先の出会いでした。
コーヒー農園の買い手が見つかったことも幸いして、2022年2月に帰国してすぐに翔栄ファームへ入社することを決意したのです。
2022年2月から翔栄ファームで働き始めました。
私が配属された前橋農場(群馬県)では2019年から完全無農薬・無化学肥料で、レタスやそら豆、ジャガイモ、玉ねぎなど、その他にもたくさんの野菜を自然栽培で作っています。
自然栽培を表す画像として、下の1枚をご覧になると「ただの雑草」と思われるかもしれませんが、雑草にまぎれてカボチャが植えられているのです。
農業自体についてもですが、自然栽培について学ぶことは非常に多く、慣れないことの連続でした。その全てを書くと膨大な量になってしまいますので、ここからは私が『自然栽培の成功への手応えを掴んだ』印象深い野菜作りについてお話しします。
■ 100年前から愛されるイタリアの伝統品種『ボルゲーゼトマト』
イタリア南部原産のボルゲーゼトマトの生育の特性は、上ではなく横に成長する品種です。
慣行栽培では支柱で囲い、上に生育させるのが普通でしたが、私は横に広がって生育する方が自然なのではないかと思いました。
しかし同僚からは、「支柱が無いと良く育たない」「収穫がやりにくい」「実が土に接触してすぐに腐敗してしまう」などの反対意見がありました。
話し合いの結果、実験的に半分だけでも試したいと説得してチャレンジできることになりました。
その結果は、手間が減るだけでなく、支柱で囲ったトマトと変わらないほどの収穫量になりました。トマトの成長を自然に生育する方向に任せることにより、風通しや日当たりが良かったのが要因だったと思います。
きちんと熟して実が土に接触しても腐食しないうちに収穫することで、最も美味しいタイミングで提供することができました。
前橋の土質も良かったのですが、人が手間を加えても、自然に育てても、どちらも美味しいボルゲーゼトマトをたくさん収穫できました。
この成功体験は、私にとって自然栽培の成功への大きな手応えとなりました。
この内容については以前の農場便りでご紹介していますのでご覧になってください。
【農場便り】ボルゲーゼトマトの栽培について
■ 捨てていた雑草を、メリットだらけの資源に変える循環型農法『雑草マルチ』で作ったカボチャ
マルチとは畑の畝の表面をシートで覆う『マルチ栽培』のことです。
地温の調節・雑草抑制・乾燥防止・病気予防などの効果が得られます。慣行農法ではビニール製のマルチシートがよく用いられます。
雑草マルチとはビニールシートを雑草に置き換えて畝を覆うというものです。
上の画像は、2列の畝がありますが、茶色くなっている部分は雑草マルチを敷いています。左側の手前側、緑色の雑草に覆われている畝は何もしていません。
私が自然栽培で作りたかった野菜の一つにカボチャがあります。
ハワイのコーヒー農園で野生のカボチャが力強く育っているのをたまたま見つけました。なにも手を加えずにほったらかしにしていても、たくさん収穫できたカボチャはとても美味しかったのです。
前橋でも栽培しましたが、とにかく雑草がたくさん生えてくるため、対策として防草シートを設置して雑草対策をしていましたが、カボチャが地面から栄養を取りにくいのではと思いました。雑草と共存できないのではという声もありましたが、雑草を生やしてもカボチャはしっかりと育ったのです。
また、ニンニク栽培では雑草対策や保温のために、ビニールマルチではなく雑草マルチが成功しました。
翔栄ファームでは環境問題に取り組んでおり、『脱炭素』と『海洋への流出防止』の観点から、ビニールマルチなどのプラスチックごみ削減を進めています。
さらに、ビニールマルチは材料のコストがかかり、風ではぎ飛ばされた際の補修や、収穫後の回収にとても手間がかかるなどの点を、すべて解決できる雑草マルチには大きなメリットがあります。
その内容についても以前の農場便りでご紹介していますのでご覧になってください。
■ 自然栽培を続ける決意
自然栽培は、雑草対策や害虫対策の他にもたくさんここでは書ききれない大変なことがあります。
しかし、人と環境にやさしく地球を汚さない、健康に良い自然を活かした農業であることは間違いありません。人は昔から自然と共に生きて、自然のものを余ったらお裾分けしてもらってきたのです。ハワイで雑草にまぎれてたくましく生えていた野性のコーヒーの木を見つけた時から、化学肥料を与えられず小さな実ながらもとても甘くてやさしい味わいを知った時から、自然栽培をやり続ける決意に変わりはありません。
私はもっともっと勉強して、もっともっと地域に貢献したいと思います。