翔栄クリエイト翔栄ファーム龍ヶ崎圃場のNです。
2023年の夏は例年にないほどの記録的な猛暑となりました。
各地では熱中症で搬送される人がたくさんいたようで、僕もその1人でした。この猛暑は、人間だけでなくて植物や野菜にとっても大変厳しい栽培環境となりました。
夏野菜であるキュウリやゴーヤなどの瓜系は、育つためにたくさんの水分を必要としますが、あまりの猛暑によって水分を奪われた結果、想定したほどの収穫量は得られませんでした。農家にも作物にもとても厳しい状態となった、そんな猛暑での翔栄ファームの取り組みについてお話をしたいと思います。
■ 1年を通して季節ごとに安定して提供する野菜栽培はとても難しい
私たち翔栄ファームでは、春夏秋冬1年を通して季節ごとのお野菜をできる限り途切れることなく、安定してお客様にご提供するために野菜栽培をしています。
この”計画して実行すること”がとても難しく、なかなか一筋縄ではいきません。天気や気温、スタッフの配置や作業量の配分状況などを考えて計画して行います。1年を通して、とりわけ難しいのが1月下旬から4月上旬にかけての間です。この時期は野菜の収穫量がとても少ないのです。
だからといって、私たちの野菜の摂取量も減るわけではないので、少しでも多くお野菜の品目をお届けしたくて色々な試みをします。
寒い時期でも栽培できる作物を植えたり、栽培の時期を早めたり遅らせたり、ビニールハウス栽培などで暖かい時期の野菜を作ったりと、試行錯誤しながら様々な取り組みを行なっています。
計画して実行してみても、実際は天候・気温・環境等の状況次第で、作物が悪くなったり生育状態が変わったりする事があるので、時期に合わせて計画的に栽培の管理する事は本当に難しいのです。
■ 厳しい冬の中でも栽培できる重要な作物『ニンジン』
その厳しい冬の中でも栽培できる重要な作物として『ニンジン』があります。ニンジンは年に2回も収穫することが可能な野菜です。しかし、このところの気候変動に当てはまるのかが判然とせず、作ってみないとわからない状況です。
冬に収穫するニンジンは、夏の終わり近くの雷雨の頃に種を蒔くと良いニンジンに育ちます。この種まきの時期が遅れてしまうと、冬の寒さがくるまでに十分に根っこが育たず、大きなニンジンに育たないのです。種まきの時期は見極めがとても難しく、小さな間違いが大きな失敗に繋がる可能性があるのです。
昨年は他の作物栽培との兼ね合いもあり、ニンジンの種まきが遅れたため、年内中には育ちませんでした。
そういった経験から今年の夏は、かなり早い時期である、7月下旬頃に『黄色二ンジン』や『黒田五寸ニンジン』の種を蒔きました。
黒田五寸ニンジンは、大村市黒丸町の黒田さんたちが長い間、品種改良をくり返して作り出したニンジンです。昭和23年頃に黒田さんの名前をとって「黒田五寸ニンジン」と名づけられました。五寸というのは長さが15㎝ぐらいという意味です。その後日本全国に広まり、現在日本で栽培されているニンジンの多くがこの品種をもとにしています。
他のニンジンに比べて、甘みがありやわらかく水分が多いのが特徴です。芯が細く中まで紅色です。色がきれいで味がよいため、サラダやジュース、煮物などによく合います。含まれるカロテンの量が多いので、栄養的にもすぐれています。水やりや草とりなど手間ひまかけて大切に育てるニンジンです。
■ ニンジンの”でき”を左右する『保湿』
ニンジンの種を見たことがありますか?多くの人はニンジンの種を見たことが無いと思います。ニンジンの種は米粒よりも少し小さめで、ペラペラな形状をしています。表面は乾燥しているような感じで瑞々しさはありません。
このニンジンの種は充分な湿気や水がないと発芽しないと言われています。冬に向けてしっかりとしたニンジンを収穫するため、保湿を万全にするための取り組みを始めました。
昨年までは種を蒔いた直後に、その上から保湿用に不織布素材の薄い布などを被せていました。
今年は更なる保湿のためにお米の籾殻を敷きました。籾殻を敷くことにより保湿だけではなく、風によって種が飛ばされない、雨によって種が流されない、日光を遮って種が乾燥しないなど、たくさんのメリットが見込めました。
<2023年版の保湿方法>
①種撒きの機械で筋状にニンジンの種を撒く
②その上に、土が見えなくなるくらいたっぷり籾殻を敷く
③不織布をかぶせてピンで止める
④ジョウロを使って不織布や土まで十分に湿る位い、手作業で水をあげる
保湿準備が終わった後も、土が乾燥した状態をなるべく避けたいのでこまめに水をあげました。
日中は気温がかなり上昇して籾殻の内側が蒸れる為、朝の日が高くなる前か、夕方の日が落ちかけた涼しい時間帯に水をあげました。しかし1週間経っても発芽が見られません。
この間、猛暑や真夏日が続いて異常に暑い日が続きました。その上雨も降らないという状態だったため、めげずに水をあげ続けました。それでも一向に発芽しないため、もう一度種を蒔き直したり、違う品種の種を蒔いてみたりしました。とにかく美味しいニンジンを作りたいという思いで、試行錯誤を重ねて色々と試してみました。
その結果8月中旬ころに、ほんの少しばかりですがチラチラとニンジンが発芽し始めました。努力が報われたことを実感して、 8月いっぱいは暑さに耐えて水をやりを続けました。そして9月中旬ころには蒔いた3分の1以上が発芽してくれました!
何とか冬の出荷分を確保できる見通しがつきました!
それからは収穫量を落とさないために、害虫駆除や雑草とりなどしながら大事に育てました。
この農場便りが掲載される頃には、ビセットプラザ東中野の店頭にいろとりどりのニンジンが並んでいますので、ぜひ召し上がってみてください。
■ 2023年のニンジン栽培を振り返って
2023年のニンジン栽培を振り返ってみると、これは品種にもよると思いますが、ニンジンには保湿の他にも気温が大切なのでは?と感じました。なかなか発芽しなかったのは、夏のとんでもない暑さが続いたことが原因ではないかと思います。その証拠に、後から時期をずらし種を蒔いた人参は発芽や生育が良かったのです。ということで私が猛暑の中で懸命に水をあげた努力は、残念ながら報われませんでした。
しかしこれも1つの大事な経験です。ここまで読んでいただいた方が今後ニンジンを育てる際には、種を蒔く時期や発芽の時期を見定めて、『季節の変わり目』暑さが少し収まって雨が降るころを狙って種を蒔いてみてください。品種に合う良い時に種をまければ 冬の間に美味しいニンジンが食べられます!
私の経験が美味しいニンジン作りに活かされますように。そして翔栄ファームで作った安心で安全なニンジンをはじめとする野菜や作物をぜひ味わってみてください。自然の力がたっぷり詰まった野菜や作物はきっと美味しく体を元気にしてくれます!!