こんにちは。 翔栄ファーム前橋農場(群馬県)のM.Yです。
翔栄ファームでは安心・安全な食をみなさまにご提供できるよう、自社農園で除草剤を使わず、無農薬・無化学肥料の自然栽培で作物を作っています。
季節ごとのいろいろな野菜の他に、お米・大豆・麦などの穀類も栽培しています。
私は2022年2月から翔栄ファームで働き始めました。それは『人と環境にやさしく地球を汚さない、健康に良い自然を活かした野菜作りを学び、農業で地域に貢献したい』と思ったからです。
今回は、なぜ私が自然栽培の農業に興味を持ち、たずさわるようになったのかについてお話しさせていただきます。
■ 『生産量と利益が最優先、農薬・化学肥料まみれ』慣行栽培への疑問
私がそもそも農業と関わりを持ったのは、2001年にカフェを全国展開する会社に入社したのがきっかけでした。
入社後、2007年には運営と経営の総責任者として、会社が所有するハワイのコーヒー農園へ転勤することになりました。そこから12年間は農薬・化学肥料まみれの慣行栽培で、生産量と利益を常に意識しながらコーヒー豆を栽培しました。
慣行栽培とは、農薬・肥料の投入量や散布回数などにおいて相当数の生産者が実施している一般的な農業の方法です。
慣行栽培で農薬や除草剤の使用を続けて10年を超えたあたりから、コーヒーの木の生育が弱っていくのを目の当たりにしました。それに伴って収穫量も落ちてきますが、化学肥料によって強制的に生育させるのです。しかしコーヒーの木は明らかに年々弱っていくことに、私はとても疑問を感じました。
加えて、水溶性の化学肥料が、ハワイのきれいな海に溶け出していることを知って慣行栽培への疑問は膨らんでいきました。
慣行栽培への疑問が不信感になったのは除草剤から発生した人体への影響からでした。
除草のために農薬散布の作業を1日中行っていたスタッフが、突如吐き出してしまうという健康への被害が出たのです。
■ 『社長に直訴』栽培方法の転換を求めるも・・・
このままでは更なる問題が生まれると感じた私は、「もっと自然を生かした農法を取り入れるべきだ」と栽培方法の転換を社長に求めました。その結果実験的に、除草剤を減らしたり、除草剤に代わる除草方法を実験したり、農薬散布作業を2〜3時間での交代制にするなどの、改善策を実施していきました。
しかし2年も経たないうちに本社からは、生産量の増加と収支の改善を求められ、人の健康を守るための改善策は継続できなくなりました。
本社の経営判断として除草剤・農薬・化学肥料を多いに活用することになりましたが、化学肥料に頼った栽培は最善ではないことは理解してもらいました。その結果、生産量増加とコーヒーの生育改善を目的に、土作りを長期的な課題として取り組むことになりました。
毎年の土壌分析結果に基づいた化学肥料の投与に加えて、堆肥作り・有機肥料・微生物・酵素を利用したコーヒー栽培に注力するという方針に切り替わりました。
会社の指示により更なる生産量向上のため、新しく取得した土地を切り開いていたとき、先住民の遺跡が見つかったのです。遺跡は保全のために柵で囲い、その周りをコーヒー農園として切り開きました。
新しい農園でも農薬・化学肥料・除草剤を使った慣行栽培で栽培していましたが、栽培の合間に、時々遺跡を保全している柵の中の草刈りをしていました。そしてたまたま行った場所で、野生のコーヒーの木が群生している場所を見つけたのです。これが自然栽培と出会った場所でした。
■ 『イキイキと育つ野性のコーヒーの木』自然栽培に感動
野生のコーヒーの木は計画的に植えられていないのでまっすぐは伸びず、絡み合うように生えていました。しかし、化学肥料を一切与えられていないのにコーヒーの葉がイキイキとして、慣行栽培で育てているコーヒーの木とは違ってとても元気だったのです。
一つ実をとって舐めてみたら、とても甘くてやさしい味がしました。化学肥料を与えたコーヒー豆と比べると小さかったのですが、それ以上にとても美味しかったのです。
農薬を撒いていないため雑草が生い茂っていましたが、雑草と共生しながら元気に生えている野生のコーヒーの木を通して、自然栽培に対する感動を覚えました。
そして私はこの時に決意しました。「こんなコーヒーを作りたい!健康に良い自然を活かした栽培方法で、コーヒーを将来必ず作るんだ!!」
【農場便り】『ハワイで味わった野性のコーヒー豆に感動』私が慣行栽培に感じた疑問と、自然栽培との出会い② に続く