こんにちは。
翔栄ファーム・前橋農場のK.Mです。
前橋農場で、無農薬・無化学肥料での作物づくりを日々楽しく熱い思いで行っています。
そんな中、特に今年行ったトウモロコシ(固定種のモチットコーン)の栽培については、特別な思いを持ちました。
そこで、今回は翔栄ファーム・前橋農場で行ったトウモロコシ栽培について書かせていただきます。
■ トウモロコシの自然栽培は難しい?
先ほど書きましたが、翔栄ファーム・前橋農場で育てている作物の中でも、特にトウモロコシの栽培について、私は特別な思いを持ちました。
好奇心半版、そして何か長く見守りながら、トウモロコシと共に最適な道を見つけていくような感覚を抱いていました。
といいますのも、アメリカで生活をしていたころは、近くの食料品売り場でオーガニック食品が容易く購入できるといった、現在よりも比較的に恵まれた食生活を送っていました。
しかし、実は身近で手に入れたくても手に入らなかったオーガニック食品が、トウモロコシだったのです。
※ちなみに、私は前職はコーヒー生産業界で、長らく海外で生活していました。(→ 詳しくはこちら)
アメリカは、オーガニック食品の販売の先進国です。
にもかかわらず、生鮮販売のオーガニックのトウモロコシが売場にありません。
何とか探せても、トウモロコシの芯から取り除かれた実の粒が、冷凍か缶詰食品として販売されているものしか見当たりませんでした。
当然、トウモロコシを丸ごとほおばる食べ方もできません。
茹でてサラダやスープに加えて…といった、お気に入りの食べ方もできません。
冷凍や缶詰ですと、どうしても、トウモロコシの存在感を感じられず、味わいも、個人的には満足いくものではありませんでした。
アメリカでは、食品売り場にならぶ、生鮮のトウモロコシは、どれも遺伝子組み換えの慣行栽培のものでした。
オーガニック先進国のアメリカでもそうなのだから、トウモロコシは、きっと、殺虫剤、除草剤に過度に頼らないと栽培生産が厳しいのだろうと想像していました。
ですから、翔栄ファームでトウモロコシに挑戦することとなり、無農薬・無化学肥料で本当に栽培、収穫できるのか大変興味深いところでもありました。
■ 刈り草マルチを使った防草
翔栄ファームのトウモロコシの栽培では、一般的に行う、ビニールマルチ(畑の畝を覆うシート、雑草の繁茂を防ぎ、中の温度を適度に保つなど、さまざまな役割を持つ)を株周りに敷いて防草する方法は採用しませんでした。
その代わり、周辺の雑草を刈りこんで少し乾燥させたものを土壌環境作りの一助として(微生物の活性化)株周りに敷き詰めました。
これは「刈り草マルチ」と呼ばれており、防草、保湿の役目とともに土作りにもつながる方法です。
周囲の自然を活かし、自然環境により良い形で、作物の育成を行うことができます。
農薬やビニールマルチを使いませんでしたが、刈り草マルチの甲斐もあってか、雑草が苗の成長を妨げることなく、トウモロコシは、順調に育っていきました。
■ そして実ったトウモロコシの味は…
順調に育つトウモロコシを見て、私の中で、美味しいトウモロコシへの期待が膨らんできました。
そしてついに、トウモロコシにしては小ぶりながらも、いよいよ実が付いて感動もひとしお!です。
早速に生食で味見をしたところ、優しく口の中でほんのりとじわっと広がりました。
最近のやたら甘い品種と違い、舌を刺さない自然の甘味に感激!
さらに電子レンジで加熱してみましたが、甘く素朴な味わいです。
人工的な有機肥料すら施肥しない自然栽培のトウモロコシを堪能したのでした。
■ トウモロコシ栽培の難しさを実感
しかし、その喜びも束の間でした。
実が段々とつき始めるにつれ、トウモロコシの実に害虫被害が見られるようになったのです。
無農薬栽培の宿命かもしれませんが、結局、害虫の有効な即効方法が見当たらず、手で取るしかありません。
ただ、翔栄ファームでは、トウモロコシだけを作っている訳ではありません。
他の作物の作業も重なって、手作業の害虫駆除が十分に行えませんでした。
その結局、残念ながら虫食いのトウモロコシを多く生産する結果となってしまいました。
トウモロコシの出荷時には、虫が入らないようにスタッフ皆で注意はしていたものの、出荷販売したトウモロコシの中に、中身が害虫被害を受けたものが多数発生。
外観、触感では見抜けず、トウモロコシの実がちゃんと付いていない貧弱な商品をお届けすることになってしまい、多くのお客さまにご迷惑をかけることになってしまいました。
私たち翔栄ファームの栽培、販売に至るまでの生産者、販売者としての未熟さを露呈する格好となり、私自身、関係スタッフ全員で深く反省しました。
トウモロコシは、外側の皮ごとお客様にお届けした方が鮮度も高く、持ちもよく、美味しく食べていただけます。
しかし、皮をめくって中身を確認しないと、実入りや虫食いの状況が見えません。
実入りの虫食いを防ぐためには、皮を外して実だけで販売した方が確実で良いかもしれません。
しかし、自然栽培のトウモロコシの美味しさを味わっていただくことを考えますと、次回もやはり皮をつけたままお届けしたいと思っています。
とはいえ、実がスカスカのトウモロコシがお客様のお手元に届かないようにするためには、どうしたら良いのか?
皮を付けた状態でも、それが判断できるように、方法をもっともっと探していく必要もあります。
また、販売価格の見直し、例えば、重量で販売価格を設定するなども必要かもしれません。
そして、トウモロコシや自然栽培の特性などもお客様にもっとお伝えして、自然、人に優しい美味しいトウモロコシのあり方を一緒に見つけ育てていきたいと思っています。
■ 来年もトウモロコシに挑戦します!
今回は、翔栄ファームで挑戦したトウモロコシ栽培について、書かせていただきました。
アメリカで感じたように、トウモロコシの自然栽培は、かなり難しいことかもしれません。
しかし、
・害虫被害をできるだけ抑えるための方法
・自然界の生物同士でバランスが取れるような自然環境づくり
・自然由来の化学品を一切使用していない虫よけ剤で十分な効果を出せないか
など、色々と工夫は可能ではないかと考えています。
私としては、全くの初体験だったトウモロコシの栽培生産販売の経験を次に活かして、安心安全で美味しいい農場の栽培販売にもっと深く携わっていきたいと思います。