翔栄ファーム・龍ヶ崎農場に勤務している浅野と申します。
今回は、翔栄ファーム・龍ヶ崎農場で力を入れている、さつまいもの栽培について書かせていただきます。
■ 美味しいさつまいもを作るために
私が勤務している龍ヶ崎農場の在る茨城県は、さつまいもの名産地として知られています。
龍ヶ崎農場では昨年、紅あずま、紅はるか、安納芋の3種類のサツマイモを栽培しました。
中でも、紅はるかを干し芋に加工した商品が、多くの方から御好評をいただき、ありがたい事に発売後短期間にて完売致しました。
今年は更に美味しいさつまいも、干し芋を生産すべく茨城県を代表するさつまいも生産者、照沼勝浩氏(注1)の講習を受講し、さつまいも栽培に対しての知識を深めてまいりました。
さつまいも講習ではありますが、他の作物にも通ずる自然栽培の知識も得る事が出来、貴重な時間を過ごす事ができました。
自然栽培という言葉の定義は確立されておりませんが、作物が自力で育つ環境を整える事を中心に、人間が助力していく事に本質があるのではないかと感じました。
■ さつまいも講習
講習内容は多岐に渡る為、全てをお伝えする事は難しいのですが、美味しいさつまいもを作るには
- 収穫を終えた畑に11月中旬頃、麦を蒔く
- 4月中旬ごろ麦を刈り取り、畑の上で天日にさらし茶色く変色後、畑に混ぜ込む。
- 5月頃良質の苗(苗が硬く、節が多い)を植える
- 収穫期まで雑草に栄養を取られないよう除草
- 収穫後追熟しでんぷん質を糖化させ甘みを増す
要点をかいつまむとこのようになります。
ただ、ここには、文章には表れない苦労が秘められています。
我々も次回作付け時は、この工程を再現してより美味しいさつまいも作りを目指します。
■ 重要なポイントは「追熟」
さつまいもの生産では、前述の工程の中でも追熟(注2)の工程が甘みを増す重要なポイントになります。
上手に追熟するためには、室温13~15℃、湿度85%~90%の環境下で2週間~2カ月(個体差による)保管する必要があります。
一般家庭でその環境を用意するのは容易ではないと思われます。
翔栄ファームでは、今年収穫のさつまいもについては、設備を使わずに追熟する方法を検討しています。
皆様に昨年より甘いさつまいもを提供できないか、また家庭でも再現できるような方法をご紹介できないか現在も検討を続けております。
(昨年のさつまいもも設備を使用しておりません)
■ さつまいもの保存
また、さつまいもは寒さに弱く、10℃以下の環境では低温障害を受け品質が著しく劣化してしまいます。
逆に、20℃以上では発芽が始まる為、品質を保ったまま長期保存するのが難しい作物でもあります。
さつまいもをキュアリング処理(注3)する事により、低温障害を避けやすくする事も可能ですが、これもまた家庭での再現が難しい作業になってしまいます。
ご家庭で保存期間を延ばすには
- 皮付き、土付きのまま新聞包装し、野菜室で保管(カットしていないもので2か月)
- 輪切り(2~3週)、マッシュポテト(1カ月)にして冷凍保存
- 干し芋に加工(3か月)
※()は保存可能期間
などの方法があるので、大量に手に入った際は上記の方法での保存がおススメです。
■ さつまいも講習を受けて
今回講習を受け、美味しいさつまいもが家庭に届くまでに様々な工夫、普段耳にしないような処理を経ている事がわかりました。
栽培にも手間暇と知識、経験が詰め込まれていますが、収穫後の処理作業にもまた手間暇、知識、経験が詰め込まれている事を知りました。
世の中には数えきれないほどの野菜が出回っています。
それぞれの野菜を美味しく提供する為に、日々生産者の方々が創意工夫されてきた歴史が、野菜の味に詰まっているのだなと改めて実感しました。
我々も生産者の一人ではありますが、良質な野菜を生産する方々が共に農業を継続できるよう、皆様のもとに良質な野菜が継続して届くよう、ネットワークを広げ、宅配サービスを通じ、相互に支え合う好循環を生み出せるよう努めてまいりたいと思います。
翔栄ファーム 龍ヶ崎農場 浅野雄太
■ 注釈
注1)照沼勝浩氏
株式会社照沼名誉会長、茨城県最高品質農産物研究会代表、ほしいも学校理事
注2)追熟
一部の果物、野菜などを収穫後、一定期間置くことで、甘さを増したり果肉をやわらかくする処理のこと。
注3)キュアリング処理
温度と湿度(高温多湿)を一定にし、さつまいもを一定期間置くことで、表面にコルク層ができます。このコルク層が、収穫時についた細かな傷から病原菌が入るのを防ぐので、長く保存することが可能になります。これをキュアリング処理と言います。