フッ素は虫歯に対する歯自体の抵抗力をあげ、虫歯になりにくくする効果があるとされ、多くの歯科医院では、とくに小児歯科などでは虫歯予防の為にとお子様に塗布をすすめすることが多いようです。
一方で、「フッ素は塗らない方がいい」という相反する意見も聞こえてきます。
「実際のところはどうなんでしょう? フッ素を塗布することは良いことなのでしょうか?健康を害するので避けたほうがいいのでしょうか?」今回は歯磨き粉にも使用されているフッ素について考えてみたいと思います。
■ フッ素とは?
フッ素とは・・・
エナメル質の修復促進、歯質強化、菌の働きを弱めるなど、むし歯の発生を防ぐ効果と予防に有効な成分として注目されているミネラルの一種です。フッ素は様々な働きをしてくれることで私たちの口中を守ってくれています。
フッ素における主な働きはというと虫歯菌の活動を抑制してくれます。
虫歯菌というのは食べかすなどをエサにし、酸を作り出します。体の中で一番硬い組織の歯ですが表面にこの酸が付着するとにより徐々に溶かされ、穴が空いてしまう、これが虫歯です。フッ素には虫歯菌が作り出す酸を抑制、菌の活動を低下させる効果があります。
次に、歯質の強化が期待できます。
歯の表面のエナメル質にフッ素が取り込まれることで弱っている部分が修復され虫歯菌に抵抗できる強い歯質に変化させることができます。特に生えたての永久歯はエナメル質が未熟のためフッ素を塗布することにより虫歯になりにくくなると考えられます。
更には、初期虫歯の修復が可能です。
虫歯菌の酸によってエナメル質からカルシウム成分が流れ出て、初期の虫歯になった歯にフッ素(フッ素イオン)が入り込むことによって再石灰化が起こり、虫歯の進行を止め、治す効果があります。
自宅でのケアではフッ素入り歯磨き粉やフッ素入りジェルを日常的に使い、2~3か月ごとの定期健診では高濃度のフッ素を塗布するなどのケアをされるのが一般的かもしれません。
一方で、「フッ素は塗らない方が良い」という意見もあるようです。
このように相反する意見があるフッ素の塗布についてですが実際のところは、「フッ素を塗布することって良いことなの? それとも害があるものを体内に入れてしまうことになるから悪いことなのかもしれない?」いったいどちらが正しいのでしょうか。
■ 使っても大丈夫なの?フッ素の危険性
元素の単体であるフッ素そのものは猛毒です。ただし反応性が高いためすぐに酸化することで化合物となるため問題はないようです。
実際に虫歯予防に使用されている化合物(フッ素化物)はフッ化ナトリウムというものなのですが、この化合物は一度に大量に体内に取り込むと下痢・嘔吐などの急性中毒を発症することもあると言われています。
しかしながら、この場合の大量という度合いは、例えるなら、3歳児(体重15キロほど)が子供用歯磨き粉を1本(60g)一度に丸々飲み干したくらいの量のようで現実的にその状態があるとは考えにくいと思われます。(最近では美味しい歯磨き粉が市販されているのでお子様の行動をしっかりと見守ることが前提となりますが。)致死量となるとさらにこれよりも多量のフッ素を体内に摂取した場合ということですので、フッ素摂取により命に関わるようなリスクを負うことを心配する必要はないと思われます。
しかしながら、虫歯予防に効果的と日常的に使用されていたフッ素がネガティブな方面に作用するのではないかとの懸念が国際的に広がっているのも事実のようです。
昔のように子どもの虫歯が多発していた時代とは違い、歯磨きをするのは当たり前、親も子も食べたら磨くことが習慣となっている現代では親の歯磨きへの意識も高くなっており、子どもの虫歯は減少しています。そのため、リスクが懸念されるフッ化物を安易に使用する必要もなく好ましくないと考えられる方もいるのかもしれません。実際はほとんど吐き出してしまうため悪影響はないと考えられる方の方が多いようです。
■ フッ素塗布の人体への影響について
どんなものでも過剰な濃度・量を体内に摂りこむと、何らかの悪影響が生じます。それは虫歯予防に効果のあるフッ素も例外ではありません。高濃度のフッ化物ジェルを使用するフッ素を塗布することによる安全性はやはり気になるところです。
▼フッ素塗布に使用されるフッ化物の濃度
歯科医院でフッ素塗布してもらう場合、9000ppm程度のフッ化物が配合されたジェルが使用されるようです。市販の歯磨き粉に配合できる濃度が1500ppmまでなので、かなりの高濃度であることがわかります。フッ素による健康被害についてはどうなのでしょう。
*ppmは、parts per million の略、 Millionは、100万を意味するので、100万分の1を表します。 パーセントで表すと、1 ppmは 0.0001 パーセントとなります。
▼フッ素は過剰に“摂取”すると有害に?
前述したようにフッ素を過剰に摂取すると、急性中毒を引き起こすと言われていますがフッ素入り歯磨き粉の使用やフッ素塗布は、歯にフッ素を作用させるだけであり体内に摂りこむわけではありません。そのため、歯科医院で高濃度のフッ素を塗布したとしても、健康被害が生じることはまずないと考えられます。ただし、取り扱いを誤ると人体に悪影響を及ぼすこともあるので、歯科医師や歯科衛生士といった専門家が施術する必要があります。
▼歯科医院で受けるフッ素は安全
結果、歯科医院で受けるフッ素塗布は、必ず歯科医師もしくは歯科衛生士が行いますので、人体への悪影響がない形で施術されますので安全性は保証されています。
日常で気を付けたいのは、市販のフッ素入りうがい薬や歯磨き粉を歯磨きの際に飲み込んでしまうこと、食べ物ではありませんので飲み込まないように注意が必要です。
市販の歯磨き粉のうちジェルタイプやペーストタイプなどにフッ素が配合されているものが多いようです。イチゴ味やバナナ味などと小さなお子様が楽しく歯磨きができるよう美味しくアレンジされていますよね。歯磨き粉は適量を使用し、口に含んだら必ず吐き出すことをお子にきちんと指導することが大事です。楽しそうに歯磨きするからと言って歯磨き粉をチューブごと手渡してしまったり放置したりせず、安全のためにもお子様が歯磨きしている様子を保護者の方が「きれいに磨けたかな?」などと声をかけ見守りながら、いっしょに虫歯ゼロを目指しましょう!