こんにちは、翔栄ファーム 前橋農場のMです!
翔栄ファームでは、無農薬・無化学肥料で、固定種・在来種にこだわって、作物を日々試行錯誤しながらも楽しく作っています。そのうちの一つが真黒茄子(シンクロナス)です。
真黒茄子は、「皮が柔らかく甘さがあり、煮物・漬物・焼物・炒め物・汁物・天ぷら・田楽などなど、ナス料理の全てに適していて、かつ新鮮なうちに生で食べると”りんご”に似た風味が口の中に広がる」という特徴があります。
真黒茄子はかつて昭和40年代にスーパーに並んでいた人気の固定種でしたが、皮が薄くすぐに傷がつくという理由で姿を消してしまいました。私はその超美味で貴重な品種を後世につたえたいと、2022年から真黒茄子の栽培にチャレンジしています。
今回の農場便りは、真黒茄子作りの悪戦苦闘と笑顔と涙のチャレンジ記録をまとめました。
■ 人生初のナス作り開始!
2022年の2月、私にとって人生初のナス作りが始まりました。貴重な真黒茄子の種を手に入れ、温室で育苗(いくびょう)を開始しました。
育苗とは、畑に種を直接まいて育てるのではなく、育苗ポットなどの容器である程度成長するまで育てることをいいます。温室などで雨風や気温や自然の影響を受けにくくして、丈夫で良い苗を作ることができるのです。
この品種は30度の発芽温度が必要とされるため、温室での育苗が必要でした。7〜10日ほどすると発芽しました。しかし無農薬栽培にとって宿命の敵が襲ってきました。アブラムシの襲来です。私はアブラムシを見つけては手で取り除き続けて、なんとか対処し終わったのも束の間、新たな敵が襲来してきました。
それはハモグリバエの襲来です。ハモグリバエは葉っぱに卵を産みつけて、かえった幼虫は葉っぱの葉脈を這って食い荒らすという恐ろしい敵です。これまた見つけては手で潰し続けることで、何とか葉っぱを守り抜きましたが、ウィルス病に感染した葉っぱはチリチリになってしまい、元気を吸い取られたかのように真黒茄子の苗たちは全然大きくなりませんでした。
写真はハモグリバエの幼虫の被害跡です。
■ 初のチャレンジは成功!
成長しない苗を見ていると、真黒茄子作りのチャレンジ失敗という文字が私の頭をよぎりました。しかし枯れてしまったわけではありません。ここは畑の力を借りるべく5〜6月にかけて植え付けたところ、前橋の土壌との相性が良かったのか、真黒茄子がすくすくと育っていったのです!!
初めての真黒茄子作りを是が非でも成功させたかった私は、無駄な葉っぱや枝を取り除くための剪定(せんてい)作業を念入りに行いました。無駄な枝がなくなり日光をたっぷり浴びて、湿度の状態も程良かったためか、真黒茄子は大きくたくさんの実が育ちました。沢山の収穫量をあげる事ができて初チャレンジは成功しました!
収穫後には早速、味見を兼ねて、”焼きナス”、”漬物”、”揚げ浸し”などを作りました。さまざまなお料理で美味しく食べられることが分かりました。
写真は、私がおすすめする「真黒茄子と甘長とうがらしの揚げ浸し」です。
<作り方>
ナスを半分に切って、水にさらしてアクを抜きます。
水気をしっかり拭き取って、油で素揚げします。
揚げている間に、出汁(麺つゆ)を用意します。
軽く焦げ目が付くほど揚がったら油を切って、熱いうちに出汁に入れます。
冷蔵庫で30分くらい冷やします。
出汁に浸されて冷めながら味が染み込みこんだら完成です。
■ 連作障害を防げ!2回目の真黒茄子作り開始
2023年2月になり、温室で育苗を開始しました。発芽すればお決まりの敵が襲来してきました。アブラムシを見つけては手で取り除きました。
ハモグリバエも見つけては手で潰し続けました。葉っぱはまたもやチリチリにされてしまいましたが、2022年の経験から対処が早かったことと、途中からハエトリ用の粘着シートを吊るしてからは、卵を産む前に捕獲する事ができるようになったため、被害は少なく済みました。
5〜6月にかけて畑に植え付けました。連作障害を避けるために2022年とは500メートルほど離れた別の畑に植え付けたのです。
同じ場所で長年栽培していると生育が悪くなったり、枯れてしまったりすることがあります。 この現象を「連作障害」といいます。 原因は前に作った野菜によって、土壌中の成分バランスが崩れたり、病害虫の発生が主な原因です。
連作障害を避けるため、別の野菜を植えたり、何も植えず休ませたりするなど、翔栄ファームでは毎年計画的な作付けを半期ごとに行なっています。まとまった畑は大量に生産できたり使い勝手が良い面もありますが、連作障害を避けるメリットがあるため、点在した畑で作物を作っています。
2023年の真黒茄子もすくすくと育っていきました。
■ 異常気象が真黒茄子に襲いかかる
日々育っていく真黒茄子でしたが、2022年ほど元気に育ちませんでした。原因はいくつか考えられました。他の作物を作ることに時間を割いたため、剪定が充分ではなかったことや、500メートル離れただけの土壌が思いの外合っていなかった可能性も考えられましたが、最も大きかったのは日本や世界で起こっている異常気象が真黒茄子を襲ったことでした。6月頭に超季節外れの雹が降り注ぎ、真黒茄子たちを傷つけてしまったのです。
葉っぱも茎も実も深く傷つけられた真黒茄子の多くが枯れてしまいました。今回ばかりは失敗を覚悟しました。しかしここで私は、真黒茄子の力強さに驚かされました。傷つけられた痛みを乗り越えて、生き残った真黒茄子は成長し続けたのです。
収穫時期に入り2022年ほど多くはありませんが、困難を乗り越えてしっかりと育ってくれた真黒茄子を収穫することができました。
7〜8月の翔栄ファームは出荷で大忙しですが、2023年も出荷できることに幸せを感じました。
■ 2024年に向けて
真黒茄子の栽培では多くの”努力”と”笑顔”と”涙”がありました。2年間の経験によって剪定の大事さや、害虫駆除や、雹対策などなどへの対応策もレベルアップしました。2024年も皆様の食卓に沢山お届けできるよう、真黒茄子作りにチャレンジしていきます!!