暑い日も増え、雨が降りだし梅雨がやってきましたね。翔栄ファームでは夏野菜の作付けが終盤を迎えています。
さて今回は、2025年春の玉ねぎ栽培の様子ついてご報告します。
■予期せぬ病気と緊急収穫
今シーズン栽培した品種は、極早生サラダ用のジェットボール(1500本)、中晩生サラダ用の松島レッド(3000本)、中晩生のノンクーラー(7000本)です。
3月まではどの品種も順調そのもの。ジェットボールは予定通り4月にすべて収穫し、新玉ねぎとして出荷することができました。
写真:左からジェットボール 松島レッド ノンクーラーの葉玉ねぎ

4月に入り、春めいてきたかと思うと異常な高温が続き、同時に異変が起きました。
それまで青々としていた松島レッドの一部が急速に弱りはじめ、抜いてみると鱗茎(りんけい)の根の付け根部分にカビ状のものが付着していました。雨の日が多く、隣接するノンクーラーにも感染の兆しが表れてきました。
8カ月かけて育ててきた6000本の玉ねぎが全滅…。たまねぎ畑を眺めそんなことが頭をよぎります。
お客様にお届けできずに終わってしまうのは悲しすぎる、何とかしなければ、という思いがこみ上げてきました。
日々変わる天気予報にハラハラしながら玉ねぎをこまめに観察し、収穫時期をどうするか悩みました。
そしてまだ健全な玉ねぎはできるだけ「葉玉ねぎ」として出荷しよう。断腸の思いでした。
写真:手前の畝が病気にかかっている玉ねぎが多くみられます

「葉玉ねぎ」は、若い玉ねぎのことで柔らかい葉がとても美味しいのですが、日持ちしません。あまり流通していないので知らない方が多く、食べ方をお伝えしながら、できる限りの方にお知らせしてお渡ししました。
買い支えていただいた皆様、本当にありがとうございました。
収獲しきれず、圃場に残っていた中で幸いにも病気を免れた玉ねぎの収穫は無事終わり、5月中旬より皆様にお届けしております。

■草マルチで見えた「根」の力
玉ねぎは大変デリケートな作物で、好きな場所ではすくすくと育ちますが、そうではないところだと全く育ちません。
実は一昨年前、違う圃場で全く育たなかったという経験をしました。
圃場が変わると敏感に反応する可能性があります。
前橋圃場では年間70種類以上の野菜を栽培しているため、隣同士・前後作に頭を悩ませられます。
輪作のためにも玉ねぎが好きな圃場を探し出すことは重要課題の一つです。
もう一つ、野菜が健康に育つため手助けをする、見守る、これらをタイミングを逃さず対応するスキルも必要になります。
そこで今シーズンはビニールではなく、枯草を使った「草マルチ」栽培を別の圃場で試みました。
品種は栽培経験の多いノンクーラーを選びました。
自然栽培は、環境と作物との調和を図り、野菜が元気に育ってくれるように手を貸す農法です。
とても手のかかる栽培方法です。「草マルチ」は更に手がかかります。
枯草をかき分け、細い玉ねぎの苗を1本1本手植えし、草が生えたら1本1本抜き、枯草が朽ちてなくなったらまた草を足す。
その場にあるもので玉ねぎが好きな環境になるのであればそれが自然です。
肥料は新たに入れませんが、肥沃な場所でなければ玉ねぎは育たないといわれています。
草が朽ちて土にかえる時の恩恵を受けられるのが「草マルチ」だと思います。
好きな場所で伸び伸びと育つ野菜はとてもきれいでつやつやしています。
そんな玉ねぎに育ってほしいという思いと、果たしてやり切れるのだろうか、とういう不安をかかえながらの栽培でした。

5月下旬、比較的病気の被害も少なく、収穫量・品質ともに良好でした。
そして収穫。収獲しながら特に驚いたのは「根の張り」具合でした。
ここ群馬県前橋市では昨年12月から2月までほとんど雨が降らず、乾燥が 続き生育が心配でした。
真冬に水を撒くと凍ってしまうため潅水のタイミングはとても難しいです。
春になり雨が降ると同時にみるみる葉が成長し、 見違えるような青々とした姿になりました。
低温乾燥下でもしっかりと根を張り、春の訪れを待ちわびていたのだと思います。
あまりにも根張りが良すぎたのが、収穫時にはなかなか抜けず、 玉ねぎが割れてしまうというアクシデントがあるほどでした。
なぜ「草マルチ」をした玉ねぎはこんなにも 根張りが良くなったのか。
ポイントは「温度変化の少なさ」と「適度な湿度保持」ではと考えています。
地面がむき出している場合、雨が降らなければ土は乾燥します。
枯草で表面が覆われていると太陽の光や風がさえぎられるため、適度な湿度が保持されます。
霜が降りて玉ねぎの根が浮いてしまうこともありません。
今シーズンは極端な水不足でしたが、株元の環境変化が最小限に抑えられる状態だったことが考えられます。
写真 上:草マルチ 下:ビニールマルチ


見た目はコンパクトな草勢ですが、鱗茎はほどよく肥大し締まった玉ねぎの収穫となりました。
また、首(葉の付け根)部分がギュッと締まっていて、腰高で尻詰まりが良く、丸々とした玉ねぎになりました。


■今年の反省と課題
今年の病気被害を経て、あらためて感じたのは栽培する量が多くなると飛躍的にリスクが上がるということです。
病原菌が残っている土壌では、どうしても再発の可能性が避けられません。
来年は、一部をこの畑で栽培しつつ、残りは新たな畑に分散させる予定です。
そしてできる限り、草マルチでの栽培も継続できるよう準備していきたいと考えています。
ただ、草マルチにも課題はあります。
土の上に10センチ近く厚く敷いた草をどけ、1畝1000株を1本ずつ手植えする作業は、想像以上に手間と時間がかかります。
だからこそ、今から夏のあいだに土づくりと準備をしっかり行い、11月の定植に向けて体制を整えていきたいと思っています。
毎年同じようにやっても、毎年違うのが農業です。
思ったように育たなかったり病気に頭を悩ませる時もあれば、根の力強さに感動する時もある。
日々自然から学ぶことが多くあります。
さて、今年収穫した玉ねぎたちは、甘みとうまみが凝縮されています。
圃場で試食した際に特に好評だったのが「玉ねぎのまるごとスープ」です。
水だけで煮て、塩と白だしを少し加えるだけで、驚くほど深い味わいになりました。
他にも「玉ねぎのグリル」もおススメです。
切り込みを入れて、皮ごとホイルで包み、グリルすれば大きな玉ねぎも中までホクホクに仕上がります。
塩とクミンをすこし振ってからグリルするとスパイスの香りと玉ねぎの旨味・甘さが合わさってとっても美味しいので是非試してみて下さい。
来年はおいしい玉ねぎを安定してお届けできるよう、日々畑と向き合いながら挑戦し続けます。

= 最後に =
私たちは昨今のアレルギー・アトピー・花粉症などは、食べ物の影響だと思っており、口に入って身体を作る作物は安心・安全であるべきだと考えています。
翔栄ファームでは、群馬県と茨城県、広島県にある3つの農場で、一般的な慣行農法(農薬、肥料の投入量や散布回数などにおいて相当数の生産者が実施している一般的な農法のこと)でなく、『固定種・在来種』の種で、『農薬・化学肥料・除草剤を使わない自然栽培』で野菜や穀類を作っています。
それは、食卓に並ぶ全てを”安心・安全な翔栄ファーム印の食べ物”で提供したい!という目的からです。
私たちが自然栽培で収穫した野菜や作物を『茨城県龍ヶ崎』と『群馬県前橋』の各圃場と、東京都の東中野にある『ビセットプラザ』で店頭販売を行っています。
また通販サイトの『しぜんとくらそ』では、各季節の旬な野菜を詰め合わせた”【定期宅配】季節の産直野菜いろどりセット”などもインターネットで販売しています。宅配にしか入らない野菜もありますので、定期宅配のご利用もお待ちしています。