■ プラントベースはなぜサステイナブルなのか?
最近、「プラネタリーヘルスダイエット」
というワードを見聞きすることが多くなりました。
2019年の発表当時は
さほど注目されていたようには思いませんでしたが、
地球規模の様々な大転換とその更なる予兆の中で、
一気にクローズアップされてきた印象があります。
そしてこのプラネタリーヘルスダイエットの記事で
必ず目にするキーワードが「プラントベース」です。
プラントベースとはつまり「植物由来」ということ。
この植物由来(プラントベース)が
これ以上の地球的環境被害を阻止するための
食生活的観点からのソリューションになるというのです。
一体どういうことでしょうか?
過去のコラムでも何度かご紹介したことがありますが、
肉食傾向の世界の潮流の中で
畜産がもたらす環境破壊や健康被害、
あるいは世界全体の視点から見た
畜産のサプライチェーンそのものが
飢饉の原因を生み出している現状に、
我々はアクションを起こす必要があります。
世界中の食肉需要に応えるためには
広大な生産用地を必要とします。
この土地を確保するために南米・中米の森林が
伐採されているのはご存じでしょうか。
また、膨大な数の牛を育てるために、
これまた膨大な量の飼料が通年で必要となることから、
アメリカを代表とする世界の穀倉地帯では、
農薬、除草剤、化学肥料を大量に使用した
遺伝子組換え作物が栽培され続けています。
環境省のデータによると
1kgのとうもろこしを生産するのに必要な
灌漑用水の量は1,800リットルと言われています。
牛はこうして育てられた穀物を大量に消費するため、
牛肉1kgを生産するには、
その約20,000倍もの水が必要になります。
この飼料となる穀物を育てるのに必要な水を
「バーチャルウォーター」といいます。
例えば、牛丼一杯をつくるためには
約2,000リットルも必要になるのです。
(環境省:「バーチャルウォーター」)
日本の自給率は約39%です。
この自給分はもちろんのことですが、
61%の輸入分に費やされるバーチャルウォーターは
一体どのくらいになるのでしょうか。
数値は省略しますが、実は……
日本は世界一のバーチャルウォーターの輸入国です。
つまり、もし我々の食習慣から
「肉食」を取り除くことが出来たとすれば、
「水不足」や「飢饉」といった深刻な人類的問題への
克服に向けた大きなメッセージになるばかりでなく、
「農薬」「化学肥料」「遺伝子組換え作物」の
これ以上の使用や生産に歯止めをかけることに繋がります。
サステイナビリティーとは
連綿と続く自然のサイクルを尊重すること。
世界の食習慣がプラントベースに基づくのであれば、
この世界から「飢饉」を撲滅させることは
決して絵空事ではありません。
■ プラネタリーヘルスダイエットとは?
プラネタリーヘルスダイエットについては
他のサイトでも多くが語られているため、
ポイントのみの説明に留めることにしますが、
我々のような自然栽培農業従事者にとっては、
人間を地球の一部と捉え、
両者のヘルスケアを同時にアプローチしていく
「プラネタリーヘルス」という発想には
相通ずるところがあると思っています。
そしてそれを毎日の食で実現していく
持続可能な具体的アクションプランが
「プラネタリーヘルスダイエット」なのです。
■ 和食はお手本
プラネタリーヘルスダイエットにおいては、
人間と地球の健康を害する赤身の肉や
動物性食品、砂糖などの添加糖分を減らし、
その代わりに、植物由来(プラントベース)の
全粒穀物、豆類、果物、野菜を中心として
摂取することが推奨されています。
ここでは詳細を割愛しますが、
お手本として示されているメニュー例をみてみると、
日本人には少し取っ付きにくい印象があるのですが、
それはあくまでも調理方法の違いによるものであり、
食材分野的には極めて和食に近い
構成になっていることに気が付きます。
いわゆる一汁三菜。
我々日本人の慣れ親しんだ
あまりにも当たり前過ぎるスタイルです。
ご飯(玄米推奨)と
みそ汁(味噌は発酵食品)、
主菜一品に副菜二品。
ここに香の物(発酵食品)がプラスされれば
献立としてはかなり合格に近いのかもしれません。
しかしこれはあくまでも見た目の問題に過ぎませんし、
和食がプラネタリーヘルスダイエット的に
完璧だというわけではありません。
現代の日本人の食事には動物性、
特に肉が供される傾向が大きいため、
大豆ミートなどの代替肉を
上手く取り入れるなどの工夫が大切です。
精進料理に学んでみるなんてことも
興味深いかもしれません。
つまり穀物、野菜、豆類、発酵食品、海藻による
プラントベース中心の食生活に戻すこと。
日本人にはこれが出来るのです。
あわせて、農薬・化学肥料を
使用しない農作物を進んで選択します。
また、動物性については国産で
遺伝子組換え飼料を食べていないものを選びます。
価格の問題もあり、一見かなりハードルが高いように思えますが、
実はこれは逆かもしれません。
本当に正しい食材で作る食事は“量”を必要としません。
少量でも十分に満足感が得られます。
更に気持ちが豊かになり健康も手に入れることができます。
この食事スタイルを国産食材、
欲を言えば地産地消といった
エシカルな消費で実践できたなら。
「おいおい、寝言は寝てから言え」、
と怒号が聞こえてきそうです。
「日本は農薬大国ではないか!」
しかも「種はほとんど輸入だろ!」と。
確かにそれは事実です。
先日、農林水産省がこのような発表をしました、
とNHKが取り上げていました。
「脱炭素への取り組みが世界的に加速する中、農林水産省は化学肥料や農薬を使用しない有機農業の拡大に向けてかじを切ることになりました。2050年までに、有機農業の面積を国内の農地の25%にあたる100万ヘクタールまで拡大することなどを新たな戦略に盛り込む方針です」
「100匹目の猿現象 ※」は本当に起こるかもしれません。
(※ 100匹目の猿現象)生物学者のライアル・ワトソンが創作した架空の物語。ある島に棲息するニホンザルの一頭がイモを洗って食べる事を覚え、同行動を取る猿の数が閾値(ワトソンは仮に100匹としている)を超えたときその行動が群れ全体に広がり、さらに場所を隔てた別の猿の群れでも突然この行動が見られるようになったという寓話。
■ プラントベースはなぜサステイナブルなのか?
最近、「プラネタリーヘルスダイエット」というワードを見聞きすることが多くなりました。
2019年の発表当時はさほど注目されていたようには思いませんでしたが、地球規模の様々な大転換とその更なる予兆の中で、一気にクローズアップされてきた印象があります。そしてこのプラネタリーヘルスダイエットの記事で必ず目にするキーワードが「プラントベース」です。
プラントベースとはつまり「植物由来」ということ。
この植物由来(プラントベース)がこれ以上の地球的環境被害を阻止するための食生活的観点からのソリューションになるというのです。
一体どういうことでしょうか?
過去のコラムでも何度かご紹介したことがありますが、肉食傾向の世界の潮流の中で畜産がもたらす環境破壊や健康被害、あるいは世界全体の視点から見た畜産のサプライチェーンそのものが飢饉の原因を生み出している現状に、我々はアクションを起こす必要があります。
世界中の食肉需要に応えるためには広大な生産用地を必要とします。この土地を確保するために南米・中米の森林が伐採されているのはご存じでしょうか。また、膨大な数の牛を育てるために、これまた膨大な量の飼料が通年で必要となることから、アメリカを代表とする世界の穀倉地帯では、農薬、除草剤、化学肥料を大量に使用した遺伝子組換え作物が栽培され続けています。
環境省のデータによると1kgのとうもろこしを生産するのに必要な灌漑用水の量は1,800リットルと言われています。牛はこうして育てられた穀物を大量に消費するため、牛肉1kgを生産するには、その約20,000倍もの水が必要になります。この飼料となる穀物を育てるのに必要な水を「バーチャルウォーター」といいます。
例えば、牛丼一杯をつくるためには約2,000リットルも必要になるのです。(環境省:「バーチャルウォーター」)
日本の自給率は約39%です。この自給分はもちろんのことですが、61%の輸入分に費やされるバーチャルウォーターは一体どのくらいになるのでしょうか。数値は省略しますが、実は……日本は世界一のバーチャルウォーターの輸入国です。
つまり、もし我々の食習慣から「肉食」を取り除くことが出来たとすれば、「水不足」や「飢饉」といった深刻な人類的問題への克服に向けた大きなメッセージになるばかりでなく、「農薬」「化学肥料」「遺伝子組換え作物」のこれ以上の使用や生産に歯止めをかけることに繋がります。
サステイナビリティーとは連綿と続く自然のサイクルを尊重すること。世界の食習慣がプラントベースに基づくのであれば、この世界から「飢饉」を撲滅させることは決して絵空事ではありません。
■ プラネタリーヘルスダイエットとは?
プラネタリーヘルスダイエットについては他のサイトでも多くが語られているため、ポイントのみの説明に留めることにしますが、我々のような自然栽培農業従事者にとっては、人間を地球の一部と捉え、両者のヘルスケアを同時にアプローチしていく「プラネタリーヘルス」という発想には相通ずるところがあると思っています。
そしてそれを毎日の食で実現していく持続可能な具体的アクションプランが「プラネタリーヘルスダイエット」なのです。
■ 和食はお手本
プラネタリーヘルスダイエットにおいては、人間と地球の健康を害する赤身の肉や動物性食品、砂糖などの添加糖分を減らし、その代わりに、植物由来(プラントベース)の全粒穀物、豆類、果物、野菜を中心として摂取することが推奨されています。
ここでは詳細を割愛しますが、お手本として示されているメニュー例をみてみると、日本人には少し取っ付きにくい印象があるのですが、それはあくまでも調理方法の違いによるものであり、食材分野的には極めて和食に近い構成になっていることに気が付きます。
いわゆる一汁三菜。我々日本人の慣れ親しんだあまりにも当たり前過ぎるスタイルです。
ご飯(玄米推奨)とみそ汁(味噌は発酵食品)、主菜一品に副菜二品。ここに香の物(発酵食品)がプラスされれば献立としてはかなり合格に近いのかもしれません。
しかしこれはあくまでも見た目の問題に過ぎませんし、和食がプラネタリーヘルスダイエット的に完璧だというわけではありません。
現代の日本人の食事には動物性、特に肉が供される傾向が大きいため、大豆ミートなどの代替肉を上手く取り入れるなどの工夫が大切です。精進料理に学んでみるなんてことも興味深いかもしれません。
つまり穀物、野菜、豆類、発酵食品、海藻によるプラントベース中心の食生活に戻すこと。日本人にはこれが出来るのです。
あわせて、農薬・化学肥料を使用しない農作物を進んで選択します。また、動物性については国産で遺伝子組換え飼料を食べていないものを選びます。価格の問題もあり、一見かなりハードルが高いように思えますが、実はこれは逆かもしれません。本当に正しい食材で作る食事は“量”を必要としません。少量でも十分に満足感が得られます。更に気持ちが豊かになり健康も手に入れることができます。
この食事スタイルを国産食材、欲を言えば地産地消といったエシカルな消費で実践できたなら。
「おいおい、寝言は寝てから言え」、と怒号が聞こえてきそうです。
「日本は農薬大国ではないか!」しかも「種はほとんど輸入だろ!」と。
確かにそれは事実です。
先日、農林水産省がこのような発表をしました、とNHKが取り上げていました。
「脱炭素への取り組みが世界的に加速する中、農林水産省は化学肥料や農薬を使用しない有機農業の拡大に向けてかじを切ることになりました。2050年までに、有機農業の面積を国内の農地の25%にあたる100万ヘクタールまで拡大することなどを新たな戦略に盛り込む方針です」
「100匹目の猿現象 ※」は本当に起こるかもしれません。
(※ 100匹目の猿現象)生物学者のライアル・ワトソンが創作した架空の物語。ある島に棲息するニホンザルの一頭がイモを洗って食べる事を覚え、同行動を取る猿の数が閾値(ワトソンは仮に100匹としている)を超えたときその行動が群れ全体に広がり、さらに場所を隔てた別の猿の群れでも突然この行動が見られるようになったという寓話。