■ 農業ビギナーのチャレンジ開始!
私は岐阜で生まれ育ちました。専門学校ではCGやイラストのデザインを学び、卒業して包丁製造業の会社に入社しました。しかし、もっと人間が地球に貢献できるような仕事をしたいという思いが強くなりました。そして、農業に興味を持つようになりました。
地球への恩返しを実現するため翔栄ファームに入社し、そこから私の農業チャレンジが始まりました。
農業を始めてからは、新たな体験と壁にぶち当たることの連続でした。
翔栄ファームとしても、野菜と穀類作りの中でクリアできない難題も多く、新たな環境での挑戦を求め、2023年1月からは茨城県の竜ヶ崎へと移住し、再チャレンジしました。
初めて見た関東平野は、どこまでも続く平地の景色に驚きました。茨城にきて翔栄ファームで耕していた岐阜の圃場との地質との違いに驚きました。岐阜の圃場は土壌の栄養のバランスを保つ役割を担う微生物が少なく、石が多いため発芽率が低かったのです。茨城は微生物も多く、雨が降ってもすぐに耕作できるほどの水捌けの良い地質でした。
この地で私は農業を成功させることを決意しました。
■ 突然ですが「端境期(はざかいき)」という言葉をご存知ですか?
端境期は農家にとってはとても悩ましい期間です。
米や野菜などの農産物が収穫できなくなる時期(移行期)のことで、端境期は年2回あります。
冬野菜が終わって春野菜ができるまでの2~4月頃と、夏野菜が終って秋野菜が出回る9~10月頃です。
なんと1年間の1/3は端境期で、獲れる野菜の種類が激減するのです。
しかし、ただ何もしないのではありません。この端境期にどんな野菜を植えたら良い?前後の種植えをずらして端境期をどうやって短くする?など農家の人は知恵を振り絞っています。
農業を成功させるには「端境期対策」が大きな要因になります。
■ 端境期 秋の陣
私の初めての端境期対策は2020年の秋でした。しかし、残念ながら失敗に終わりました。
9月前後に種まきした根キャベツやキャベツは、寒くなる前に十分に大きくなりませんでした。大きくなるまで待つことにしましたが、他の作物(春菊やほうれん草など)の収穫を優先したことと気温の上昇が想定より早く、とう立ち(花芽のついている茎がにょきにょきと伸びてきた状態のことを言います)して、キャベツの収穫時期を逃してしまいました。
次の秋は、もっと早いタイミングで大きくするために、寒さから保護する方法をもう一度考え直す必要があります。
そして、作物の成長に合わせて適切な収穫のタイミングを見極めることが必須です。
■ 端境期 春の陣
春先の端境期は寒さのため生育が鈍く、反対に少し目を離してしまうと、とう立ちして、花が出てしまったり、生育しきった状態になって、最良の収穫時期を逃してしまうのです。こうなっては売り物になりません。
その対策として、私は2020年12月から、ブロッコリーやキャベツ、ケール、カブなどを植え、その上にビニールトンネルを被せて作物を温かく保つことを試しています。作物を寒さから守り、生育を促すことができるのです。
1年を通して安定的な作物作りを目指すため、2023年2月中旬に種まきしたルッコラ、小松菜、カブは順調に育ち、4月中旬以降には収穫予定です。これによって、端境期を乗り切るだけでなく、安定した作物の供給を実現することができます。
端境期3〜4月を終えて、次回に向けて新たな取り組みを計画しています。成功例のある、レッドロシアンケールや芽キャベツやブロッコリーの植え付けを早めに行うことを考えています。
1〜2週間早い時期に植え付けることで、寒さによる生育の遅れをカバーし、作物の生育を促進させることが期待できます。
■ これからの端境期対策
まだ私の端境期対策は成功が見えず試行錯誤の真っ最中です。
農業においては、継続的な試行錯誤が必要です。今回の経験を踏まえて、より効果的な端境期対策を実施し、作物の安定的な育成に取り組んでいきます。将来はさらなる成果を上げるために、農業技術や情報を学びながら、より良い農作物の生産に貢献していきたいと考えています。
翔栄ファームでは無農薬・無化学肥料の大変手間のかかる農法を行っています。それでなくても農業は大変なことがたくさんありますが、私にとっては大変さ以上にとても楽しいです。太陽の光の下で働くことは心地よく、自然との一体感を感じることができました。土に触れ、植物たちが成長していく様子を見ることは、何よりも喜びに満ちた瞬間でした。
また、さまざまなイベントや活動を通じて、お客様と関わる機会も多くありました。農業は簡単な道ではありませんが、私はこの挑戦を続けることを決めました。
地球と人々に貢献することを目指して、太陽光を浴びながら、自然と共に働くことで得られる喜びや充実感は、私にとって大きな魅力です。