こんにちは!翔栄ファーム 前橋圃場(ほじょう)のMです。
翔栄ファームでは安心・安全な食を提供できるよう、自社農園で無農薬・無化学肥料栽培にて色々な作物を作っています。野菜以外にも、お米、大豆、麦などの穀類も栽培しています。
麦作りは2020年から始めていますが、耕作放棄地の開墾からスタートだったことや、機械がなくほぼ手作業だったり、製粉してくれる業者さん探しが難航するなど、自然農法特有の大敵であるカビや害虫の被害の他に、多くの困難がありました。
たくさんの困難を乗り越え続け、2022年11月末に翔栄ファームとしては3回目の種まきを行いました。
2023年3月頃は、芽吹いてきた小麦を襲うアブラムシを、ハケに水を付けて落すという駆除作業に明け暮れていました。
詳しくは過去のコラムをご覧になってください。
【農場便り】トラブル続出の土地で、無農薬・無化学肥料の麦を作りたい!第3話
■ 麦にとって恐ろしい天敵『アブラムシ』と二刀流での戦い
アブラムシは茎や葉に寄生して汁を吸う、麦にとって恐ろしい天敵です。
どれほど恐ろしいかを知りたい!という方はこちらのコラムをご覧ください。
過去のコラムへのご案内が続きましたが、とても濃い内容のため簡単には説明することができずお許しください。しかしおすすめの記事ですので、ぜひぜひご覧になってくださいm(_ _)m
とにかく、せっかく芽吹いた麦を、天敵であるアブラムシから守らなければなりません。しかし、ハケに水を付けて落す方法では時間と手間がかかりすぎで、他にも色々な野菜を作っていることもあり、もっと効率的かつ効果的な対策はないものかと探した結果、ネットの記事からヒントを得てとある武器を作り出したのです!
それは身近なもので簡単に作れる、無農薬栽培での害虫忌避に効果的で、基本的な材料は『酢』『粉末唐辛子』だけの、その名も「チリペッパービネガー」です!虫が苦手とする酢と唐辛子を使っているので、植物に近づく害虫を遠ざける効果があります。ただし殺虫効果はないため、害虫被害を完全に防ぐ事はできません。害虫が繁殖しないうちに予防するための武器なのです。
国産有機栽培のうるち米だけで作られた酢と、翔栄ファームの前橋圃場で無農薬・無化学肥料栽培で作った乾燥唐辛子を粉末にして混ぜ合わせて作るため、化学薬品ではなく作物や自然や人に優しい武器なのです。
このチリペッパービネガーの注意点は、使い過ぎると害虫の天敵までも野菜に近寄らなくなってしまうことです。アブラムシの天敵であるテントウムシが増えれば、この武器を使う必要もなくなるので、あくまでもアブラムシに焦点を絞った使用方法です。
アブラムシはどこからか飛んできて、葉や茎に付着すると一瞬で増殖し、作物の養分を吸い出してしまいます。大量発生する前に、見つけたら直接アブラムシめがけてチリペッパービネガーを吹きかけるという、ハケに水を付けて落す駆除方法よりかはいくぶん効率は上がりましたが、慣行農法のようにスプレーや農薬散布で対応するよりは、格段に手間と根気が必要な駆除方法をひたすら続けました。
もちろん駆除の効果も上がったのですが、中には耐性があるのかチリペッパービネガーをものともしないアブラムシもいました。多くはないですが少なくもない数なので、二刀流で臨むことにしました。もう1刀はチリペッパービネガーと同じタイミングで見つけて気になっていた、その名も『ニームオイル』でした。
ニームは、インドで奇跡の木(ミラクルハーブ)と呼ばれ、この実を圧搾機で絞って抽出する液体が 『ニームオイル』になります。 害虫の忌避剤として利用されるニームは、数千年前から虫下し、胃薬、歯磨き、虫除けなど民間の治療薬として広く使われていたようです。
野菜や果樹、花などにニームオイルを散布すると害虫予防になり、ハダニやアブラムシ、コガネムシなどはもちろん、200種以上の害虫に効果があると言われています。しかし、土壌を活性化させてくれるミミズなどには害がありません。農薬ではなく自然由来のオイルなので、無農薬栽培に使っても安心です。
ニームオイルと水を混ぜて、スプレーでアブラムシにかけると、これまたどんどん駆除できました。
チリペッパービネガーとニームオイルの二刀流で、アブラムシから麦を守ることができました。
害虫以外にも『害獣』の脅威を感じたこともありました。圃場の近くで鹿のフンが見つかったのです。鹿に麦をパクパク食べられたのではたまったものではないと、防獣柵の設置を開始しましたが、天候や他の作業と並行していたため完成することができなかったのですが、幸いにも鹿の被害は発生しませんでした。
■ 除草剤を使わない自然農法あるある「雑草との戦い」
2023年5月になり麦は成長してきましたが、同じく成長してくるのが雑草です。この雑草対策がとにかく大変でした。麦を覆い隠すほどの高さまで成長して、さらには麦の株元に生えるので刈り取りの難易度がとても高いのです。
まっすぐ伸びる雑草だけでも大変なのに、ツル状の雑草も生えてきたので、手押し車のような草刈機や、手持ちの刈払機でもうまく刈ることができず、最終的には手で引き抜きました。とても大変で手間のかかる作業でした。
雑草がなくなったことで風通しや日当たりは良くなりましたが、雑草に覆い隠されていた期間があったため生育は遅く、収穫のタイミングを決めるのがとても難しかったです。
収穫のタイミングは、『麦の成長具合』『麦の状態や水分量』『天候』で決まります。この中で最も悩まされたのが『麦の状態や水分量』でした。これは水分量を測る機械があればすぐに解決するのですが、残念ながら翔栄ファームにはなかったので、穂が垂れているか?茶色になっているか?爪で割って中身の硬さを確認するなどの方法で、収穫タイミングを判断するしかありませんでした。
■ さあ!収穫だ!しかしトラブル発生
麦が収穫に適した状態に近づいたころ、雨が3-4日間続くという天気予報が出されたのを見て、その前の6月25日と27日に収穫することにしました。
多雨の日本では、収穫期の雨による「カビ」や、穂に実った種子から芽が出る現象の「穂発芽」や、裸麦で種皮が黒く変色する「ヤケ粒」や、穀皮の色褪せを伴う「退色粒」などの障害により、品質・商品価値が大幅に低下してしまうことがあります。去年は長雨によるカビの大発生で麦は全滅してしまいました。この時点では、まだ雨害の発生は確認されていませんでしたが、この状態が続く保証はどこにもありません。雨が降る前のこの2日間で完了させるべく、人員と全工程(収穫・脱穀・選別・乾燥)の段取りを組み、コンバインを準備してその日を待ちました。
6月25日の朝から麦の収穫が始まりました。天気は良くコンバインも好調でした。前回はコンバインがなく、鎌で刈り取り、麦の粒を穂から取り離す脱穀まで全て手作業でしたが、今回は全自動で次々に収穫して脱穀していきました。目標通りの工程で1日目を終え、2日目の6月27日を迎えました。天気も問題なく収穫を進めていると、突如コンバインが故障しました。
コンバインは自分で修理できるはずもなく、メーカーに修理を依頼しましたが、「本日中の修理完了が難しい」との言葉に、とにかく急いもらえるように何度もお願いしました。修理を待つ間、突如くずれるかもしれない晴れた空と天気予報を見ながら、「もし雨が降ったら・・・」という焦りの中、手作業でできるだけのことをやりました。
コンバインの修理が完了したのは、翌日の6月28日でした。幸いにもまだ雨は降っていませんでしたが、怪しく曇りつつある空を見上げながら、大急ぎで進めた結果、なんとか雨が降る前に収穫し終えることができました!
■ さあ!製粉だ!!できた小麦粉のお味は・・・
収穫後は天日干しして麦を乾燥させました。雨が降れば育苗ハウスの中で、ケースで作った高台に乗せて、温度と湿度を計器でチェックしながら、扇風機を当てて乾燥させました。
乾燥が充分できたのちに、業者の方に依頼して製粉した結果、27キロの小麦粉ができました。
今回作った小麦は日本国産の『農林61号』という品種で、2024年には80周年を迎えるほど歴史のある小麦です。独特の風味があり、過去には群馬県産小麦の一大ブランドだった農林61号は、一部飲食業界では欲しくても中々手に入らない”幻の粉”と呼ばれている品種です。
製粉したての小麦粉を生で舐めてみたら、ほんのりした甘味が口の中に広がりました。その瞬間、小麦粉ができたことを実感しました。ここ群馬県前橋の地で、無農薬・無化学肥料栽培で安全で美味しい小麦粉がとうとうできたのです。
ほんのりした甘味を噛み締めながら、私はこの小麦粉でどんな料理を作りたいか考えました。うどんもいいな、クッキーもいいな、しかしまずは野菜たっぷりのお好み焼きを作りたいと思いました。
皆さんはこの小麦粉でどんな料理を作りたいですか?
翔栄ファームの小麦粉は、インターネット販売サイト『しぜんとくらそ』や、『群馬県前橋』と『茨城県龍ヶ崎』の各圃場と、東京都の東中野にある『ビセットプラザ』で店頭販売を行っています。
この小麦粉をぜひ味わってみてください。